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2025年6月13日、政府は今後の地域活性化の指針となる「地方創生2.0基本構想」を閣議決定しました。この新構想は、人口減少を正面から受け止め、AIやデジタル技術を駆使しながら、全ての人が安心して暮らし続けられる持続可能な社会を目指すものです。特に、地域の医療・介護サービスの維持・確保と、長年の課題である医師の地域偏在の是正が重点政策として掲げられており、在宅医療に携わる専門職にとって重要な内容となっています。
背景:人口減少と医療の担い手不足への対応
我が国では、特に地方部において人口減少と高齢化が深刻化しており、日常生活に不可欠な医療・福祉サービスの維持が大きな課題となっています。新構想では、この現状を直視し、人口規模が縮小しても機能する社会・経済システムへの転換を急ぐ方針が示されました。
生産年齢人口が減少する中で、医療や介護の担い手をいかに確保し、サービスを提供し続けるかが喫緊の課題であると認識されています。
在宅医療・介護に関する主な政策
本構想の5つの政策の柱の一つに「安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生」が掲げられています。医療・介護分野については以下の取り組みが明記されました。
- 持続可能な医療提供体制の構築: 中山間・人口減少地域においても持続可能な医療提供体制を構築することを目指します。その一環として、郵便局などを活用したオンライン診療や訪問看護の推進が盛り込まれています。
- 医師偏在の是正と確保策: 構想では、地域における医師確保が不可欠であると指摘されています。医師不足地域への支援策強化に加え、大学・大学病院での医学教育や卒後の研修など医師養成過程を通じ総合的な診療能力を有する人材養成を促進することも記されています。
- 柔軟な介護サービス提供体制: 人口が減少する地域の実情に応じ、効果的・効率的な介護サービスを提供するため、人員配置基準などの弾力化や、複数の事業者が連携・協働する体制を推進することが検討されます。
- 新たなサービス拠点の創設: 郵便局や廃校などを活用し、医療・福祉・子育てなど複数の機能を1か所で提供する「地域くらしサービス拠点」の整備を進める方針です。これにより、住民が身近な場所で必要なサービスを受けられる環境を目指します。
デジタル技術の活用と新たな地域づくり
構想全体を通じて、AIやドローンといった新技術の徹底活用が強調されています。オンライン診療の積極的な活用に加え、ドローンや自動配送ロボットによる医薬品や生活必需品の配送など、テクノロジーを駆使して地域の課題解決を図る未来像が描かれています。
また、「生涯活躍のまち(日本版CCRC)2.0」の展開として、年齢や障害の有無にかかわらず誰もが役割を持って暮らせる小規模な地域共生ホームの整備などが進められ、地域コミュニティ全体で支え合う体制づくりが推進されます。
在宅医療機関に求められることとは
「地方創生2.0」は、人口減少という厳しい現実の中で、国が地域医療・介護の維持・確保に本腰を入れて取り組む姿勢を示したものです。オンライン診療の推進やデジタル技術の活用、医師偏在という構造的な課題への対策が強化される中、在宅医療機関は変化を待つのではなく、自ら変革の担い手となることが期待されています。テクノロジーを積極的に活用し、地域連携の核となることで、持続可能な地域医療の実現に貢献し、自院の価値を高めていくことができるでしょう。
参考)地方創生2.0基本構想