住宅型有料老人ホームの「囲い込み」問題に厚労省が本格対応へ
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2025年4月14日、厚生労働省は「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」の初会合を開催しました。この検討会は、特に住宅型有料老人ホームにおける「囲い込み」問題への対応を柱としています。
「囲い込み」とは? - 入居者の選択肢を制限する実態
厚労省の調査によれば、住宅型有料老人ホームの11.7%、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の9.4%で、「併設または関連法人の居宅介護支援事業所との契約を入居の条件としている」ケースがあることが判明しました。
この場合、ケアプランは施設側が指定するケアマネジャーが作成することとなり、入居者が本来持つべき「サービス提供者を自由に選ぶ権利」が制限されることになります。これが、いわゆる“囲い込み”と呼ばれる問題です。
現在のルールとその限界
有料老人ホームの設置運営に関する標準指導指針では、限定されたサービス提供や特定事業者への誘導を禁止しています。しかし、この指針には法的拘束力がなく行政指導にとどまるため、実効性に乏しく、改善が進まないケースが少なくありません。
さらに、囲い込みなど不適切な運営に対して行政処分を行う場合でも、処分基準が不明確であることが、行政対応のボトルネックとなっています。
厚労省検討会の主な論点
検討会では、以下のような課題と論点について議論が進められる予定です:
- ケアマネジャーの独立性・中立性をどう確保するか
- 行政の指導監督体制のあり方(介護保険制度のような統一ルールの検討)
- 利用者に対するサービス内容や料金体系の情報提供の充実
- 必要以上の規制が適正な事業者の活動を阻害しないかというバランスの検討
構成員からは、「サービスの多様性は高齢者ニーズに対応する上で有効」という意見もある一方で、「利用者が混乱せずに正確に選べるよう、サービス内容の違いや費用のわかりやすい説明が必要」との声も多く挙がりました。
今後の見通し
検討会では、夏頃をめどに議論を整理し、必要に応じて制度設計の見直しや行政対応の強化策が示される見込みです。高齢者人口の増加と共に拡大する有料老人ホーム市場において、公平かつ透明性のあるサービス提供体制の構築が喫緊の課題とされています。
参考資料:
厚生労働省|有料老人ホームの現状と課題・論点について