2025年4月開始「かかりつけ医報告制度」とは|概要や今後の動きを解説
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2025年4月に開始するかかりつけ医報告制度について、どのような制度かわからない方がいるのではないでしょうか。
医療機関として、どう対応していくべきか把握できていない方もいるでしょう。
本記事では、かかりつけ医制度の概要や制定されるに至った背景、医療機関が実施すべき準備や心構えについて解説します。
かかりつけ医報告制度がスムーズに始められるよう、今のうちから必要な準備を進めておきましょう。
かかりつけ医機能報告制度とは?
かかりつけ医とは、健康に関することを相談でき、最新の医療情報に精通し、必要なときに専門医や専門医療機関を紹介してくれる身近な医師です。
かかりつけ医機能とは、地域の医療機関が、身近な地域における日常的な診療・疾病の予防措置や、その他の医療提供をおこなう機能を指します。
かかりつけ医機能報告制度は、2023年の医療法改正で作られた「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」内の取り組みのひとつです。
本制度のおもな目的は以下のとおりです。
- 医療機関が地域のニーズを踏まえ、必要なかかりつけ医機能を確保する
- 患者さんがかかりつけ医機能を有する医療機関を利用できるようになる
今後は、患者さんの入退院時の支援や休日・夜間対応、在宅医療や介護サービスとの連携などを視野に入れ、かかりつけ医機能の強化が検討されています。
かかりつけ医機能報告制度が求められる背景
かかりつけ医機能報告制度が求められる背景は、患者数の増加や、医療機関のマンパワー不足などにともなう医療需要の変化が関係しています。
医療ニーズの変化を引き起こす要因は、以下のとおりです。
入院患者数の増加
全国における高齢人口は、過疎地域では減少するものの、大都市では増加していく見込みです。
また、地方都市部では高齢人口が増加する地域と減少する地域に分かれるとされています。
入院患者数は2040年にピークを迎えるとされており、65歳以上が占める割合は継続的に上がり、2050年には約8割になると見込まれています。
外来患者数の増加
全国における外来患者数は2025年にピークを迎え、2026年以降は減っていく見込みです。
一方で、65歳以上が占める割合は増加していき、2050年には約6割になると予想されています。
在宅患者数の増加
全国における在宅患者数は2040年以降にピークを迎える見込みです。
年齢別の訪問診療受療率は、85歳以上の患者さんが大部分を占めます。また、訪問診療利用者推計では、75歳以上の患者数が増加していくことが予想されています。
医療と介護の複合ニーズの増加
2025年以降、後期高齢者の増加は緩やかになるものの、85歳以上の人口は増加する見込みです。とくに、要介護認定率は年齢が上がるにつれて上昇し、85歳以上になるとさらに上がると考えられています。
後期高齢者の人口増加と、要介護認定率の上昇により、今後は医療と介護の複合ニーズがより増えていくことが予想されます。
死亡数の増加
死亡数は2040年でピークを迎え、次の年以降は減少する見込みです。また、死因については悪性新生物や心疾患とともに老衰が増加傾向にあります。
死亡の場所は、病院や診療所が増加傾向にある一方で、自宅や介護施設なども増えています。
マンパワー不足
就業者全体の数は年々減り、2040年には大きく減少するなかで、医療・福祉分野の人材は現在よりも多くの人数が必要になる見込みです。
一方で、医療提供者側(医師)の高齢化も進んでいます。
かかりつけ医機能報告制度に関する報告業務
かかりつけ医機能報告制度に関する報告業務について、対象となる医療機関や報告内容を解説します。それぞれの概要を把握しておきましょう。
かかりつけ医機能報告制度の対象となる医療機関
1号機能
1号機能の医療機関は、継続的な医療が必要なものに対する発生頻度が高い疾患にかかる診療、その他の日常的な診療を継続的かつ総合的におこなう施設を指します。
1号機能における報告事項は以下のとおりです。
- かかりつけ医機能の報告事項を院内で掲示していること
- かかりつけ医機能に関する研修修了者の有無や、総合診療専門医の有無を報告すること
- 医療に関する患者さんからの相談に対応できること
- 一次診療を実施できる疾患であること
- 17の診療領域※ごとの一次診療における対応の可否、いずれかの診療領域について一次診療ができること
※皮膚・形成外科領域、神経・脳血管領域、精神科・神経科領域、眼領域、耳鼻咽喉領域、呼吸器領域、消化器系領域、肝・胆道・膵臓領域、循環器系領域、腎・泌尿器系領域、産科領域、婦人科領域、乳腺領域、内分泌・代謝・栄養領域、血液・免疫系領域、筋・骨格系及び外傷領域、小児領域
