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「訪問診療を始めることになるとは、開業当初は想像していませんでした」。そう語るのは、東京都中野区で「たかねファミリークリニック」を運営する高根紘希先生。内科・小児科・皮膚科を標榜し、地域の「かかりつけ医」として開業した同院は、現在では訪問診療にも力を入れ、子どもから高齢者まで幅広い世代を支える存在となっています。
外来中心だったクリニックが、どのように訪問診療を取り入れ、地域医療に貢献する体制を築いていったのか──訪問診療開始のきっかけから苦労、運営の工夫、そしてやりがいについて伺いました。
たかねファミリークリニック 院長 
高根 紘希 先生
東京慈恵会医科大学医学部卒。同大学附属病院にて初期研修を修了後、腎臓・高血圧内科に入局。熊本大学医学部薬理学教室に国内留学し、学位を取得。その後、大学病院を退職し、総合病院小児科や皮膚科クリニックでの実務研修を経て、2019年に東京都中野区にたかねファミリークリニックを開業。外来診療と訪問診療を両立し、地域に根差したクリニックとして小児から高齢者まであらゆる年代に医療を提供。24時間365日の診療の傍ら、地域活動にも積極的に参加している。
― 開業から訪問診療に取り組まれるようになった経緯を教えてください。
当院は2019年に開業し、最初は外来診療のみを行っていました。地域の方が「まずは相談できる場所」にしたかったんです。
ところが、半年後に新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、状況が一変したんです。
患者さんの来院がぱったりと途絶え、「このまま診療を続けられるのか」と不安に思っていた矢先、近隣の訪問診療医から「閉業するので、患者さんを引き継いでほしい」という依頼がありました。訪問診療の経験もなく、患者さんの状態や診療の流れもわからないなかでの突然の依頼でしたが、「この地域で困っている患者さんがいるのなら、自分にできることをやろう」と覚悟を決め、訪問診療を始めました。
訪問診療を始めたばかりの頃、「何かお手伝いできることはありますか?」と近隣の医療機関に声をかけていたところ、「新型コロナの患者さんを自宅で看取ってほしい」という依頼が届きました。前例のない状況で多くの医療機関が断る中、最後に当院に声がかかったそうです。
不安もありましたが「自分にできることをやる」と決め、保健所や訪問看護の協力を得て対応しました。患者さんはご家族と過ごす時間を持て、穏やかに最期を迎えられました。この経験はメディアにも取り上げられ、自分自身が「在宅医療に本気で向き合おう」と決意する転機になりました。
― 訪問診療に対する考え方も大きく変わったのですね。
ええ。患者さんの「人生の最期」に医療者として関わるという重みと尊さを、あの経験から学びました。病院では見えにくい、患者さんの生活やご家族の想いに寄り添える在宅医療の意義を、実感として深く理解できた瞬間でした。
在宅医療に魅了されるきっかけになった、と今でははっきり言えます。
― 外来と訪問の両立は、多くの医師が悩むところだと思います。実際にはどのように体制を整えていったのでしょうか?
訪問診療を始めた当初は、外来の合間や休診日に私一人で回っていたのですが、患者さんが増えていく中で、外来と訪問がぶつかるようになってしまって。ある時、外来診療中に在宅患者さんからの緊急連絡が来て、すぐに対応できなかったんです。これはいけないと感じて、徐々にスタッフを増やし、体制を整えました。
現在は外来診療と訪問診療、それぞれが同じ1軒家の中で独立した体制となりました。クリニックは1階と2階で部門を分け、1階では外来診療を行い、スタッフの体制は看護師1名と事務員3名。そして2階は訪問診療の事務所として看護師3名、事務員2名、ドライバー2名を配置しています。訪問診療患者さんは約100名を越え、非常勤9名の医師と共に診療を回る日々です。
医師が増えたことで患者さんからの連絡にも柔軟に対応できるようになりました。今では1日に10件ほど回れるようスケジュールを組み、定期的な診察と緊急時の往診に対応しています。移動は基本的に車を使用しますが、訪問エリアがクリニック近隣であれば、徒歩や自転車、キックボードで移動することもあります。
― 組織づくりやスタッフマネジメントにおいて意識していることはありますか?
いちばん大事にしているのは、「スタッフが楽しく働ける環境をつくること」です。
一人で回っていた頃は、深夜の看取り後に朝から外来に出るような生活で、限界を感じていました。そこからは「自分の働き方」だけでなく、「一緒に働く仲間の働き方」にも目を向けるようになりました。
今では、週1回は組織づくりの勉強やスタッフとのミーティングを必ず行っています。外来に集中したいスタッフもいれば、訪問診療が好きなスタッフもいる。それぞれの想いにできる限り応えるようにしています。
― 訪問診療のやりがいを感じるのはどんなときですか?
やはり、患者さんの生活環境や家族背景などにも深く関わりながら、自分が医療を提供させてもらえることですね。
訪問診療では、ケアマネさんや看護師さん、ヘルパーさんなど多職種がチームで関わります。その現場に医師として参加し、一緒に悩み、話し合いながら一人の患者さんを支えていく──このチーム医療の実感が、本当に嬉しいです。
それに、患者さんとの関係も外来よりずっと深くなります。お誕生日には手作りのバースデーカードをお渡ししているのですが、涙を流して喜ばれたり、わざわざ車椅子でクリニックまでお礼に来てくださる方もいて。そういう瞬間が、私たちのエネルギーになります。
― 地域とのつながりについても大切にされていると伺いました。
はい。「町のお医者さん」として、医療以外の場でも関わっていきたいと思っています。
例えば月1回、子どもや高齢者向けの地域サロンを開催しています。健康相談やイベントを通じて、地域の方々と自然な形でつながる場をつくる。それも、地域医療の一環だと考えています。
在宅医療って、医師だけでは成立しません。看護師さん、薬剤師さん、ケアマネさん……多職種が「顔の見える関係」でつながることで、患者さんも安心して自宅で暮らせるんです。だから私は、地域の歯車のひとつであり続けたいと思っています。
外来診療と訪問診療の両立、そして地域活動。
さまざまな取り組みをしているからこそ町の人々との接点が生まれ、たかねファミリークリニックは地域に欠かせない存在となっているのでしょう。子どもから高齢者まで、地域の人々の健康と暮らしを支えるために、高根先生の活動は続きます。
これまで全6回にわたってお届けしてきた「外来クリニックのための在宅医療スタートアップ講座」は、今回で終了となります。
訪問診療を始める際に、
 「そもそも自院のエリアに訪問診療のニーズがあるのか分からない」
 「大きな投資は避けて、まずは小さく始めたい」
 といったお声をよく伺います。
そんな方には、以下のようなサポートをご用意しています。
まずは貴院周辺エリアに訪問診療のニーズがあるか確認したい方に
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