ICT導入や業務効率化を行う医療機関に給付金|令和6年度医療施設等経営強化緊急支援事業

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ICT導入や業務効率化を行う医療機関に給付金|令和6年度医療施設等経営強化緊急支援事業

厚生労働省は、医療現場の生産性向上や賃上げを支援するための施策として、2024年度補正予算を活用した医療機関に対する経営支援事業(令和6年度医療施設等経営強化緊急支援事業)を2025年2月12日に通知しました。

本記事では本支援事業に含まれている「生産性向上・職場環境整備等支援事業」について解説していきます。

1. 支援の概要

(1)目的

人材確保が喫緊の課題となっている中で、限られた人員でより効率的に業務を行う環境の整備費用に相当する金額を、給付金として支給することにより、業務の生産性を向上させ、職員の処遇改善につなげることを目的としています。

(2)支援対象となる医療機関

本事業の対象となるのは、2024年4月1日から2025年3月31日の間に業務効率化や処遇改善を実施する以下の医療機関です。

  • 病院
  • 診療所(医科・歯科)
  • 訪問看護ステーション


また、2024年度診療報酬改定で新設された「ベースアップ評価料」を2025年2月1日時点で届け出済み、または3月31日までに届け出る予定の施設が支給対象となります。

(3)支給額

医療機関の種類に応じて、以下の給付金が支給されます。

医療機関の種類 支給額
病院・有床診療所 1床あたり4万円(許可病床4床以下の有床診療所は1施設18万円)
無床診療所 1施設あたり18万円
訪問看護ステーション 1施設あたり18万円

2. 対象となる取り組み

本事業では、医療機関の業務効率化や職員の処遇改善につながる取り組みが支援の対象となります。主な取り組みは以下の3つです。

(1)ICT機器の導入による業務効率化

  • タブレット端末の導入
  • 離床センサーの導入
  • インカムの導入
  • WEB会議システムの導入
  • 床ふきロボット
  • 監視カメラの導入 など

(2)タスクシフト/シェアによる業務効率化

  • 医師事務作業補助者、看護時補助者等の職員の新たな配置によるタスクシェア/タスクシフト

(3)職員の賃上げ

  • 処遇改善を目的とした、既に雇用している職員の賃金改善

3. 申請・報告義務と注意点

(1)申請に関する要件

給付金の申請を行う医療機関は、以下の条件を満たす必要があります。

  • ベースアップ評価料の届出を済ませている、または3月31日までに届出予定であること
  • 業務効率化や賃上げに関する取り組みを実施すること


最新の情報や申請手続きの詳細については、各都道府県の公式ウェブサイトや担当部署からの通知をご確認ください。

(2)報告義務

給付金を受けた医療機関は、事業実施後に「実績報告書」を都道府県に提出する必要があります。

(3)給付金の返還が求められるケース

以下のいずれかに該当する場合、都道府県から給付金の全額返還を求められる可能性があります。

  • 申請内容が事業の目的に明らかに合致しない場合
  • 申請内容を偽るなど、不正な手段で給付金を受給した場合
  • 「ベースアップ評価料」の届出を3月31日までに行わなかった場合

4. 事業の目的と期待される効果

本事業の目的は、医療機関の業務効率化と職員の待遇改善を支援することで、持続可能な医療提供体制を確保することです。具体的な効果として、以下の点が期待されています。

(1)業務効率化による医療の質向上

  • ICT技術の活用により、医療スタッフの業務負担を軽減し、患者ケアの質を向上させる
  • タスクシフト・シェアの推進により、業務分担を最適化し、医師・看護師の負担を軽減する

(2)職員の処遇改善による人材確保・離職防止

  • 賃上げを行うことで、医療従事者のモチベーション向上と人材の定着を促進
  • 働きやすい環境を整備することで、慢性的な人手不足の解消につながる

(3)持続可能な医療提供体制の構築

  • 医療機関の経営を安定化させ、地域医療の維持・強化につなげる
  • ICT化による業務効率化で、医療サービスの質を高め、患者満足度を向上させる

5. まとめ

「生産性向上・職場環境整備等支援事業」は、医療機関の業務効率化・職場環境改善を支援し、医療従事者の負担軽減と待遇改善を実現するための補助金制度です。

  • ICT機器の導入、タスクシフト・シェアの推進、職員の賃上げなどが対象
  • 病院・診療所・訪問看護ステーションが対象で、給付金の支給額は最大で病床1床あたり4万円、無床診療所は1施設18万円
  • ベースアップ評価料の届出が必要で、未届出の場合は返還義務が発生


この制度を活用し、医療機関の生産性向上や医療従事者の働きやすさ向上につなげることが期待されています。

最新の情報や申請手続きの詳細については、各都道府県の公式ウェブサイトや担当部署からの通知をご確認いただき、支援事業をぜひご活用ください。

参考)厚生労働省|令和6年度医療施設等経営強化緊急支援事業の実施について

この記事を書いた人

在宅医療カレッジ編集部

在宅医療に関わる方・これから始めたい方を応援する在宅医療の情報プラットフォーム「在宅医療カレッジ」編集部です。 「学ぶ」「働く」「役立つ」をテーマに在宅医療に関するあらゆる最新情報を配信しています。

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