訪問診療クリニックの電話クレーム対応|スタッフの負担軽減を目指して

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訪問診療クリニックの電話クレーム対応|スタッフの負担軽減を目指して

2025年現在、在宅医療のニーズは高まり、自宅や介護施設で最期を迎える方が増えています。そのなかで、訪問診療クリニックは、患者さんとご家族を支える地域医療の要です。

生活の場に深く関わる訪問診療では、医療だけでなく、家族とのコミュニケーションや精神的なケアも求められ、スタッフには高い柔軟性と配慮が必要です。しかし、ときには患者さんやご家族からクレームが発生することもあり、現場の負担となることも少なくありません。

この記事では、訪問診療クリニックで発生しやすいクレームの具体例や、クレーム対策に有効なコツについてご紹介します。

訪問診療クリニックで発生しやすいクレーム

訪問診療クリニックで発生しやすいクレームには、患者さんやご家族からの「診療に関するもの」や「緊急時・夜間対応に関するもの」だけでなく、他事業所から寄せられるものもあります。

それぞれの内容を詳しくみていきましょう。

診療に関するクレーム

訪問診療では、診療そのものだけでなく、スタッフの態度やスケジュールに関するものなど、さまざまな場面で患者さんやご家族の要望に答えることが求められます。以下は、診療に関するクレームの一例です。

クレームの種類 内容
時間に関するもの
  • 予定していた訪問時間になっても来ない
  • 訪問時間が短すぎる、長すぎる
  • 訪問時間の急な変更は困る
スタッフの対応に関するもの
  • 医師の説明がわかりにくい
  • 訪問スタッフの態度が冷たい
  • プライバシーへの配慮が足りない
診療内容や質に関するもの
  • 症状がなかなか改善しない
  • 検査や治療の説明がない
  • 他の医療機関との情報共有ができていない
費用に関するもの
  • 医療費が高い
  • 保険適用に関する説明がない
  • 支払い方法が選べない
スケジュールに関するもの
  • 訪問予定の融通が利きにくい
  • 体調がいいときの訪問はいらない


このようなクレームは、患者さんやご家族の不安や不満の表れであり、対応次第で信頼回復のきっかけになるでしょう。

緊急時・夜間対応に対するクレーム

訪問診療クリニックにとって、緊急時や夜間の対応はとくに神経を使う場面です。ときには次のようなクレームが寄せられることがあります。

クレームの種類 内容
オンコール体制に関するもの
  • 夜間や休日に電話が繋がりにくい
  • 電話に出たスタッフが状況を理解していない
  • 適切な指示や対応がない
緊急時の対応に関するもの
  • 体調が悪いのにすぐに対応してくれない
  • 救急搬送の手配が遅い


緊急時の対応は、患者さんの命に直結するだけに、スピード感と的確さが強く求められるでしょう。

他事業所からのクレーム・指摘

訪問診療クリニックは、薬局や訪問看護ステーション、ケアマネジャーなど、さまざまな職種と連携しながら在宅医療を提供しています。

そのため、クリニック内だけでなく、他事業所との間でも情報共有や対応のズレに起因するクレームや指摘が発生することがあります。

クレームの種類 内容
情報共有に関するもの
  • 処方が変更されたのに、薬局に情報が届いていない
  • 訪問看護の報告内容と医師の説明に食い違いがある
対応のスピードに関するもの
  • 状態悪化の報告をしたが、診察や指示に時間がかかる
  • 診察に同行したいのに、日程調整に時間がかかる
連絡体制に関するもの
  • 多職種間の情報共有が不十分だった
  • 医師の診療内容を関係者が把握していない

これらのクレームや指摘は、患者さんの不利益につながるだけでなく、事業所間の信頼関係にも影響を及ぼすでしょう。

クレームが訪問診療クリニックに与える影響

訪問診療クリニックに対するクレームは、患者さんやご家族の不満を表すだけではありません。クレームが訪問診療クリニックに与える影響についてみていきましょう。

スタッフの精神的な負担が増える

クレーム対応が重なると、スタッフの仕事へのモチベーションが低下し、場合によっては離職を考えるきっかけになることもあります。

また、患者さんやご家族の想いに寄り添いながら対応するなかで、過度に感情移入したり、クレームによる感情的な訴えを受け止めたりすることは強いストレスとなり、精神的に疲弊するリスクも高まるでしょう。

通常業務への支障が出る

クレーム対応は、日常の通常業務にも影響を及ぼすこともあります。クレーム対応が重なると、本来の業務が後回しになり、クリニック全体の業務効率が低下します。さらに、クレームの電話対応が長引くと、ほかの患者さんへの対応が遅れ、結果としてさらなる不満を招いてしまうかもしれません。

