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診療同行看護師の実際|1日のスケジュールや気になる待遇について紹介

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診療同行看護師の実際|1日のスケジュールや気になる待遇について紹介

訪問診療で大切な役割を担っている診療同行看護師。

「診療同行看護師の働き方を詳しく知りたい」という方へ、今回は診療同行看護師の具体的な仕事内容や1日の流れ、待遇についてお伝えします。

実際の現場で行う医療処置や同行バッグの中身も紹介していますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
診療同行看護師の実際を知り、魅力を感じていただけたら幸いです。

診療同行看護師の1日

在籍する病院やクリニックでちがいはありますが、診療同行看護師の仕事はおおまかに分けると「診察の同行」と「院内の業務」に分かれます。

医師の診察に1日中同行することもあれば、院内業務が中心となる1日もあります。
今回は、診察に同行したときの診療同行看護師の1日の流れや診察で行う処置についてお伝えします。

1日のスケジュール

訪問診療の件数は日によって差はありますが、医師1人につき5~10件ほどまわります。

診察にかかる時間は患者さんによりさまざまですが、体調が安定している方で10~15分ほどの時間です。
診察に時間をかける患者さんの例としては「体調の変化があり検査や注射など医療行為が必要な方」「終末期でご家族のサポートが必要な方」「褥瘡が悪化して処置が必要な方」などです。
患者さんの状態により診察内容が異なるため、臨機応変に対応します。

定期的な訪問のほか、急な体調不良で患者さんから診察の希望があれば往診にうかがうこともあります。その場合のスケジュールの調整や変更を行うことも診療同行看護師の役割のひとつです。

診療同行看護師の1日のスケジュールを表にまとめました。

訪問診療では出先でスマホやタブレットを使用し、患者さんの情報収集やカルテの記入を行います。
訪問のあいだで時間ができたときに他の事業所への連絡や記録をすることもあります。

訪問診療で多い医療処置3つ

訪問診療では、患者さんの状態や診察の結果、医療処置が必要なケースがあります。
なかでも診療同行看護師が行う医療処置で頻度が多いものは次の3つです。

  1. 検査関連:血液検査、尿検査、エコー、心電図
    患者さんが体調を崩したときや、定期的な経過をみるときに実施します。
    腹部や胸部のエコーを行うときは医師を補助します。どちらの機器も携帯しやすくコンパクトなものです。
  2. 注射関連:静脈注射、点滴注射、皮下注射、筋肉注射
    患者さんのご自宅には点滴台がないことが多いため、点滴する際はフックやハンガーなど利用できるものをお借りすることもあります。
    高カロリー輸液や麻薬の持続点滴の場合は、在宅用のコンパクトな輸液ポンプを使用します。
  3. 褥瘡の処置
    患者さんの褥瘡の経過をみつつ、状態に合わせて処置を検討します。
    適切な処置を継続するために、ご家族への指導や訪問看護との連携も行います。


訪問診療では小児から高齢者まで年齢が幅広く、生活環境も患者さんによりさまざまです。

同じ医療処置でも年齢や疾病に合わせた対応力が求められます。初めは慣れない医療処置に不安がつきものですが、さまざまな経験を積むことで、知識やスキルを向上させることができます。

同行バッグの中身

診療同行看護師は、診察のときに必要なものを入れた同行バッグを持参します。
バッグの中身は病院やクリニックによりさまざまですが、医療処置やケアに必要なものです。

【同行バッグに入っているもの】

  • 薬剤関連:点滴、注射、内服薬(よく使うものや緊急時に必要なもの)
  • 注射物品:注射針、輸液セット、シリンジ、駆血帯、固定テープ類、アルコール綿、針入れBOX
  • 処置物品:ガーゼ、テープ、消毒綿棒
  • 検査関連:採血スピッツ、検体スピッツ、感染症の抗原検査キット
  • バイタルサイン関連:聴診器、血圧計、体温計、動脈血酸素分圧モニター
  • パンフレット:必要なときに患者さんにお渡しするもの(お看取りや意思決定に関するもの)


定期的に検査や注射をしている患者さんの訪問には事前に準備してうかがいます。体調の変化や急な往診の際には、診察の内容に合わせて必要な物品を同行バッグから準備します。

訪問に使用する車内にも物品の準備が欠かせません。例えば、酸素ボンベや酸素マスク、吸引器などです。緊急時にすぐ対応できるよう、必要なものを漏れなく準備することが重要です。

多職種連携の実際

診療同行看護師の「多職種をつなぐ」役割。
どのような方法で連携しているのか、実際に行っている方法をご紹介します。

オンラインツールの使用

在宅医療の現場では、多職種が実際に顔を合わせる機会が多くはありません。
医師や看護師は診察に出ていることが多いため、事務所に電話をしても繋がらないこともあります。
そこで便利なのが、オンライン上で多職種が繋がり、情報共有ができるツールです。

