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中央社会保険医療協議会(中医協)は、最近の総会で国内の医療機関における医療DXの導入状況と、今後の課題について報告しました。電子カルテや電子処方箋の導入は進みつつあるものの、導入コストや制度上の要件が普及の妨げになっているという実情が浮き彫りになっています。
医療DXの意義と導入状況
多くの医療機関は、電子カルテの導入や、処方情報の電子管理といった医療DXの必要性を認識しています。これにより、過去の診療履歴や薬剤情報の共有が可能になり、患者さんに対してより安全で質の高い医療を提供しやすくなることが期待されています。情報共有の仕組みは、患者の利便性向上だけでなく、医療機関側の診療効率や安全性確保にもつながります。
また、こうした取り組みを後押しする制度として、医療DX推進体制整備加算 が設定され、電子カルテや処方管理体制を整えた医療機関には診療報酬上の加算が認められています。
ただし「ハードル」は依然として高い
しかし一方で、多くの医療機関が以下のような理由から、DX推進に慎重な姿勢を示していることも報告されています:
- 初期のシステム導入や維持にかかるコストが高い
- 電子処方箋の体制整備や運用要件を満たすのが容易でない
- 加算を得るための条件が複雑で、運用負荷が増す
このため、電子カルテなどを導入済みでも、加算の届け出を行わず、旧来の紙の方法を継続する医療機関も少なくないようです。
さらに、加算制度自体も見直しが進んでおり、マイナ保険証の利用率や電子処方箋の有無などを基に、評価の基準が厳格化される方向にあります。そのため、導入体制を整えるハードルはむしろ上がっているとの見方もあります。
今後の論点と見通し
中医協では、今後の診療報酬改定において、医療DX関連の制度見直しを継続して議論することを示しています。特に、電子処方箋の管理体制の整備状況を加算要件に組み込む案や、マイナ保険証の利用実績に応じた加算区分の運用などが検討されています。
また、単にシステムを導入するだけでなく、実際にその情報を医療現場で活用し、どのような成果につなげるか――いわゆる「プロセスとアウトカムの評価」が重視される方向も見えてきています。今後は、医療の効率化や質の向上のみならず、地域医療全体の持続性や安全性にも焦点が当たると見られています。









