訪問診療クリニック経営に役立つ「KPI」とは?設定方法や事例をわかりやすく解説
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訪問診療クリニックの経営を安定させるうえで、KPIの設定は必要です。しかし、経営者のなかには、どのようにKPIを設定したらいいかわからない方がいるでしょう。
本記事では、訪問診療クリニック経営に役立つKPIの設定方法や策定時の注意事項について解説します。
クリニックの最終目標達成のために、適切なKPIを設定し、スタッフ一丸となって前進していきましょう。
KPIとは
KPIとは、Key Performance Indicatorであり、「重要業績評価指標」と訳されます。個人や企業・団体が目標を達成する際に、その達成度合いがどれぐらいなのかを確認するための指標です。
KPIを設定し、中間目標を設定することで、現時点で目標に対してどのくらいの進捗なのかを把握できます。
たとえば「訪問件数」をKPIにおき、達成することで、目標までの現状がわかりやすく可視化できるようになります。
KPI設定の目的
KPIを設定する目的は、目標に対する達成度を視覚的かつ直感的に理解することです。たとえば、訪問診療クリニックの目標を挙げる場合、売上の向上だけに限定されるわけではありません。
施設によっては、患者満足度や業務効率の向上、患者さんからのクレームの低減なども挙げられるでしょう。
このような目標を達成するためには、進捗状況や達成度を把握する必要があります。
しかし、単に目標を設定して追いかける姿勢のみでは、目標までの到達度が見えないだけでなく、目標達成自体が困難になる可能性もあります。
クリニックのスタッフ全員が一丸となって目標を達成するためにも、KPIの設定は重要です。
訪問診療クリニックにおけるKPIの例
訪問診療クリニックにおけるKPIの例をご紹介します。KPIを設定する際に必要な要素として参考にしてみてください。
1. 患者・診療関連KPI
どのような患者をどの程度診療しているかを把握するための指標となります。
指標例
訪問診療患者数(新規・継続)
月間・年間の訪問診療件数
疾患別患者数の割合(がん末期、慢性疾患など)
患者の離脱率(入院・死亡・契約解除)
2. 経営・財務関連KPI
売上を分解すると「患者数」×「患者単価」となりますが、売上の背景を把握するための指標となります。その他支出に関するものも含まれます。
指標例
月間・年間の売上
1患者あたりの売上
保険請求の回収率
未収金発生率
診療コスト(訪問1回あたりの平均コスト)
3. オペレーション・効率性KPI
業務が最適に遂行されているかを把握するための指標になります。
指標例
医師1人あたりの訪問件数
移動時間(1訪問あたりの平均移動時間)
訪問エリアカバー率(診療可能範囲内のエリアカバー率)
予約遵守率(予定訪問時間通りに診療が行えた割合)
4. 患者満足度・品質KPI
診療の品質を把握するための指標になります。
指標例
患者・家族の満足度スコア(NPSなど)
紹介患者の割合(口コミ・病院からの紹介)
緊急往診の対応率(夜間・休日対応の割合)
再入院率(訪問診療後の病院再入院の割合)
5. 人事・労務関連KPI
組織体制やスタッフの状態を把握するための指標になります。
指標例
平均残業時間
離職率
有給消化率
従業員満足度
訪問診療クリニックにおけるKPI策定の手順
訪問診療クリニックにおけるKPI策定のおもな手順は、以下の3つに分かれます。それぞれの工程を踏まえ、KPIを策定しましょう。
1.KGIの設定
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)は、クリニックを経営するうえでの達成目標を測るための定量指標です。
たとえば、クリニックとしての売上高をKGIとした場合、達成することで経営が健全であると判断できます。
KGIを設定する際は、具体的な目標数値を出し、どのようにしたら最終目標が達成できるかKSFやKPIを設定していく流れが必要です。
2.KSFの設定
KSF(Key Success Factor:重要成功要因)は、目標達成するための活動や要因そのものです。
KGIやKPIは「定量的な指標」であるのに対し、KSFは「重要な活動」に該当します。たとえば、新規患者を増加するためには紹介を受けるケアマネジャーに対して丁寧な報告を行うなどの活動となり、その活動がどの程度実施されたか定量化したものがKPIとなります。
3.KPIの設定
KGIとKSFを踏まえ、最終目標を達成するためのプロセス(中間目標)となるKPIを設定しましょう。
KPIを設定する際は、「SMARTの法則」に沿って決めることで現実的かつ有意義なものにできます。
- S:Specific(具体的な):具体的かつ明確な目標を設定する
- M:Measurable(計測可能な):達成度合いを定量的数値で測定する
- A:Achievable(達成可能な):達成に向けて現実的に努力可能である
- R:Relevant(関連した):企業全体の目標などと関係がある
- T:Time-bounded(期限を定めた):達成までに期限を設ける
訪問診療クリニックにおけるKPI策定の注意事項
訪問診療クリニックにおけるKPI策定の注意事項は以下のとおりです。
現実的に達成できる数字を設定する
KPIを策定する際は、現実的に達成できるレベルかどうかを見定めておくことが重要です。また、施策を展開した際に、検証しやすいか指標であるかどうかも十分に考慮しておかなければなりません。
あまりにも現実離れした数字を設定すると、途中で挫折してしまい、最終目標が達成できなくなります。
設定しすぎない
KPI設定後には測定・評価・見直しが必要です。あまりに多くのKPIを設定すると、そのあとの対応や管理に手間がかかり、労力やストレス増大の原因になります。
それぞれのスタッフの生産性やモチベーション低下を招かないよう、適切な管理体制が組めるか見極めることが大切です。
最終目標につなげる
KPIは、あくまでKGI達成のプロセスです。そのため、KGI達成に結びつくためのKPIを設定しなければ意味がありません。
たとえば売上高をKGIに設定し、その目標数値に達成するためのKPIが達成できなければ、ゴールには届かないでしょう。
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まとめ
KPIとは、Key Performance Indicatorであり、「重要業績評価指標」です。KPIを設定することで、 目標に対する達成度を視覚的かつ直感的に理解しやすくなり、最終目標であるKGIを達成できるようになります。
訪問診療クリニックとして達成すべき目標を正確に設定したうえで、そのために必要なKPIを設定することが大切です。
KPIを設定する際は、現実的に達成できる指標を踏まえ、最終目標につなげることを意識しましょう。