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電子カルテの代行入力を検討しているものの、法的に問題がないか不安に思う方がいるのではないでしょうか。
また、代行入力が可能な場合、どの範囲まで業務を任せられるか知りたい方もいるでしょう。
本記事では、電子カルテの代行入力や医師事務作業補助者の仕事内容を解説します。自身の業務負担を軽減し、クリニックの経営に力を入れていきたい方はぜひ参考にしてみてください。
電子カルテの代行入力は違法?
電子カルテの代行入力は違法ではありません。
看護師その他の医療関係職種のほか、医師事務作業補助者(次の項目で解説)等の事務職員が行うことも可能になっています。
昨今、医師の長時間労働の是正が進められ、医師の働き方改革が推進され始めました。
この動きに伴い、多職種の専門性を活かしたタスクシフト・シェアが求められるようになり、電子カルテの代行入力については、令和3年9月30日の厚労省の通知「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」の中で以下のように記載されています。
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(通知から一部抜粋)
① 診療録等の代行入力(電子カルテへの医療記録の代行入力、臨床写真など画像の取り込み、カンファレンス記録や回診記録の記載、手術記録の記載、各種サマリーの修正、各種検査オーダーの代行入力)
② 各種書類の記載(医師が最終的に確認または署名(電子署名を含む。)することを条件に、損保会社等に提出する診断書、介護保険主治医意見書等の書類、紹介状の返書、診療報酬等の算定に係る書類等を記載する業務)
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つまり、看護師などの医療関連職種や医師事務作業補助者が医師の指示・監督のもとで電子カルテの入力を代行することが、タスクシフト/シェアの一環として正式に認められています。
次からは「医師事務作業補助者」について、概要とできる業務・できない業務について解説していきます。
医師事務作業補助者とは
医師事務作業補助者とは、医師の負荷軽減を目的とし、事務的な業務をサポートする職種です。
医師事務作業補助者は別名「医療秘書」「医療クラーク」「メディカルアシスタント」「ドクターズクラーク」などと呼ばれています。
主に患者さんの治療に関する情報やデータなどを管理・整理し、診療に関する資料の準備や、患者さんの個人情報・治療記録を電子カルテに入力します。
医師事務作業補助者ができること
医師事務作業補助者ができることは、電子カルテの代行入力以外にも多岐にわたっています。主に対応可能な業務は以下のとおりです。
電子カルテの代行入力
電子カルテの代行入力は、医師事務作業補助者の業務のひとつです。医師事務作業補助者が代行することで、医師は患者さんの診察に集中しやすくなります。
ただし、代行入力をする際は、医師の具体的な指示のもとで対応する必要があります。入力内容に関する最終的な責任は医師にあるためです。
文書作成補助
文書作成補助として、以下の文書の作成業務をサポートできます。
- 診断書
- 処方箋
- 紹介状
- 退院サマリー
- 入院診療計画書
- 患者さんとその家族への説明文書
電子カルテの入力代行と同様に、上記の文書は患者さんの治療方針を決めるための重要な書類です。そのため、ミスのない正確な記載が求められます。
オーダー補助
オーダー補助として、処方・注射・検査・処置・食事などの入力補助をサポートできます。医師事務作業補助体制加算を届け出ている医療機関を対象にした調査によると、医師事務作業補助者によってオーダー補助が実施されていることが報告されました。
施設によっては、医師事務作業補助者の経験年数によって業務を割り振っているケースもあります。
データ入力・管理
データ入力・管理業務として、以下の内容が対応可能です。
- がん登録
- 検査データ入力
- 医療統計などの入力
- 学会やカンファレンス資料準備
- 行政上の各種システム(救急医療情報システム)への入力
- 感染症サーベイランス事業に関する入力
