いまさら聞けないクリニックDXシリーズ|【導入事例付き】クラウド型電子カルテとは?導入による5つのメリットを徹底解説
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クラウド型電子カルテとは?その基本を理解しよう
クラウド型電子カルテの定義と仕組み
クラウド型電子カルテとは、インターネットを通じてサーバーにアクセスし、医療情報の記録や管理、共有を行う電子カルテの一形態です。従来のオンプレミス型(院内設置型)とは異なり、医療機関にサーバーを設置する必要がなく、クラウド上のプラットフォームを利用することで、いつでもどこからでも安全に情報へアクセスできます。
2010年厚生労働省より「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正が通知されたことで、それまで医療機関やそれに準ずる場所で管理する必要があった電子診療録が一定の基準を満たした企業のサーバーでも管理が認められるようになりました。いわゆる「医療分野におけるクラウドサービスの解禁」です。ここでクラウド型電子カルテも登場しました。
いまやクラウド型電子カルテは多くのメーカーから販売され、医療業界には欠かせないツールとなっています。
オンプレミス型との違い
オンプレミス型は、自院内に専用サーバーを設置し、電子カルテソフトを導入・管理する方式です。一方、クラウド型は、ベンダー(カルテの運営会社)側が用意したインフラを利用するため、導入の手間が少なく、保守管理やセキュリティ対策もベンダーが担います。アップデートや障害対応も迅速に行える点が利点です。
在宅医療におけるクラウド型の役割
クラウド型電子カルテは、医療のデジタル化を推進する中心的な存在です。特に訪問診療では、場所にとらわれずカルテ情報へアクセスできる柔軟性が求められるため、クラウド型の優位性が際立ちます。
普及率と市場シェア
国内外の普及状況
日本では、大病院よりも中小規模の医療機関を中心にクラウド型の普及が進んでいます。特に、在宅医療や訪問診療に力を入れているクリニックでは、業務効率化の観点から導入が急増しています。
2024に実施された開業医を対象にした調査(※)によると電子カルテの導入率は66.5%で2018年の54.7%から数年で伸びていることがわかります。
また、クラウド型電子カルテのシェアは32.8%で全体の約3分の1がクラウド型という結果となりました。2021年調査では16%、2023年調査では26%でしたので、電子カルテ導入率同様、クラウドのシェアも伸びていると言えます。
(※)日経メディカル|第24回 【医師774人に聞いた】電子カルテ導入シェアランキング2024速報!
在宅医療機関での導入事例
クラウド型の利便性を活かし、開業と同時に導入するケースが増えています。院内サーバーを持たずにすぐに運用を開始できる点、導入費用を押さえられる点、訪問時にPCやタブレットを持ち運びながら柔軟に運用できる点が評価されています。
電子カルテメーカーのシェアと競争状況
クラウド型電子カルテ市場は急成長中であり、複数のベンダーが存在しています。それぞれ機能やサポート体制、費用体系に違いがあり、導入時には比較検討が重要です。
クラウド型電子カルテ導入の5つのメリット
1. 診療の効率化・診療の質向上
どこでも使用できる
インターネット接続してるデバイス(PC/タブレット/スマホ)があれば、訪問先での記録・閲覧が可能です。ペーパーレス化を進め、カルテの持ち運びや紛失リスクも回避できます。
多職種間での情報共有もスムーズ
訪問中にリアルタイムで情報を確認・記録でき、チーム内での情報共有もスムーズです。スケジュール確認や移動ルート表示など、診療外の業務にも活用できます。
複数拠点での診療や夜間などの外部協力医師との連携時にも、インターネット環境さえあれば同じカルテにアクセス可能な点は大きなメリットです。
2. コストが抑えられる
初期費用
クラウド型の電子カルテで数十万~100万円、オンプレミス型の場合は250万~400万円程度が相場になっています。また、レセプトコンピューターの導入は150万円前後が相場です。
