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どこで差がつく?訪問診療医のリアルな年収

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どこで差がつく?訪問診療医のリアルな年収

「訪問診療って実際どうなの?年収は?」そう思って調べはじめた方も多いのではないでしょうか。
今後のキャリアや家庭の時間を見直したいと考える医師にとって、収入とワークライフバランスの両立は無視できないテーマです。

訪問診療医は、比較的高めの年収が見込める領域であり、働き方の自由度が高い点でも注目されています。また、働き方やポジションによっては転職により収入アップを実現している医師も少なくありません。

今回は、在宅医療専門の人材採用支援サービスの担当者に、訪問診療医の給与事情やワークライフバランス、求人選びのポイントについて実例を交えて詳しくお話を伺いました。

訪問診療医の給与体系とワークライフバランス

—訪問診療医の給与体系はどのようになっていますか?

訪問診療医の給与体系は、「固定年収に各種手当を加え、場合によってはインセンティブを支給する」といった形を採用している医療機関が多いのが実情です。

訪問診療では、医師に対して夜間や休日対応に応じたオンコール手当などが支給されます。インセンティブとしては、訪問件数や看取り件数に応じた成果報酬が設定されており、業務量や貢献度に応じた評価が行われます。
ただしインセンティブ項目が多いことは、必ずしも良い面ばかりではありません。たとえば訪問件数に応じたインセンティブを導入している場合、一定の収入を得るためには非常に多くの件数をこなす必要があり、結果的にハードな働き方につながるケースもあります。

—訪問診療は、ワークライフバランスの面でどうでしょうか?

ワークライフバランスを重視して、病院勤務から訪問診療へ転職する医師も少なくありません。訪問診療ではオンコール対応がネックに感じられることもありますが、近年は院内体制の整備やオンコールの外部委託によって、医師の負担を大きく軽減できている医療機関が増えています。オンコールそのものがない勤務形態もあり、日中の診療に集中しながら、呼び出しのない働き方が実現可能です。

また、日中のケアを丁寧に行うことで夜間の急変リスクを抑え、結果としてオンコール対応が発生しにくい環境を構築しているケースも多くみられます。これにより、「訪問診療=常に拘束される」というイメージとは大きく異なる働き方が可能になっています。

訪問診療への転職のポイント—自分に合う働き方を見極めることが重要

—訪問診療の求人を探す際のポイントを教えてください。

当社で取り扱う訪問診療医の基本年収の相場は、1500万〜2000万円程度が平均的な水準です。さらにオンコール手当などのインセンティブが加わるため、実際の年収はさらに高くなる可能性があります。
また、週4日勤務か週5日勤務かといった勤務形態の違い、経験やスキルによっても収入は変動します。実際は個別の交渉によって給与条件が調整されるケースも多いため、求人情報の提示額はあくまで目安と考え、一度問い合わせをして詳細を確認することをおすすめします。

—訪問診療医へ転職する際に、注意すべきポイントはなんでしょうか?

訪問診療は病院勤務とは異なり、患者さまの自宅という限られた環境で医療を提供するため、より「支える医療」に重点が置かれます。とくに訪問診療が未経験の医師にとっては、ギャップを感じることがあるかもしれません。また、外来や病棟管理を行う病院勤務に対し、訪問診療では地域を回るという大きな違いもあります。
訪問診療の求人には、ワークライフバランスを重視した「週4日勤務・オンコールなし・残業なし」といったものから、「訪問件数に応じて報酬を支給し、年収3,000万も可能」という高収入を目指せるものまで幅広くあります。
転職を検討する際には、訪問診療の特色を理解し、ご自身に合った働き方を見極めることが重要です。

—実際の訪問診療医への転職事例について教えてください。

訪問診療への転職では、過去の経験やスキルがしっかり評価されることがあります。たとえば、訪問診療経験のある医師が別のエリアへ転職した際には、これまでの経験やマネジメント能力が評価され、年収が100〜200万円アップしたケースもあります。

また、子育て中の女性医師が、ワークライフバランスを重視しながら年収をアップさせることができた事例や、外科医としてのキャリアを積んできた医師が、第二のキャリアとして地域貢献を目的に訪問診療を選んだ事例もあります。

訪問診療は多忙なイメージを持たれることもありますが、実際には医療機関ごとに体制が異なるため、理想とする働き方を実現できる可能性が大いにあります。

訪問診療の管理職—年収・キャリアアップのチャンス

—訪問診療の管理職に就くと、給与はどう変わるのでしょうか?

管理医師手当として200万円程度が上乗せされることが一般的ですが、それ以上の手当が支給される場合や、インセンティブが設けられているケースもあります。

当社で取り扱う求人では、「管理職=院長職」であるケースがほとんどです。在宅医療部門の部長といったポジションの求人もありますが、クリニック単位での求人が多いため、「管理職=院長」というケースが多いことが特徴です。

—管理職に就くためには、どのようなキャリアやスキルが必要でしょうか?