上記の報告事項がいずれも可の場合、1号機能を有する医療機関として2号機能の報告も求められます。
2号機能
2号機能の医療機関は、時間外診療や入退院時支援、在宅医療の提供や介護サービスなどと連携した医療提供をする施設です。
2号機能における報告事項は以下のとおりです。
- 通常の診療時間外の診療:通常の診療時間外に診療をおこなう機能
- 入退院時の支援:在宅患者の後方支援病床を確保したうえで、地域クリティカルパスに参加し、入退院時に共同指導・情報共有をおこなう機能
- 在宅医療の提供:在宅医療を提供する機能
- 介護サービスなどと連携した医療提供:介護サービスなどの事業者と連携して医療を提供する機能
- その他の報告事項:検診や予防接種、地域活動や教育活動など
かかりつけ医機能の確保に向けた研修
かかりつけ医機能報告制度に取り組む際は、以下の研修に参加し、準備を進めましょう。
かかりつけ医機能の確保に向けた座学研修
座学研修では、地域連携や多職種連携、幅広い診療領域への対応に関する知識を学ぶ必要があります。
学ぶべき対象となる具体例としては、以下のとおりです。
- 頻度の高い疾患・症状への対応方法
- 高齢者の診療方法
- 医療DXを活用した医療提供方法
- 在宅医療の導入について
- 初期救急の実施・協力の仕方
- 介護保険・障害福祉制度の仕組み
かかりつけ医機能の確保に向けた実地研修
地域でかかりつけ医機能を確保するためには、在宅医療や幅広い診療領域の患者さんの診療経験が重要です。
実地研修は、医師会や大学のシミュレーションラボなどを通しておこなわれることが想定されています。
かかりつけ医機能報告制度を実施するための患者への説明の仕方
かかりつけ医機能(2号機能)の対象となる医療機関では、患者さん(慢性疾患のある高齢者など)に対して適切な説明をする必要があります。
説明すべき内容は以下のとおりです。
- 患者さんの疾患名
- 治療に関する計画
- 医療機関の名称・住所・連絡先
- その他厚生労働省令で定める事項
患者さんへ説明する際は、書面や電子メール、電子カルテ経由で患者サマリーを入力し、共有しましょう。
かかりつけ医機能報告制度の今後のスケジュール
2025年以降は、かかりつけ医機能報告制度に関して、令和7年度の報告に向けた準備が進められます。
おもなスケジュールは以下のとおりです。
- 2025年4〜6月:医療機関への周知がなされる
- 2025年11月以降:医療機関に報告依頼が入る
- 2026年1〜3月:医療機関からかかりつけ医機能の報告をする
- 2027年4〜6月:報告内容の集計・分析を実施
- 2027年7〜9月:報告結果を公表する
かかりつけ医機能報告制度に関するよくある質問
かかりつけ医機能報告制度に関するよくある質問と回答は以下のとおりです。
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Q
G-MISを用いた報告とはどのようなものですか?
AG-MISとは、「医療機関等情報支援システム」と呼ばれるもので、全国の医療機関(約38,000施設)の稼働状況、病床や医療スタッフの状況、受診者数、検査数、医療機器(人工呼吸器等)、医療資材(マスクや防護服等)の確保状況などを一元的に把握・支援するシステムです。本システムを用いてかかりつけ医機能報告をします。
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Q
協議の場の単位は市町村になるのですか?
A自治体の規模や地域の実情などによっても異なるものであり、協議テーマや市町村の規模、これまでの取組内容によって色々なパターンがあります。地域の現状や課題等を踏まえたうえで、都道府県において市町村と調整しながら協議の場の単位を検討することが必要です。
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Q
報告制度の開始にともない必要となる事項はありますか?
A厚生労働省では、以下の内容を呼びかけています。
・システムを用いたかかりつけ医機能報告業務における体制の確認・検討が必要
・かかりつけ医機能の協議の場の開催・運営では、地域の実情を把握している市町村の参加が重要
・協議の場については、既存の場(都道府県・市町村・医師会など)で同様の趣旨・内容を協議している、もしくは協議可能な会議体がないか確認をする
まとめ
かかりつけ医機能報告制度は、入院・外来・在宅患者数の増加や、医療・介護の複合ニーズの増加、医療機関側のマンパワー不足などが背景となり制定されました。
かかりつけ医である医師は座学研修や実地研修を経て、地域連携や多職種連携、幅広い診療領域への対応に関する知識を学ぶ必要があります。
かかりつけ医機能報告を実施する際は、スムーズな報告となるよう、必要に応じて患者さんに必要事項を説明しましょう。