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2025年6月13日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」を閣議決定しました。今後の医療・介護の予算編成や制度改革の方向性を示すものであり、特に2026年度診療報酬改定や中長期的な地域医療構想に大きな影響を与えます。
本記事では、訪問診療クリニックや在宅医療の現場にとって押さえておくべき重要ポイントをわかりやすく解説します。
1. 社会保障予算、「高齢化+物価高+人件費高騰」を考慮した増額へ
これまでの「社会保障費の増加=高齢化に伴う増加分に抑える」という枠組みを見直し、今回の骨太方針では「人件費・物価の高騰」や「病院経営の安定」も考慮して予算を増やす方針が明記されました。
▶ なぜ重要?
- 訪問診療クリニックの多くは診療報酬に大きく依存しており、物価や人件費の上昇分を自己努力だけで吸収するのは困難です。
- この方針転換により、2026年度診療報酬改定での“実質的な報酬アップ”の可能性が高まったといえます。
2. 医療・介護職員のさらなる処遇改善を明記
医療・介護・福祉の職員に対しては、これまでの加算や報酬改定の効果を検証しつつ、2025年末までに新たな処遇改善策をまとめる方針です。
▶ 訪問診療現場への影響は?
- 人材(医師・看護師・医療事務など)を確保しにくくなっている現場にとって、「処遇改善による離職防止・人材確保」は非常に重要なテーマです。
- 今後の議論次第で、在宅医療に携わる職員に対しても、何らかの処遇改善策や加算の見直しが進められることが期待されます。
3. 「コストカット型からの転換」へ ─ 公定価格制度の見直し
骨太方針2025では、医療・介護・福祉などの 『公定価格』によってサービス価格が固定される分野において、十分な賃上げ・経営安定を図る」と明記。従来の「コストカット型経済」からの脱却姿勢が打ち出されました。
▶ どんな制度変化が考えられる?
- 「診療報酬に物価連動の考え方を反映」する議論が前向きに進む可能性があります。
- 人的資源に大きく依存する在宅医療にとっては、今後の追い風となり得る動きです。
4. 地域医療構想の再策定と「医師偏在対策」
「骨太方針2025」では、2025年度中に「新たな地域医療構想」のガイドラインを策定し、2026年度以降に都道府県が地域医療計画を再構築する方針が示されました。
病床数の適正化が掲げられる一方で、3党合意にあった「11万病床削減」については明記されませんでした。
▶ 在宅医療・訪問診療はどうなる?
- 病院依存から地域包括ケアシステム・在宅医療への移行がさらに加速。
- 訪問診療は「地域の医療資源」としてさらに重要性が増していきます。
5. 医療DX・マイナ保険証の円滑導入、在宅との親和性に注目
マイナ保険証の活用や、電子処方箋・診療情報の共有など、医療DXの推進も重点項目として位置づけられました。
▶ 訪問診療にとっての利点は?
- 地域の多職種との連携が重要な在宅医療にとって、医療DXが進むことで業務効率化・サービスの質の向上が期待されます。
訪問診療クリニックにとって、骨太方針2025は「経営安定と制度追い風のチャンス」になり得ます。
今後の診療報酬改定・制度動向を注視しつつ、医療DXを含めた自院の体制や加算取得戦略を早めに見直しておくことが、2026年以降の競争力強化につながります。
参考)内閣府|経済財政運営と改革の基本方針2025 (案)