経営マネジメントのスキルがあれば高評価を得やすいですが、必須ではありません。しっかりと体制が整った医療機関では、管理医師の経験がない方でも、一定期間の研修を経て管理医師として活躍できる場合もあります。
訪問診療は患者さまの生活を支える医療のため、技術的なスキルよりも、内科の基本的な診療技術があることを前提とし、人柄が重要視されることも多いです。

—管理医師に求められる人物像について教えてください。

コミュニケーションスキルの高さは重視される傾向があります。患者さまやご家族への対応だけでなく、施設への訪問がメインの場合は施設スタッフとの関係構築も求められます。さらに、地域連携を図るうえで外部の方と関わる機会も多いため、多方面にわたるコミュニケーション能力が重要です。
また、訪問診療のクリニックは小規模な組織であることが多く、クリニックの文化や価値観に合うことも重視されます。クリニックによって経営方針も異なり、じっくり患者さまを診る方針のところもあれば、訪問件数を重ねることで、収益性を高めているクリニックもあります。

こうした背景によって、管理医師に求められる役割も異なります。一緒に働くスタッフと同じ思いを持って働くことができるかどうかは、年収以上に大切なポイントかもしれません。

訪問診療医の年収はオンコール対応や地域差が影響

—訪問診療医の年収には、どのような要素が影響しますか?

先ほどもお話ししたように、訪問件数や看取り件数が収入に影響することもありますが、大きな要素としてはオンコール対応の有無が挙げられます。近年では、医師の負担軽減のため、都市部を中心にオンコール業務を外部委託する医療機関も増えています。

地域差としては、関東エリアの平均年収が地方よりも100〜200万円ほど高く、次に高いエリアが関西です。それ以外の郊外では、年収がやや下がる傾向があります。
また、訪問診療の人員体制によっても年収に差が出ます。たとえば、医師が一人で車を運転し、患者さまのお宅を訪問するケースでは、収入が高額になる傾向があります。
法人の規模や方針によっては、病院勤務と給与水準が変わらない場合もあります。こうした条件は求人情報だけでは判断しにくいため、転職エージェントを活用して詳細な情報を確認されることをおすすめします。

—若手とベテランの医師で年収の差はありますか?

訪問診療では、経験年数による年収の差が出にくいことが特徴です。実際、3年から5年の若手専攻医の方でも、2000万円の報酬が提示されるケースがありました。

基本的な診療技術があり、患者やスタッフとのコミュニケーションが円滑に取れる先生であれば、若手でも高額報酬を得られる可能性は十分にあります。

転職エージェントを活用し、理想の転職を実現

—理想の年収を得るために、転職エージェントのサポートはどのように役立ちますか?

まず、転職エージェントは地域の市場相場を把握しているため、適切な求人をご案内できるという点が大きな強みです。地域ごとの在宅医療の特徴や、キャリアに応じた医療機関の選び方についても適切なアドバイスができます。とくに、在宅医療が未経験の医師には、必要な情報をしっかり提供できるよう努めています。

また、経験豊富なエージェントが間に入ることで、年収交渉をスムーズに進めることが可能です。多忙な先生に代わって、希望条件に沿った求人の提案から、面接・契約の調整までサポートするため、転職活動の負担を大幅に軽減できます。

—ありがとうございます。最後に、訪問診療医の年収やキャリアアップのために、在宅専科では、どのようなサポートを提供しているか教えてください。

当社は在宅医療に特化したエージェントとして、医療機関と密に連携しながら情報収集を行っているため、訪問診療医を希望される皆さまに最適な求人をご紹介することができます。非公開求人も多数取り扱っており、当社のみが取り扱う求人もあります。
また、在宅医療の現場に精通したエージェントが在籍しており、働き方や年収の詳細な情報を具体的に提供できる点も強みです。先生のキャリアビジョンにもとづき、条件交渉や入職後のフォローまで一貫したサポートを行っています。
「今すぐ転職を考えているわけではないが、在宅医療に興味がある」「まずは情報収集をしたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。私たちは、求人・求職のサポートだけでなく、在宅医療の担い手を増やすことを目指し、医師の皆さまに在宅医療に関する情報を積極的に提供しています。
医師としての新しいキャリアを考える際に、少しでもお力添えできればと思います。

この記事を書いた人

一坊寺 唯

医療ライター・コンテンツディレクター/Cuddle Writing(カドルライティング)代表。大学卒業後、ヘルスケア関連企業にて企画職に従事。2019年にフリーランスWebライターとして独立し、医療・健康ジャンルを中心に多数メディアの記事制作を手がける。「信頼できる医療・健康情報を通じて、ヘルスリテラシーを向上させる」というミッションのもと、医療系記事制作チームCuddle Writingを運営。

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