オンライン診療は医療法に規定される?在宅医療におけるオンライン診療の必要性を解説します
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オンライン診療の有効性や安全性を確保することを目的として、2025年の通常国会に提出予定の医療法改正案のなかで「オンライン診療の法制化」が検討されています。
本記事では、オンライン診療が医療法に規定される予定となった背景や在宅医療の現状とオンライン診療の必要性について解説します。
これからオンライン診療を検討しているクリニックは参考にしてください。
オンライン診療が医療法に規定される予定となった背景
2024年10月30日に開催された社会保障審議会・医療部会にて、オンライン診療を医療法で明確に規定することの重要性が議論されました。
議論では、対面診療に比べた場合のオンライン診療が抱える課題が取り上げられました。おもな内容は以下のとおりです。
- 医師が得られる患者さんの情報が少ない(触診などが実施できない、患者さんの容態を画面越しに判断する必要があるなど)
- 医師や患者さんの本人確認が困難(なりすましが可能になる)
厚生労働省は、保険診療や自由診療を問わず、オンライン診療の有効性や安全性を確保するために、適切なオンライン診療の推進に関する方針を発表しました。
適切なオンライン診療の推進について
2024年10月30日に厚生労働省が発表した「適切なオンライン診療の推進について」では、おもに以下の内容が示されました。
- 指針の位置づけ:情報通信機器を用いた「遠隔診療」を「オンライン診療」と定義する。
- 適用範囲:情報通信機器を通じておこなう遠隔医療のうち、医師と患者さんの間で実施されるもの。
- 指針のコンテンツ:適用対象や診療計画、医師・患者さんの所在などに関する事項。
オンライン診療を提供することが可能な場所について
オンライン診療を提供できる場所は、「医療提供施設」と「居宅など」のいずれかです。それぞれを満たすべき条件は、以下のとおりです。
- 医療提供施設(患者さんへの医療サービスの提供を目的とする施設)の要件:多数の患者さんへの医療の提供に適切な場として、衛生水準を確保している。
- 居宅など(医療提供施設外でそれぞれの患者さんが医療を受ける必要がある場所)の要件:
①療養生活を営む場所(社会通念上、医療を受けるにあたって適切な環境が確保されると考えられる場所)
②オンライン診療を受診するにあたって適切な環境が確保できると考えられる場所(プライバシーの確保がなされているかなど)
オンライン診療に関する総体的な規定の創設について
オンライン診療における法制上の位置づけを明確化し、適切なオンライン診療を推進していくために、医療法にオンライン診療の総体的な規定が設けられました。おもな規定内容は、以下の2点です。
オンライン診療をおこなう医療機関における規定
おもな内容は以下のとおりです。
- 都道府県に対し、オンライン診療をおこなう旨の届出を出す
- 厚生労働大臣は、オンライン診療をおこなう医療機関の管理者が実施する措置に関して、適切かつ有効な実施を図るための基準を定める
- オンライン診療をおこなう医療機関の管理者は、厚生労働大臣が規定する基準(オンライン診療基準)を遵守する
特定オンライン診療受診施設
おもな内容は以下のとおりです。
- 特定オンライン診療受診施設の設置者は、都道府県に対して届出を出す
- 特定オンライン診療受診施設の設置者は、運営者を置く必要がある
- 特定オンライン診療受診施設におけるオンライン診療実施にともなう責任は、オンライン診療をおこなう病院または診療所の医師が負う
在宅医療の現状とオンライン診療の必要性について
在宅医療は今後も需要が増加するとされています。とくに2040年以降では、全国の在宅患者数がピークを迎えると考えられています。
在宅にいる患者さんへの治療をおこなうためには、効率性を高め、限られた医療資源で持続できる在宅医療体制の構築が重要です。
そのために、オンライン診療を活用して患者さんの急変時への対応や終末期の患者さんへの対応を強化することが求められます。
在宅医療におけるオンライン診療は、来院が困難な患者さんや、訪問が難しい医師のサポートをするための重要な手段です。
在宅医療におけるオンライン診療の対象患者・診療の流れ
在宅医療におけるオンライン診療の対象患者の例や、診療の流れは以下のとおりです。今後、オンライン診療を活用した在宅医療を検討している方は参考にしてください。
在宅医療におけるオンライン診療の対象患者例
在宅医療におけるオンライン診療の対象となる患者さんは以下のような専門的な診察も対応が可能となっています。
- 新型コロナウイルス感染症のため治療を受けたい方
- 風邪や発熱などの風邪症状の治療を受けたい方
- 慢性蕁麻疹やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の治療を受けたい方
- 精神疾患の治療を受けたい方
- 肥満症の治療を受けたい方
- 神経疾患の治療を受けたい方
- 睡眠障害の治療を受けたい方
在宅医療におけるオンライン診療は、内科以外の専門的な治療を受けたい患者さんにも実施可能となっており、専門医への診察なども利用することができるようになっています。
在宅医療におけるオンライン診療の流れ
在宅医療におけるオンライン診療は看護師やケアマネジャーが関与する以下のような流れで実施することがあります。
- クリニックによる診療にて患者さんの症状をもとにオンライン診療の必要性を考慮する
- オンライン診療の日程を調整する
- 訪問看護師やケアマネジャーが患者さん宅へ訪問し、医療機関の医師と患者さんをオンラインでつなぐ。(デバイスの操作は医療介護専門職が実施する)
- デバイスを介して医師が診療し、必要に応じて処方箋を発行する
在宅療養中の患者が高齢などの理由で自身でオンライン診療を受けられない場合、 D to P with D の形態で、看護師やケアマネジャーがオンライン診療に関与する場合があります。
在宅医療におけるオンライン診療に関するよくある質問
在宅医療におけるオンライン診療に関するよくある質問は、以下のとおりです。
在宅医療におけるオンライン診療の必要な環境は?
