特集

かりん在宅クリニック田中亮嗣院長に聞く、患者に寄り添う未来の医療

かりん在宅クリニック田中亮嗣院長に聞く、患者に寄り添う未来の医療

テクノロジーが進化する時代に、あえて人間にしかできない医療を追求する──。
かりん在宅クリニックの田中亮嗣院長が語るのは、患者一人ひとりの生き方に寄り添う新しい医療のかたちです。
沖縄・聖路加・アメリカで多彩な経験を積んだ田中院長が、なぜ在宅医療にたどり着き、自宅という生活の場で本格的な医療を提供する道を選んだのか。
若き院長が描く、これからの医療の未来に迫ります。

※本文は「【PICK UP!在宅医療機関 012】かりん在宅クリニック 田中亮嗣院長」(おうちde医療)から一部転載したものです。

かりん在宅クリニック 院長
田中 亮嗣 先生

経歴:
2017年 横浜市立大学医学部卒業
2017年 沖縄県立中部病院
2019年 聖路加国際病院、河北病院血液内科、国立がん研究センター中央病院腫瘍内科
2021年 聖路加国際病院腫瘍内科
2022年 つばさ在宅クリニック西船橋
2024年 かりん在宅クリニック 院長

資格・役職等:
日本内科学会内科専門医
認知症サポート医
墨田区介護認定審査委員会委員
墨田区医師会地域福祉委員

身近な人を助けたいという思いから医師に

-先生が医師を目指したきっかけについて教えてください。

両親が理学療法士と作業療法士だったので、子どもの頃から身近なところに医療があったように思います。一番のきっかけは、高校生の時に祖父の死を経験したことです。がんだったのですが、見つかった時には、もう根治を目指せるような状況ではなかったんです。もし自分に医療の知識があれば、今後も家族や身近な人々を助けてあげることができるのではないかと思い、医師を目指すことに決めました。

-大学時代で思い出に残っていることなどはありますか。

生まれ故郷の鹿児島から出てきて、横浜市立大学に進学したのですが、学生時代はアメリカで医師として活躍することも選択肢の一つとして勉強していました。UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)に1ヶ月の研修に行かせてもらったこともありました。老年医療科というところで高齢者医療全般を学んだのですが、各科で分かれずに総合的な視点で医療を実施している点で、日本の大学との違いを感じました。また、他の国からも意識の高い学生が集まっており、とても刺激を受けました。この時には既に将来何科に進むとしても幅広く患者を診れるジェネラリストとしての力は付けておきたいと思っていたと思います。

UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)にて、恩師と

何を聞かれても答えられる医師になりたい

―卒業後の研修はいかがでしたか。

沖縄県立中部病院で研修を受けました。ここでは本当に内容の濃い経験をたくさん積ませてもらいました。オンザジョブトレーニングの体制が整っており、若手の研修医であっても、責任のある仕事を任せてもらえました。上級医の先生によるフォローをしっかり受けながら裁量を持って現場に出ることができたため、とても成長することができました。

2年目の医師が30人ぐらいの患者さんを管理して、経験豊富な指導医らに意見を求めつつ、主体的に治療方針を決めていました。学生時代に見学に行った際にはそこの先生方は大変優秀だと思いました。実際、学生時代にも優秀だった方々が集まってくるとても意識の高い集団でした。そこでの繋がりや仲間は今でも私の大切な財産です。私もその中で、内科、救急、外科や小児科、産婦など本当に幅広く数をこなすことができました。
その後、聖路加国際病院に移りました。そこでは治療内容に関してエビデンスを示すことが強く求められ、患者様への説明の仕方や後輩や看護師への接し方などにも気を配ることの大切さを学びました。

こちらにも大変優秀な先生方が集まっており、皆様から刺激を受けて、更に自分を伸ばすことができたと思います。

―内科に注力したいと思った理由は何だったのでしょうか。

やはり内科というのは、オールマイティーな科だと思うんです。今後専門医になるとしても、まずは幅広い知識を土台として持っておきたいという思いがありました。患者さんに質問されたときに「専門じゃないから分からないです」というようなことは、あまり言いたくないなと。

人にしかできない医療をやりたくて在宅医療の世界へ

―聖路加国際病院で勤務された後、在宅医療の分野に転向されたきっかけについてお聞きかせください。

聖路加国際病院で勤務している頃は、がん治療の専門医になろうと考えていました。でもちょうどその頃から、AIや人工知能といったテクノロジーが急速に進展し始めていました。今、人間がやっている仕事はAIが代わりにできるようになってきていると思います。AIの成長は我々の予想を大きく上回るので、規制緩和や国の制度的な問題はあるにせよ、医師の業務にもAIが入ってくる可能性は高いと思いました。

自分はこの先どんな医師を目指したらいいのか。そのように迷っていたときに出会ったのが在宅医療でした。

自分が診ていて、在宅医療に引き継いだ患者さんがその後どのような生活を送られているのか、気にはなっていた中で、在宅での看取りや緩和治療に力を入れている、在宅クリニックに見学に行ってみることにしました。

―見学に行ってみていかがでしたか。

すごいなと思いました。在宅でここまでできるのかという驚きを感じたことを覚えています。当時は在宅医療のことをほとんど分かっていなかったので、大した治療はできないんじゃないかと思っていました。でも実際の現場を見てみると、病院でやっている治療とほとんど変わらないようなこともされていました。

患者さんと医師の距離の近さも、自分にとってはかなり新鮮でした。単に病気だけを診て治療方針を説明するだけではなく、患者さんの考え方や価値観を尊重していて、患者さんが置かれている生活環境や、家族の思いにまでしっかりと寄り添う姿勢に、ハッとさせられました。

患者さんとの心の通った会話は、人生にまで踏み込んでいく医療は人間にしかできないんじゃないかなと。自分が進んでいきたい道は、人としての強みを活かした医療だなと思い、在宅医療の道に進むことを決めました。そのまま、見学したクリニックで働かせてもらうことになり、2年ほど修行を積みました。

つばさ在宅クリニックでの診察時

※本文は「【PICK UP!在宅医療機関 012】かりん在宅クリニック 田中亮嗣院長」(おうちde医療 )から一部転載したものです。つづきは以下から参照ください。

かりんクリニック
〒131-0046
東京都墨田区京島1丁目1-1 イーストコア曳舟1番館216
TEL:03-4400-4678 / FAX:03-6739-3978
https://karin-clinic.jp/

この記事を書いた人

在宅医療カレッジ編集部

在宅医療に関わる方・これから始めたい方を応援する在宅医療の情報プラットフォーム「在宅医療カレッジ」編集部です。 「学ぶ」「働く」「役立つ」をテーマに在宅医療に関するあらゆる最新情報を配信しています。

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