【訪問診療クリニックの院長必見】訪問診療クリニックのための人材マネジメント術

訪問診療クリニックを運営するにあたり、人材マネジメントは非常に重要な項目です。
しかし訪問診療クリニックでは、院長や事務長が診療業務や管理業務を兼任していることが多く、人材マネジメントに手が回らないケースが多々あります。
訪問診療クリニック自体の規模も小さく、マネジメントや役職・役割が曖昧になっているクリニック施設も多いでしょう。
「少数精鋭で信頼できるスタッフがいる」と過信していると、ある日突然退職……なんてことにもなりかねません。
今回は訪問診療クリニックにおける人材マネジメントのスキルを4つ紹介します。人材マネジメントスキルを活用して、スタッフ全員が気持ち良く働けるような訪問診療クリニック作りを目指しましょう。
人材マネジメントとは
クリニックの運営で、資金・物資・人材などを効果的に活用・管理する戦略をマネジメントといいます。その中でも、人材の活用・管理の部分が人材マネジメントです。
訪問診療クリニックにかかわらず、医療機関の経営において人件費は多くのコストを占めます。だからこそ、人材マネジメントは経営に直結します。
人材マネジメントがうまくいっている医療機関は、スタッフのモチベーションや技術、チーム力が高くなり、結果的に質の高い医療の提供につなげることができるでしょう。
訪問診療クリニックにおける人材マネジメントの問題点と解決策
訪問診療クリニックでよくある問題点について紹介します。
問題が起こってからではなく、日々のコミュニケーションでスタッフの状況を把握し、対処していくことが大切です。
課題①お互いの職種への理解
訪問診療クリニックでは、さまざまな職種がチームとなり患者のケアに当たります。
それぞれの専門性や知識・経験が活かせるのはとても良いことです。しかし互いの職種への理解と尊重が足りないと、チームの関係性が悪くなります。立場の違いで意見の違いが生じうることを理解したうえで、他職種の意見に耳を傾けていきましょう。
訪問診療は病院や外来診療と違い、職種ごとの業務範囲が曖昧な部分もよくあります。だからこそ自分だけが大変と思わず、お互いにフォローできるようにコミュニケーションをとっていきましょう。
課題②モチベーションが保てない
スタッフが「適切に評価してもらえていない」「頑張っているのに院長に見てもらえない」と感じたら、モチベーションや士気は下がってしまいます。
クリニック全体の目標、さらにはスタッフ個々の目標を設定し「目の前の仕事をこなすだけ」にならないような工夫を心がけましょう。目標を立てるだけでなく、定期的に進捗を確認することが重要です。
研修や資格取得、後進の育成業務などで評価や昇給をするなど、明確で公平な評価制度の導入も効果的です。
「〇〇してくれてありがとう」「◯◯してくれて助かった」など、具体的な事例とともに感謝の言葉をしっかりと伝えるようにしましょう。
毎日のちょっとした声掛けで「自分のことを見てくれている」「仕事に貢献できている」と思う気持ちがモチベーションにつながります。
課題③スタッフ間の人間関係
人間関係が悪いと、情報共有がスムーズにできなくなったり、治療やケア・患者対応に影響が出たりします。
対応にも一貫性がなくなり、患者や家族に不信感を与える可能性もあります。人間関係が悪くなる前に対策しておきましょう。
クリニック内での人間関係を悪化させないポイントを紹介します。
- スタッフ全体でのコミュニケーションの場を設ける:訪問診療クリニックでは、全員が顔を合わせる機会が多くありません。定例ミーティングや勉強会などのコミュニケーションの機会を作りましょう。
- 個別で面談する機会をつくる:個別面談は人間関係に限らず、スタッフ個々の不満や悩みを聞くチャンスです。信頼関係を築くきっかけにもなるため、定期的に行うようにしましょう。
- 個々の能力と仕事量を把握して評価する:仕事量や能力の差は、人間関係悪化の引き金になります。仕事の負担に著しい偏りがないか注意し、能力に見合った評価・賃金を配慮しましょう。
- 特別扱いするスタッフがいないように注意する:えこひいきしているスタッフがいると思われると院長や経営者への不信感につながります。思っている以上にスタッフは敏感です。声をかける回数の違い、敬語と友達口調の違いなどには注意しましょう。
課題④精神的負担が大きい
スタッフが1人で訪問する場面も多く、緊急時の判断や対応の精神的負担が大きくなります。看取りの現場に立ち会うことも多く、ストレスが溜まりやすくなります。
また訪問診療では、患者の病気を診るだけでなく、患者や家族の希望や意向に耳を傾けることも重要です。そのため、通常の外来に比べて患者や家族との関係性が深くなる傾向にあります。しかし、関係性が深くなるほど、意見が食い違ったときのトラブルも根深くなりがちです。
教育体制や情報共有のシステムの整備、困ったときにすぐ相談できる先輩やメンターの人員配置も配慮するポイントです。
人材マネジメントに必要な6つのポイント
人材マネジメントをするのに必要な資質を6つ紹介します。
- 物事を包括的に見られる
- 正しい分析・評価ができる
- リーダーシップがある
- コーチング力がある
- コミュニケーション能力がある
- 感情がコントロールできる
クリニックの院長や事務長1人で人材をマネジメントするのは非常に大変です。人材マネジメントスキルがあるスタッフに手伝ってもらい、スタッフと院長をつなげる役目を担ってもらうのも良いでしょう。
しかし医療機関という専門職集団の中では、十分な人材マネジメントスキルがあるスタッフを探すことも困難です。
このようなときは人材マネジメントの外部委託の検討も選択肢の一つとなるでしょう。
訪問診療クリニック経営者は人材マネジメントの知識が必要
院長として訪問診療クリニックを経営するためには、人材マネジメントの知識は必要不可欠です。
しかし小規模な訪問診療クリニックでは、十分な人材マネジメントに時間を費やせないのが現状です。
その結果、スタッフ間のコミュニケーション不足やモチベーションの低下、精神的負担の増大などの問題が生じやすくなります。
こうした問題を解決するためにも、適切な人材をマネジメントする立場に設置することが重要です。
外部の専門家に委託することも有効な手段といえるでしょう。適切な人材マネジメントを実践し、スタッフが働きやすい環境を整えることが質の高い医療を提供することにもつながります。