高齢者施設への訪問診療 施設との連携のポイント
- #地域連携
近年は在宅だけでなく、高齢者施設における訪問診療のニーズが増えてきています。
高齢者の医療・介護の依存度が高くなっていることや、同居家族が行う介護力の不足などが背景にあり、施設を生活の場所として選択する方が増えていることが理由と考えられます。
施設に対する訪問診療のニーズが増えると、訪問診療医は施設とさまざまな連携をとっていかなければなりません。
そこで本記事では、高齢者施設への訪問診療を行う際の連携のポイントを解説していきます。
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高齢者施設に対する訪問診療のニーズは増えている
施設に対する訪問診療のニーズが増えている理由として、高齢者施設の数が増えていることがあげられます。
社会保障審議会の介護給付費分科会(第176回)によると、高齢者向け住まい・施設の利用者数は増加傾向にあり、特別養護老人ホームや有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅の数は特に増えていることがわかります。
施設数が増加している要因は、主に以下の5つです。
- 民間事業者が老人ホーム等の施設営業に参入しやすくなった
- 施設の定員要件が廃止された
- 施設で提供できるサービスが増えた
- 医療・介護の依存度が増えている
- 家族の介護力が不足してきている
このうち特に、4、5においては施設での訪問診療のニーズと関連性が高いといえます。
高齢になることでさまざまな疾患が生じるため、医療や介護の依存度が増えるのは必然的です。
医学的管理やケアを定期的に受けるため、施設で訪問診療を受けたいと希望する方が増えていると考えられます。
また、核家族化による家族介護力の不足(老々介護など)を理由に、医療や介護の環境が在宅よりも整っている施設に住みたいというニーズが増えていることも要因でしょう。
中央社会保険医療協議会総会(第414回)によると、在宅時医学総合管理料と施設入居時等医学総合管理料の届出数・算定回数は、増加傾向であると報告されています。
施設入居時等医学総合管理料における算定回数の増加率に着目すると、平成24年から29年までに4倍となっていることがわかります。
こういった増加率からも、高齢者施設における訪問診療のニーズが増えているといえるでしょう。
高齢者施設に対する訪問診療の連携のポイント
高齢者施設に対する訪問診療では、情報共有や連携において、施設スタッフだけでなく施設に訪問する介護保険サービス事業者とのやり取りも不可欠です。
以下では、高齢者施設で訪問診療を行う際、どのようなことをポイントに連携していけばよいのかを解説していきます。
施設のスタッフができることを訪問診療医と共有する
訪問診療における施設連携では、配置されているスタッフの職種ごとに、どのような業務を行えるのか共有しておくことが大切です。
たとえば看護師は痰の吸引ができますが、介護職員は「喀痰吸引等研修」を修了していなければできません。
医療依存度の高い方に対して、施設にどこまでのケアを求めていけばよいのかを明確にするためにも、訪問診療医が各職種の業務範囲を知っておく必要があります。
また、特別養護老人ホームのように配置医がいる施設では、訪問診療医との業務分担を明確にしておくことが大切です。
特に、双方の専門分野や看取り対応の可否などについて共有しておくと、緊急時にどちらがどう対応すべきかが明確になるでしょう。
施設のスタッフへわかりやすい説明をする
施設への訪問診療では、勤務するスタッフへわかりやすい説明をしましょう。専門用語や略語を多用すると、スタッフが十分に理解できない可能性があるからです。
さまざまな職種が働いている施設では、職種・個人によって知識量が異なります。そのため、できるだけかみ砕いてわかりやすい説明を心がけましょう。理解度に合わせた説明ができれば、コミュニケーションがとりやすいイメージを相手に与えられ、結果としてスタッフと良好な関係がつくりやすくなります。
連絡方法をあらかじめ定めておく
施設によって優先的に使用する連絡手段は異なります。
たとえばICT機器に慣れていないスタッフが多い施設では、メールやビデオ通話の使用に消極的な場合があります。そのような施設と連絡をとる際、メールではレスポンスが遅くなるかもしれません。
うまく活用できていれば連携に大変便利なICT機器ですが、慣れない職員が使用すると、かえって情報交換のさまたげとなってしまいます。
訪問する施設が普段使用しているツールを把握し、連絡方法を定めておくことが連携のポイントといえるでしょう。
入居者に対する施設側の方針を確認しておく
方針しだいで、どのような状態までなら施設で対応できるかが異なってくるからです。特に看取りを積極的に行っている施設であれば、状態が悪化した際の処置やケアについて、頻繁なやり取りが発生する可能性があります。施設に配置されているスタッフの職種や対応できる業務、経営者の意向等により訪問診療医の果たす役割が変わってくるため、方針の確認は必須です。
また、施設や患者が求める医療と、訪問診療医が対応できる医療が一致しない場合もあります。双方のミスマッチを防ぐためにも、訪問診療で対応できる範囲を明確にし、必要に応じて入院対応するなどの判断基準も設けておくことが大切です。
事前指示書の有無を確認する
事前指示書の有無を確認しておくことも施設との連携では大切です。
訪問診療では施設入居者の家族と会う機会はめったにないため、家族が希望する医療と、患者が希望する医療が異なっていても、確認できない場合があります。
事前指示書が存在すれば、患者を含めた施設スタッフ・家族・訪問診療医との間で方針が共有でき、一貫性をもった治療が可能になります。
家族が延命を希望していても、患者が希望しないケースもあるため、トラブル回避のためにも事前指示書の有無を確認しておきましょう。
施設の感染症についての状況を確認する
施設内の感染状況を確認しておくことも大切です。施設には多くの人が出入りしたり、入居者が外出したりする可能性があるからです。
たとえば、訪問介護や訪問看護のような事業者が訪問してくる場合もあれば、入居者が通所系サービスを利用するために外出することもあるでしょう。季節性の感染症が流行する時期や、新型コロナウイルス感染症の患者数が地域で増えてきている時は特に、事前に施設へ感染状況を確認しておくことをおすすめします。
関係者間で目標を共有する
施設入居者の中には、訪問診療以外に介護保険サービスを利用している方もいらっしゃいます。診療を進めていくうえで、施設の職員も含めた関係者間で目標を共有することが重要です。目標共有のためには、定期的に連絡しあう機会をつくるとよいでしょう。
具体的には、カンファレンスやミーティングなどを利用することです。必要に応じてオンラインでのやり取りも活用できると、より効率的です。日頃から連絡をとりあい顔の見える関係であると、入居者の目標が共有でき、連携がとりやすくなるでしょう。
まとめ
高齢者施設への訪問診療におけるニーズは、施設の数とともに増えています。
施設での訪問診療を円滑に行っていくためには、連携のポイントを押さえておくことが大切です。
在宅での医療と異なり、施設にはたくさんのスタッフが勤務しているため、良好な関係性の構築や、診療方針・対応範囲の明確化、目標の共有などが不可欠です。
必要な医療を不足なく提供できるよう、連携のポイントを押さえておきましょう。
本記事が、訪問診療医にとって施設との連携のお役に立てば幸いです。
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