多職種との連絡手段はクリニックによりさまざまですが、オンラインツールと電話を次のように使い分けるとスムーズです。

  • オンラインツール
    患者さんの経過や様子・急ぎではない報告や相談・連絡事項
  • 電話
    患者さんの状態変化で急ぎの対応が必要なとき・文章ではニュアンスが伝わりにくいとき


状態の経過や報告などはオンラインツール、緊急時には電話で連絡を取り合い多職種と情報共有します。

オンラインツールを利用すると過去の記録も残るため、必要時にさかのぼって確認できることもメリットです。

担当者会議に出席

患者さんに必要なサービスの導入や調整が必要なときにはケアマネージャーが主体となって「サービス担当者会議」が開かれます。

診療同行看護師も、医療面から患者さんの状況を報告するために参加します。
医療面からの情報としては、たとえば診察時の患者さんの様子や想い、今後の治療と生活の方向性などがあります。
患者さんへのより良いサポートに繋げるためには、どのようなサービスやケアが必要なのか、多職種のさまざまな視点でとらえた情報を共有し、一緒に考えていくことが大切です。
「サービス担当者会議」への参加は、多職種連携において重要な機会であるといえるでしょう。

他職種の訪問に同席

診療同行看護師は、他の職種が患者さんを訪問するときに同席させてもらうこともあります。
たとえば、次のようなケースです。

  • ケアマネージャー:介護サービスの導入や変更が必要なとき
  • 訪問看護師:医療処置を訪問看護に引き継ぐとき
  • リハビリスタッフ:患者さんの身体の動きを確認したいとき
  • 訪問薬剤師:薬の管理を確認したいとき
  • 訪問歯科医師:嚥下状態の確認をしたいとき


他の職種の訪問に同席するメリットは、診察のときとは違う患者さんの一面を発見できたり、患者さんの想いや価値観をより深く理解できたりすることです。

同席したときに得た情報は医師にも伝え、より良い支援に繋げられるよう努めています。

診療同行看護師の待遇

ここまで、診療同行看護師の仕事の実際についてご紹介しました。
「仕事内容には興味があるけれど、待遇はどうなの?」という方もいるのではないでしょうか。

気になる給与や勤務体制についてお伝えします。

診療同行看護師の給与

診療同行看護師の給与は年収400~450万円ほどで、病院やクリニックにより差があります。
オンコール手当や運転手当の有無、賞与の基準によっても差が出るでしょう。

診療同行看護師の仕事は将来的にどうなのか、気になる方もいるでしょう。
在宅医療は、高齢化社会を背景に今後ますますニーズが増えると予測されます。
なぜなら、厚生労働省による「地域包括ケアシステム」の推進により在宅医療の需要が高まっているからです。
「地域包括ケアシステム」では、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられることを目指しています。そのために、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みを整えることが重要です。

多職種をつなぎ、患者さんの生活を支える役割を担っている診療同行看護師の仕事もニーズが増えると考えられます。そのため、仕事や収入の面でも安定性が維持できるでしょう。

ワーク・ライフ・バランス

診療同行看護師の仕事は主に日勤帯で、生活リズムが整いやすいのがメリットです。
育児や自己啓発の時間がとりやすく、ワーク・ライフ・バランスを保ちやすいといえます。

ただし、夜間のオンコールや休日の対応は当番制のところが多い印象です。
病院やクリニックによっては、育児や介護などの理由によりオンコール担当を免除してもらえるところもあります。希望の職場がある場合は、オンコール対応についても確認しておきましょう。

まとめ

診療同行看護師は、訪問診療において医師の補助や多職種連携の場面で活躍する看護師です。

患者さんに看護ケアを提供する機会は多くありません。
しかし、患者さんの生活をより良くするために多職種をつなぐ「縁の下の力持ち」のような存在であるといえるでしょう。

診療同行看護師の仕事に興味がある方は、ぜひ一緒に在宅医療の現場で働いてみませんか。

診療同行看護師の仕事や役割について詳しくご紹介した記事もありますのでぜひご覧ください。

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現役診療同行看護師が解説!診療同行看護師の仕事とは?多職種をつなぎ患者さんの生活を支える存在

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この記事を書いた人

土生恵(けい)

看護師/ライター。看護大学卒業後、総合病院へ勤務。その後、血液センターやクリニック、保育園看護師などの経験を積み、訪問診療クリニックに就職。 現在も看護師として働きながら医療・介護分野でライター活動を行う。 今後は在宅医療を地域に広げる活動もしていきたいと思っている。

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