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訪問診療専門クリニックの診療圏調査担当者に聞く|訪問診療の開業エリアの選び方

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訪問診療専門クリニックの診療圏調査担当者に聞く|訪問診療の開業エリアの選び方

医療機関を開業するとき、候補地での患者数の見込みを予測するのが診療圏調査です。
クリニック開業時の診療圏調査の情報はインターネット上でもよく見られますが、基本的には外来クリニックを対象としたものがほとんどです。訪問診療の診療圏調査は外来クリニックと同様の実施方法で良いのだろうかと悩まれる方もおられます。

メディカルインフォマティクスは2017年より訪問診療専門クリニックに対する診療圏調査を開始しました。都度改良を加えた精度の高い調査方法について、診療圏調査を行う担当者にお話を伺いました。
訪問診療独自の診療圏調査や重要視しているポイントについて解説していただきます。

訪問診療の診療圏調査で収集するデータ

診療圏調査では、まず候補地の選定を行います。依頼者の希望エリアの中でも、とくに訪問診療のネットワークや人脈がある場所を優先して候補地を絞ります。訪問診療の場合、患者獲得の9割以上は病院や居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション等からの紹介になるからです。
候補地がある程度決まったら、診療圏調査を行います。ここからは、実際に訪問診療の診療圏調査で集めるデータや分析の仕方を紹介していきます。

推計患者数・ポテンシャル患者数

一般に公開されている診療圏調査は、外来診療のクリニックを開設するための手法です。
外来診療のクリニックは科目にもよりますが、1日40名の患者数が一つの目安となるでしょう。[1]
訪問診療の場合は、1日医師1人あたり10名(居宅月2回診療患者換算)の患者数をコンスタントに診療できるエリアかどうかを重視します。まずは推定される患者数を算出し、開業時のスタッフが何人必要かなども計算していきます。

では、診療圏内の推定される患者数はどのように算出するのでしょうか。
当社が提供している診療圏調査には、推定患者数とポテンシャル患者数という2つの定義があります。この2つのデータは、診療圏調査で非常に重要視しているポイントです。

推計患者数

推計患者数とは、候補地の半径3km・5km・10kmの円内の訪問診療利用患者数の推計値です。
推計値の算出方法は円内にいる75歳以上の人口の4%としています。なぜ4%と定義しているかは、2022年に厚生労働省から公表されているレセプト件数と、2022年に総務省から公表されている人口統計のデータを参考にしています。これらのデータから、75歳以上人口の約4%が訪問診療を利用しているということが推計値として算出されるからです。[2][3]
この推計患者数のデータを、5年刻みでどのように推移するかというのを見ています。

ポテンシャル患者数

ポテンシャル患者数は、近隣の競合となる訪問診療クリニックの件数を加味した推計患者数です。ポテンシャル患者数の算出方法は、分子が推計患者数で、分母が機能強化型在宅療養支援診療所数+機能強化型在宅療養支援病数の20%です。
数値が高いほど、1拠点あたりの市場が大きいと判断できます。
首都圏の場合は、半径5km圏内が主要な診療エリアです。そのため、半径5km圏内のポテンシャル患者数を5年刻みで推測していく。
郊外の場合は、診療エリアを半径5km~10kmに拡大して見ていくケースも多くあります。

ポテンシャル患者数を算出するにあたり、医療機関数を20%にする理由としては、パレートの法則*を考慮しています。訪問診療の現場でも、上位20%が市場を大きく占めるだろうという考え方です。
高齢者の割合が多い郊外などでは、現時点でのポテンシャル患者数が良好でも、5年後・10年後の推計値が100名を切るような推計がされることもあります。そのような場合、将来的に安定経営を考えると難しいという判断がされる場合もあります。

パレートの法則*:結果の大部分が一部の要因によって決められるという法則。80:20の法則ともよばれ、全体の2割によって全体の結果が導かれているという考え方

競合クリニックや近隣医療機関の情報

候補地のエリアの競合となるクリニックの情報も非常に重要です。
訪問診療を行っているクリニックの中でも、どの分野に力を入れているのか、競合クリニックごとの特色をチェックするようにしています。
例えば、終末期に特化している、小児の訪問診療をやっている、施設在宅をメインにしている、などの情報収集は行っています。

