
注目の在宅医療機関へのインタビュー取材「PICK UP!在宅医療機関」の第21回目は、2021年から千葉市幕張にて「ゆかりホームクリニック」を運営されている小林真史院長です。これまでの医師としての歩み、在宅医療に転じて、そして今後への展望について、その思いを熱く語っていただきました。
※本文は「【PICK UP!在宅医療機関 021】医療法人社団 真 ゆかりホームクリニック 小林真史院長(おうちde医療)」を一部転載したものです。2025年7月に公開されたインタビューをもとに構成されており、内容は当時の情報に基づいております。
小林真史院長のプロフィール
経歴:
2003年 渋谷教育学園幕張高等学校卒業
2009年 千葉大学医学部卒業
2009年 国立病院機構千葉東病院
2010年 千葉大学医学部附属病院
2011年 千葉大学病院小児外科 入局
2012年 東京都立小児医療センター外科
2014年 千葉県立佐原病院外科、千葉大学医学部大学院博士課程
2015年 横浜市立大学医学部臓器再生医学特別研究生
2016年 ふたば訪問クリニック 副院長
2020年 医療法人社団ときわ 赤羽在宅クリニック、千葉大学次世代医療構想センター客員研究員(兼任)
2020年 ライフサポートクリニック大網 診療部長
2021年 ゆかりホームクリニック 院長
2023年 医療法人社団 真 ゆかリホームクリニック 理事長及び院長
資格:
緩和ケア研修会修了
TNT(Total Nutrition Therapy)研修会修了
日本外科学会・認定登録医
難病指定医
小児外科医として
— これまでの経歴について教えてください。
私は千葉で生まれ育ち、学歴も職歴もほとんど千葉から離れたことがありません。
これからも一生をかけて、千葉に恩返しをしていきたいと考えています。
医師を志すようになったきっかけは、小学生時代にさかのぼります。
幼いころから知的好奇心が強く、将来は研究者になってノーベル賞を取りたいという夢を抱いていました。
アインシュタインやレオナルド・ダ・ヴィンチに憧れていた、少し風変わりな子どもだったと思います。
ノーベル賞を目指す道としては物理学も考えましたが、より人の役に立てる分野として医学を選び、千葉大学医学部を受験しました。
面接では「千葉大にノーベル賞を持ってきます」と宣言するほど本気で挑んでおり、面接官の先生方は笑っていらっしゃいました。
面接対策では「絶対に言ってはいけない」と指導された発言でしたが、気持ちを抑えきれず本音を話してしまいました。
— 小児外科を専攻されますが、選ばれた理由は?
大学5年生のときに参加した小児外科の実習は、私の人生を大きく変える出来事となりました。
それまでは研究医を志していた私でしたが、「これこそが自分のやりたい医療だ」と確信しました。
小児外科では、お子さん一人ひとりで疾患も治療方針もまったく異なり、発育の状況や家庭環境、家族の希望など、多くの要素を考慮する必要があります。成人医療と比べても、きめ細やかな対応が求められると感じました。
マニュアル通りにはいかず、御家族に寄り添いながら、常に頭をひねって最適な答えを一緒に考える事が重要視される現場でした。
特に印象に残っているのは、たとえ治らない病気であっても決して諦めず、患者さんに寄り添い続ける先輩医師たちの姿です。
先天的な疾患等で手術を受けるお子さんとは、その後も長い時間をかけてお付き合いをしていく事になります。
医師に求められるのは、単に病気を治すことだけでなく、「学校に通えるのか」「将来は結婚や仕事ができるのか」といった、お子さんの人生全体を見据えた支援でした。
この経験こそが、私の医師としての原点となりました。
患者さん一人ひとりの人生に寄り添い、ともに歩んでいく医療こそが、大変ながら遣り甲斐のある分野だと強く感じ、小児外科を自らの進路として選ぶ決意を固めました。
在宅医療に魅せられて
— 在宅医療に進まれたきっかけは?
医師10年目を迎えた頃、医局を退くこととなり、転職先を探し始めました。
幅広く見学を重ねる中で、「小児在宅医療」という分野の存在を知り、小児外科での経験を活かせるのではないかと興味を持ちました。
都内のあるクリニックを見学した際には、若手医師が患者さんやご家族に真摯に向き合い、チーム一丸となって医療を提供している姿に深く感銘を受けました。
ただし、千葉近郊で小児在宅医療を行っているクリニックは限られており、近隣のいくつかの在宅クリニックを見学させていただくことになりました。
最終的に「ふたば訪問クリニック」を選んだ決め手は、院長先生のお人柄でした。
— 院長先生のどのような人柄に惹かれたのでしょうか?
実際にお会いして最も印象的だったのは、患者さんに徹底的に寄り添う姿勢でした。
技術や知識の高さはもちろんですが、それ以上に「この先生と一緒に働きたい」「この先生から多くを学びたい」と心から思わせる魅力がありました。
患者さんやご家族への接し方、スタッフへの配慮、在宅医療に対する熱意など、すべてが自然体でありながら深い思いやりに満ちていて、私自身、患者さんへの寄り添いを何より大切にしたいと考えているので、そうした人間性に心から共感できたことが決め手となりました。
在宅医療は技術だけでなく、人と人とのつながりが極めて重要な分野ですから、一緒に働く仲間の人柄は何より重要な要素だと考えています。
— 在宅医療の魅力について教えてください
在宅医療で求められることと、小児外科で学んだ事は、非常によく似ているなと思いました。
在宅で過ごす患者さんの多くは、加齢や、がんや難病などの完治が難しい病と向き合いながら、「住み慣れた我が家で自分らしく過ごしたい」と願っています。
そうした方々にとって本当に大切なのは、病気を治すことそのものではなく、自分の価値観や希望に寄り添い、「どのような人生を送りたいか」を一緒に考えることです。
小児外科でも、在宅医療でも、「どうすれば自分らしく普通の生活を送れるか」を考える。
患者さんの年代や病状は異なっても、医師として向き合うべき本質はまったく同じであることに気づき、また、これまで小児外科で培ってきたことを十分に活かす事ができると感じました。
ふたば訪問クリニックでの2年間は、その本質を実感しながら多くを学ぶ時間となりました。
その後、より広い視野を得るために複数の現場を経験し、次第に「開業」という選択肢が現実味を帯びてきました。
「ゆかりホームクリニック」の開業ストーリーや目指す姿、在宅医療における課題など、インタビューの続きはこちらからお読みください。
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