クレームが原因でスタッフの精神的な余裕が失われ、注意力が散漫になると、思わぬミスにつながるリスクもあります。

クリニックへの信頼感が低下する

クレーム対応が不適切だと、患者さんの満足度が下がり、クリニック全体の評価を下げる原因になりかねません。

また、地域の医療機関や事業所との信頼関係にも悪影響を及ぼし、連携がスムーズにいかなくなる可能性もあります。

クレームへの電話対応で大切なポイント

訪問診療では、患者さんやご家族との信頼関係が重要です。クレームが寄せられた際の電話での対応は、クリニックの信頼を守るポイントになるでしょう。

ここからは、クレームを未然に防ぐ工夫や再発防止の取り組みをご紹介します。

クレームを未然に防ぐための対策

クレームを防ぐためには日頃からの丁寧な取り組みが欠かせません。

たとえば、診療時間や費用、緊急時の対応などについては、契約時に分かりやすく説明し、パンフレットを活用して情報提供をおこないましょう。患者さんやご家族への対応ルールを明確にし、スタッフ全員に周知しておくことも大切です。

また、院内のコミュニケーションを強化し、医師・看護師・事務スタッフなどの間で情報共有を密にすることで、一貫した対応が可能になります。

電話でのクレーム対応のポイント

電話でクレーム対応をおこなう際は、まず患者さんやご家族の声に真摯に耳を傾けることが大切です。不快な思いをさせてしまったことには丁寧にお詫びし、事実関係や要望をしっかり確認しましょう。そのうえで、今後どのように対応するかをわかりやすくお伝えすることが、信頼回復への第一歩です。

電話でのクレーム対応の詳しいポイントは、こちらの記事もご参照ください。
■あわせて読みたい
【在宅医療向け】電話でのクレーム対応のポイント

再発防止に向けた取り組み

クレームの再発を防ぐためには、まず内容を記録し、根本的な原因を明らかにすることが重要です。定期的に記録をふり返り、共通する課題や改善点を見つけると、効果的な対策につながります。

特定された原因に対しては、業務フローや対応方法の見直し、クレーム対応に関する研修など、具体的な改善策を実施しましょう。また、訪問看護や薬局などの地域の連携先とも定期的に情報共有できる場を設け、意識や認識のズレを減らすことも大切です。

クレーム対策に有効なコール代行とは

訪問診療クリニックでのクレームに対するスタッフの負担を軽減する方法として「コール代行サービス」の活用があります。

在宅医療に特化したコール代行サービス「Okitell365」では、専門スタッフが24時間体制で、在宅医療機関に代わって電話対応を行います。昼夜を問わず、患者さんやご家族からの問い合わせに対応し、必要に応じて医療機関のスタッフへ連絡する仕組みです。

電話での要件は体調不良の相談や訪問スケジュールの確認など、多岐にわたります。コール代行では、電話の内容から緊急度や重症度を的確に判断し、急を要する場合のみ医療機関のスタッフがすぐに対応できます。

こうしたコール代行サービスを導入すると、スタッフの電話対応による負担が軽減し、より質の高い診療に集中できる環境が整うでしょう。その結果、患者さんやご家族の満足度向上につながり、クレームの発生を抑えられる効果が期待できます。

クレーム対応力の向上とスタッフの負担軽減に向けて

訪問診療クリニックにおける電話でのクレーム対応は、患者さんやご家族との信頼関係を築き、質の高い在宅医療を提供するうえで欠かせないものです。その反面、日々の対応はスタッフにとって負担となり、精神的なストレスや業務効率の低下につながることもあります。

そのため、クレーム対応の質を高めると同時に、スタッフの負担を減らす取り組みが重要です。効果的な対策により、患者さんやご家族の満足度が向上するだけでなくスタッフが働きやすい環境を整えることにもつながります。

コール代行サービスの導入は、電話対応によるストレスを軽減し、スタッフが本来の業務に集中できる体制づくりに役立つでしょう。クレーム対応力の向上とコール代行サービスを組み合わせ、患者さんやご家族だけでなく、スタッフの満足度も向上させ、質の高い在宅医療の実現を目指しましょう。

この記事を書いた人

土生恵(けい)

看護師/ライター。看護大学卒業後、総合病院へ勤務。その後、血液センターやクリニック、保育園看護師などの経験を積み、訪問診療クリニックに就職。 現在も看護師として働きながら医療・介護分野でライター活動を行う。 今後は在宅医療を地域に広げる活動もしていきたいと思っている。

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