在宅療養支援病院の病床数、競合クリニックの施設基準や過去実績、看取り件数も重要な情報です。それぞれの医療機関に登録されている医師の人数で、訪問診療を何ルート確保できているのかを推定することもできます。

交通や地形の影響

車での移動が多い診療圏では、公共交通機関の利便性に関しては、診療面ではあまり影響ありません。しかし、職員の採用面で大きな要因となります。とくに都市部では、医師やコメディカルを安定的に採用するためには、駅からの利便性は非常に重要です。

道路状況に関しては、1日に診療できる患者数に関わってきます。候補地から自動車で15分以内での診療エリアがどの程度かというところは必ず確認しています。
また、高速のインターチェンジ付近は、夜間や休日の緊急対応などでの利便性が高くなるため確認するポイントです。

通常の訪問診療の場合は、河川をまたぐ(橋を渡る)訪問診療エリアの有無で、道路の混雑状況が大きく変わります。そのため、訪問診療エリアの河川の状況も確認します。

訪問診療専門の診療圏分析の強み

訪問診療クリニックの立ち上げを数多く行い、訪問診療に特化した診療圏調査を行っている私たちには、開業後のデータが豊富にあるという強みがあります。
その開業後のデータの中で、縦軸を開業前に算出したポテンシャル患者数とし、横軸に実際開業してからの新規患者受け入れ件数をとります。その分布図をもとに相関分析*を行なっています。依頼があった案件のポテンシャル患者数から、開業後の新規患者数を予測します。
相関分析*:2つの要素の関係性を評価する分析手法

診療圏調査を専門業者に依頼するメリットは、仮説を持って開業に臨むことができることです。
これは訪問診療クリニックに限りませんが、事前にしっかりと調べて開業することは非常に重要です。
もちろん想定外の事象が起こることもあります。しかし、事前に細かく分析しておくことで、そのリスクを最小限に減らせます。
クリニック開業前にしっかりと分析し仮説を立て、開業後に検証することにより、2拠点目・3拠点目の開業の学びにもなります。

訪問診療クリニック開業後の診療圏分析

支援先のクリニックでは、開業後の診療圏分析も行なっています。
開業後の診療圏分析のメリットは、開業前の想定と実際の数値を比較し、原因究明・対策ができることです。

開業後の診療圏分析では患者数の比較だけでなく、訪問先患者居住地の偏りも確認しています。訪問先の患者宅や介護施設を地図にプロットし、さらに患者紹介実績のある病院や居宅介護支援事業所の立地を地図上に並べていきます。
それにより、病院や事業所からの紹介実績が手薄なエリアや訪問先患者が少ないエリアが見えてくるのです。紹介実績が手薄なエリアや、訪問先患者が少ないエリアの病院や事業所に直接アプローチして対策しています。

訪問診療クリニックの開業は人脈と分析が重要

実際の診療が始まると、診療依頼から受け入れまでの時間の猶予がかなりシビアになります。競合と比較して、いかにスピーディにご相談開始時点から初診に持ち込めるか、期間短縮ができるかは大切なポイントです。そのためにも、医療機関や訪問診療に関わるコメディカルとの人脈やネットワークのある立地に開業することは非常に重要です。

訪問診療の人脈やネットワークのある地域を探しつつ、さらに診療圏調査の客観的データを分析することで開業後のリスクを極力減らすことができるでしょう。

診療圏調査のデータで重要度が高いのはポテンシャル患者数です。メディカルインフォマティクスの診療圏調査では、ポテンシャル患者数の調査を無料提供しています。
さらに開業支援チームとの連携も密なので、診療圏調査から開業までトータルサポートが可能です。
訪問診療クリニックの開業を検討されている方はぜひご検討ください。

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この記事を書いた人

岡村 奈津子

医療ライター/薬剤師。昭和大学薬学部卒。病院、ドラッグストア、薬局と様々な分野で経験を積み、現在は地域医療、在宅医療に注力。薬剤師として臨床の現場で働きながら、医療ライターを行っている。多くの人へわかりやすい医療の情報と、医療従事者の姿を届けるべく執筆活動中。

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