救急医療情報システムとは、各都道府県に設置された救急医療に関する情報集約システムです。
感染症サーベイランス事業とは、国内の感染症に関する情報の収集・公表、発生状況および動向の把握をおこなう事業を指します。
医師事務作業補助者ができないこと
医師事務作業補助者の仕事は、医療機関や法律の規定によって厳しく定められており、担当できない業務もあります。
対応できない主な業務内容は以下のとおりです。
医師以外から指示された業務
医師事務作業補助体制加算の要件により、医師以外からの指示は受けない旨が定められています。
そのため、看護師や検査技師、薬剤師といった医師以外の職種から指示された業務は対応できません。
看護業務のサポート
医師事務作業補助体制加算では、医師事務作業補助者の業務範囲に関して「看護職員の指示の下に行う業務又は看護業務の補助に携わること等のないようにすること」と定められています。
看護業務の補助は看護助手(エイド)が対応するものであり、医師事務作業補助者は看護業務のサポートができません。
物品の運搬や搬入
医師事務作業補助体制加算において、物品運搬業務も医師事務作業補助者の業務の範囲外と定められています。
ただし、医師にとって必要な運搬業務であり、医師の指示がある場合は医師事務作業補助者が対応しても問題ありません。
受付・窓口業務
受付・窓口業務は医療事務が対応する業務であるため、医師事務作業補助者は対応できません。
医師事務作業補助者の役割は「医師の処遇改善および業務負担の軽減」です。そのため、医師の担当業務ではない受付・窓口業務は、医師事務作業補助者の業務として認められていません。
レセプト業務
入院や外来で発生した医療費の計算・請求といったレセプト業務は、医師が担当する業務ではないため、医師事務作業補助者の業務には含まれません。
レセプト業務は、専門知識を有した医事課のスタッフが担当します。
運営に要するデータ収集
医療機関運営・経営のためにデータを収集する行為も、医師の担当業務ではないため、医師事務作業補助者の業務には含まれません。
運営に要するデータ収集は、診療情報管理士の業務になります。
電子カルテを代行入力するメリット
電子カルテを代行入力するメリットは以下の3つです。これから事務作業補助者へ代行入力の依頼を検討している方は参考にしてみてください。
医師の業務負担が軽減できる
電子カルテの代行入力により、医師はカルテ入力に要する時間を大幅に削減できます。
休日出勤する医師や残業時間が長くなる医師であっても、業務量が減らせるため、心身の負担軽減にもつながるでしょう。
医師が自身の業務に専念できる
医師事務作業補助者に電子カルテを代行入力してもらうことで、医師は患者さんとのやり取りに集中しやすくなります。
そのため、患者さんに対する病状説明や治療などの業務に専念できるようになり、質の高い医療が提供しやすくなるでしょう。
患者さんの待ち時間が軽減できる
医師が診察の時間を効率的に使えるようになるため、患者さんの待ち時間の削減にもつながります。
その結果、クリニックに対する患者満足度の向上も期待できます。
医師事務作業補助者を採用する際の注意事項
医師事務作業補助者を採用する際は、教育体制の整備が必要です。とくに電子カルテの入力業務では、専門用語や診療科特有の専門知識、カルテの操作方法や入力速度といった実務的なスキルも求められます。
そのため教育体制が整っていない場合、十分なパフォーマンスが発揮できず、医師の負担が軽減されないことも起こりえます。
また、医師事務作業補助者を採用する場合、継続的に人件費が発生することも考慮しておくことが大切です。
教育コストや給与、社会保険料といった固定費を踏まえ、費用対効果を生み出す必要があります。
まとめ
電子カルテの入力業務は、医師事務作業補助者によって代行してもらえます。また、文書作成やオーダー補助、データ入力・管理といった業務も任せることが可能です。
一方で、看護業務や物品の運搬や搬入、受付・窓口業務やレセプト業務などの代行は依頼できません。
医師事務作業補助者を有効活用することで、医師の業務負担が軽減できます。また、クリニックに対する患者満足度の向上も期待できるようになります。
医師の業務量が多いクリニックは、医師事務作業補助者の採用を検討してみてください。