在宅医療におけるオンライン診療に必要な環境は、以下のとおりです。
- 通信環境:インターネット回線の速度や安定性が重要。Wi-Fiが不安定な場合は有線LANを活用する
- 通信機器:スマートフォンやパソコン、タブレットなどを準備し、必要なアプリケーションやソフトウェアを揃えておく
在宅医療におけるオンライン診療のメリットは?
オンライン診療を活用した在宅医療のメリットは、以下のとおりです。
- 自宅にいる患者さんに対してスムーズな治療ができる:医師や看護師間のコミュニケーションが円滑になり、より適切な医療の提供が期待できる
- 患者さんの負担を減らせる:患者さんの診察や処方箋の発行、医療への相談などが遠隔地でも可能になるため、患者さんの負担が減る
在宅医療におけるオンライン診療サービスを選ぶ基準は?
在宅医療におけるオンライン診療サービスを選ぶ際は、以下のポイントに沿って選定しましょう。
- 対応する診療科目
- 保険適用の有無
- 機能の充実度
上記に加え、サービス提供会社のサポート体制についても確認をしておくことが大切です。
在宅医療におけるオンライン診療の個人情報保護として有効な方法は?
在宅医療におけるオンライン診療の個人情報保護として有効な方法は、以下のとおりです。
- セキュリティ面に配慮したアプリケーションや通信ツールを使用する
- 適切なパスワード管理やアクセス制御を実施し、個人情報漏洩の防止につながる対策をおこなう
- システムに関して定期的な更新をおこない、脆弱性や不具合に早期対応できるように努める
- 情報の流出や誤送信を防止するため、患者さんの確認を十分におこなう
- 診療時は周囲に人がいないことを確認し、プライバシーが保たれた環境でおこなう
在宅医療におけるオンライン診療の保険適用の算定条件は?
在宅医療におけるオンライン診療の保険適用のおもな算定条件は、以下のとおりです。
- 厚生労働省が規定する施設基準に適合するものとして地方厚生局長などに届け出た保険医療機関である
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を実施し、要点を診療録に記載する
- 原則として、保険医療機関に属する保険医が保険医療機関内で実施すること
- 緊急時に必要な対応ができること。やむを得ず対応できない場合は、患者さんが速やかに受診できる医療機関において対面診療を実施できるよう、事前に受診可能な医療機関を患者さんに説明しておく。そのうえで、かかりつけの医師または紹介先となる医療機関を診療録に記載しておく
- 対面診療を提供できる体制を整えておく。患者さんの状況によって対応が困難な場合は、他の医療機関と連携し、対応できる体制を構築する
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を実施し、当該診療が指針に沿った適切な診療であったことを診療録および診療報酬明細書の欄に記載すること。また、当該指針に沿って処方し、適切な処方であったことを診療録および診療報酬明細書の欄に記載する
まとめ
今後、自宅にいる患者さんへの治療ニーズが増加するなかで、オンライン診療を活用した在宅医療の必要性が増えていくことが予想されます。
在宅医療におけるオンライン診療を進めることで、自宅にいる患者さんに対してスムーズな治療ができます。
また、スタッフ間の連携がしやすくなり、質の高い医療が提供しやすくなるのがメリットです。
在宅医療におけるオンライン診療をおこなう際は、厚生労働省が定めた「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って進めましょう。