在宅医療における入院リスクを減らすために
- #在宅医療全般
本邦は超高齢社会を迎え、在宅医療を受ける高齢者も年々増加し、高齢者の救急搬送は増加している。適切なタイミングで効果的なケアをすることで入院を減らすことができる状態をAmbulatory care -sensitive conditions(ACSCs)と定義され、プライマリ・ケアの質指標の一つとして用いられている。在宅患者において入院リスクを減らすためにどのようなことが必要なのか本講演で概説する。
※こちらの記事は在宅医療従事者のための動画プラットフォーム「peer study 在宅医療カレッジ」のプレミアムセミナーの内容の一部を公開したものです。
講師
悠翔会在宅クリニック品川
診療部医師
井上 淑恵
チャプター
- 我が国の現状
- 入院に関する具体的な症例
- 入院関連機能障害
- 在宅患者の特徴のまとめ
- Ambulatory care-sensitive conditions(ACSCs)について
- プライマリ・ケアの質の評価に関する概念枠組み
- ACSCsのエビデンス
- 在宅患者のACSCsに関するエビデンス
- 入院リスクを減らすために在宅医療に求められること
- 急変を早く見つけるために
- Advance Care Planning(ACP)について
- ACP実施のタイミング
- 高齢者の心理的特性について
- ACP実施の方法
- 共感を伝えるコミュニケーションスキル
- 医療者のコミュニケーション技術研修
- Take Home Message
我が国の現状
本日の内容ですが、まず在宅患者の特徴について症例を交えてお話しさせていただきます。次にAmbulatory Care-Sensitive Conditions (ACSCs)についてお話しした後、入院予防のために在宅医療ができることをハードとソフト面からお話しさせていただきます。
まず在宅患者の特徴についてです。
本邦では訪問診療の件数が増加しておりまして、患者の約9割が75歳以上の後期高齢者となっております。また要介護状態の患者も大幅に増加しております。
高齢者は加齢に伴い脆弱性が増加しております。
多疾患を有する高齢者の特徴としては
男性であること、85~89歳であること、医療費1割負担であること、在宅医療を受けていること、外来受診施設数が多いこと、入院回数が多いことがあげられます。
多疾患で高齢である要介護高齢者は急変しやすく、入院への依存度も高くなり、在宅医療を受ける高齢者のほとんどは多疾患併存状態であるといえます。
では在宅医療を受けている患者はどのような理由で入院しているのでしょうか。
厚労省の発表資料には介護施設・福祉施設からの入院患者の内訳があり、誤嚥性肺炎を含む肺炎が19%、尿路感染症が5%、うっ血性心不全が5%で全体の1/3を占めました。
悠翔会在宅クリニック品川における訪問診療を受けている居宅および施設の患者は約210名ほどいらっしゃいますがが、2022年1年間の緊急入院の内訳を調査したところ、肺炎や尿路感染症といった感染症が26%、大腿骨頸部骨折が16%、うっ血性心不全が13%、夏場の脱水が10%であり、それらが緊急入院の約2/3を占めておりました。
ここで2例症例を提示いたします。