後期研修なしでも取得可能 在宅医療専門医という新たなキャリアの道

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後期研修なしでも取得可能 在宅医療専門医 

初期研修を終えたばかりの若手医師が、後期研修を経ることなく、直接在宅医療の現場で活躍する――。
いわゆる「直在(ちょくざい)」というキャリアを選ぶ医師が増える中、注目を集めているのが「在宅医療専門医」という資格です。
この記事では、その制度の概要や取得条件、後期研修を経ていない医師にとっての意義、そしてキャリア形成における具体的なメリットを解説します。

なぜ今、「在宅医療専門医」なのか?

高齢化の進行によって、病院外での医療提供体制へのニーズが高まっています。
厚生労働省の「患者調査の概況(2023年)」によれば、在宅医療を受けている患者は1日あたり約24万人。
これは過去最多であり、今後も増加が予想されます。
こうした背景のもと、医師の働き方も多様化しています。
長時間労働や医局制度による制約を避け、より柔軟で自分らしい働き方を求めて在宅医療に進む医師が増えています。
中には後期研修を経ず、初期研修修了後すぐに在宅医療の道を選ぶ「直在」の医師もいます。

在宅医療専門医とは?

一方で、在宅医療では内科や外科のように「基本領域」の専門医制度が存在しないため、専門性を示す明確な指標が少ないという課題があります。
そこで注目されているのが「在宅医療専門医」です。
在宅医療専門医は、日本在宅医療連合学会が認定する専門資格で、在宅医学に基づいた在宅医療の専門医を養成・認定し、在宅医療の発展に貢献することを目的に認定されています。
試験は年に1回実施され、1次審査(書類選考)と、2次審査(筆記試験とポートフォリオ面接)からなります。

すでにキャリアのある医師には実践者コースも

在宅医療専門医の大きな特徴のひとつは、後期研修を受けていなくても取得可能である点です。
専門医の資格取得要件は、次の2つです。

  1. 専門医試験受験には、5年以上の医師としての経験を必要とする
  2. 1年間以上の在宅研修プログラム修了者に試験を行うことを基本とする

    在宅研修プログラム中は常勤医として研修施設に勤務し、1単位を半日として週4単位以上の訪問診療の研修を行うことが必要です。
    また、1年間以上の在宅医療研修プログラムを行う場合、次の2つの研修条件が必要になります。

    1.    半年間以上の内科での研修を修了していること
    (卒後臨床研修修了者は、卒後臨床研修の内科研修で代替可。医師としての経験が10年以上あり全身管理をしている場合も免除される)

    2.    緩和ケア研修(3か月相当)の受講
    (年間の在宅看取りが10人以上の研修施設で研修を受けている場合は免除が可能)

    ただし、すでに在宅医療を5年以上実践している人に対しては、これらの在宅研修プログラムを終了していなくても実績に基づいて専門医試験を受けることができる「実践者コース」が用意されています。

認定医制度との違いと役割

さらに、2023年からは「在宅医療認定医」制度もスタートしました。
在宅医療認定医は、在宅医療の質の底上げや在宅医療を実践していることに対する評価、在宅医療のすそ野を広げることなどを目的に作られたものです。
内科以外の専門医の医師も視野に入れた制度で、がんや認知症、看取りなどを含む症例や試験などによって認定されます。
2023~2024年度の移行期間を経て、2025年度から正式に制度開始となる予定です。 

日本在宅医療連合学会は、在宅医療認定医と在宅医療専門医のイメージを以下のように説明しています。

在宅医療認定医

    • 在宅医療に関して、基本的な知識・技能・態度を持っている
    •  基本的な知識の担保 単位制(e-ラーニングなど)
    • 一定期間の在宅の経験を持っている
    •  実践者コースの専門医受験資格と同等
    •  あくまでも実践者に対する認定制度
    • 在宅医療のジェネラリスト

在宅医療専門医

        • 在宅医療に関して、基本的なことは責任を持って行うことができる
        • 地域の在宅医療に対して指導的な役割を担うことができる
        • 在宅医療に対し学術的なアプローチができる
        • 在宅医療に関して教育・指導を行うことができる
        • 在宅医療の発展をけん引していく役割を担う医師
        • 在宅医療のスペシャリスト
      なお、認定医と専門医を両方所持するということはできません。
    認定医を取得後に専門医を取得した場合は、認定医の資格は専門医に置き換わることになります。

在宅医療専門医を取得するメリット

専門性の証明としての価値

在宅医療専門医を取得するメリットはいくつかあります。
メリットのひとつは、専門性の証明です。
在宅医療は診療範囲が広く、医師の力量を客観的に把握しにくい領域とも言えます。
在宅医療専門医を取得することで、知識や診療経験などを第三者機関が正式に認定することとなり、専門性を客観的に示しやすくなります。
これによって、患者や家族を始めとして、対外的な信頼性が高まることが期待できます。

キャリアの幅が広がる

また、転職や開業、地域医療機関・行政との協働など、さまざまな場面で強力な肩書きとして活用でき、キャリアの選択肢を広げる役割も果たします。
訪問診療クリニックでの採用や責任ある立場への登用、地域医療の推進においても資格が大きな後押しとなるでしょう。

診療の質向上と自己研鑽につながる

在宅医療専門医の取得過程では、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)や看取り、多職種連携など日々の診療に直結する幅広い実践知識を体系的に学ぶことになります。
これによって在宅医療に関する診療の質向上や自己研鑽につながることが期待できます。

地域や組織でのリーダー的役割を担いやすい

専門医資格は、地域包括ケアの中核的存在、教育や研修の指導者、行政や関連団体との協働のパートナーとしても評価されます。
在宅医療を広め、質を向上させる立場として活躍の幅を広げることができるのも、この資格の大きな意義です。

まとめ

在宅医療専門医は、在宅医療を担う医師がその専門性を形にし、地域社会における信頼を高める強力な資格です。
後期研修を経ていない医師であっても挑戦できる柔軟な仕組みが整っているため、いわゆる直在を含め、多様なキャリアを歩む医師にとって大きな支えとなります。
在宅医療へのニーズがさらに高まる中で、自らの診療の質を上げ、地域医療に貢献していきたいと考える医師にとって、この資格はその思いを後押しするものとなるでしょう。

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この記事を書いた人

横井 かずえ

医療ライター。医薬専門新聞社『薬事日報』で記者として13年間、医療現場や厚生労働省、日本医師会などを取材して歩く。2014年に独立。現在はプレジデント、講談社・コクリコ、ドクターズマガジン、m3.comなどで幅広く執筆。共著『在宅死のすすめ方 完全版』(世界文化社)。取材してきた医師、薬剤師、看護師は500人以上。

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