月額費用
クラウド型は「初期費用+月額費用」、オンプレミス型は「初期費用+月額(年額)の保守費用」の料金体系が一般的です。
クラウド型なら月額料金2~5万円程度、オンプレミス型は毎月の保守費用で2~3万円程度が相場となっています。
なお、レセプトコンピューターにも月2万円程度の月額利用料が発生します。
クラウド型 | オンプレミス型 | レセプトコンピューター | |
初期導入費用 | 数十万~100万円 | 250万~400万円 | 150万円前後 |
月額費用 | 2~5万円 | 2~3万円(保守費用) | 2万円程度 |
運用コスト
オンプレ型では、メンテナンスや機器更新の費用も別途必要です。クラウド型は数年ごとのハードウェア更新が不要であり、ベンダー側でシステム保守やアップデートが自動化されているため、運用コストも抑制されます。
3. セキュリティと災害対策が万全
データセンターでの堅牢な管理
クラウドベンダーの多くは、ISO27001などの国際的な認証を取得した堅牢なデータセンターで、厳重にデータを管理しています。
災害時の早期復旧とバックアップ体制
地震や火災などの災害発生時にも、データは遠隔地のデータセンターにバックアップされており、迅速な復旧が可能です。
サイバー攻撃への対策と専用回線の利用
不正アクセスや情報漏洩を防ぐため、ファイアウォールやVPN接続など、厳重なセキュリティ対策が講じられています。
4. バージョンアップと機能拡張の容易さ
自動バージョンアップの仕組み
クラウド型は、常に最新バージョンへ自動アップデートされるため、ユーザー側での作業が不要です。セキュリティパッチや機能改善も迅速に適用されます。
AIやオンライン診療対応などの先進的機能
AIによる診療補助、オンライン診療、電子処方箋連携など、最新の医療ITと連携した拡張機能が充実しており、今後も進化が期待されます。
医療情報管理の効率化
紙やExcelなどで管理していた各種帳票や統計情報も、クラウド型では自動集計・グラフ化が可能で、経営分析や報告業務にも役立ちます。
5. サポート対応の速さ
オンプレミス型は院内にサーバーがあるため訪問でのサポートになる場合も多く、何かあった時の問題解決に時間がかかることも多くありました。クラウド型の場合はリモートでサポートできるため、解決までのスピードが早い傾向にあります。
クラウド型電子カルテのデメリットと注意点
クラウド型電子カルテは多くの利点を持つ一方で、導入にあたっては注意すべき点も存在します。ここでは、実際に運用していく上で想定される課題と、それに対する対策について詳しく解説します。
インターネット接続の依存性
クラウド型電子カルテは、インターネット経由で情報をやり取りするため、通信環境に障害が発生するとカルテの閲覧・記録が一時的に不可能になる場合があります。訪問先での通信環境が不安定なケースでは注意が必要です。モバイルWi-Fiの利用等で安定したネットワーク環境を準備しましょう。
自由なカスタマイズはできない
オンプレミス型とは異なり、自由度の高いカスタマイズはできません。しかし、クラウド型では診療報酬改訂や機能のバージョンアップは自動で行われるため、日々使いやすく進化し続けるカルテを使うことができます。
月額費用の負担
クラウド型電子カルテは、オンプレミス型に比べて初期費用は抑えられますが、月額費用が発生します。これは、サーバー管理、セキュリティ、機能更新などの継続的なサービス料が含まれているためです。
ベンダーによっては患者数に応じたスモールスタートが可能なプランを提供している場合もあるため、慎重に比較して検討しましょう。
導入事例:在宅医療用クラウド型電子カルテ「homis」で診療効率が劇的アップしたクリニックのケース
ここでは、実際に在宅医療用クラウド型電子カルテ「homis」を導入した訪問診療クリニックの事例を紹介します。どのような課題が解決され、どのような効果が得られたのかを具体的に見ていきましょう。
在宅医療用クラウド型電子カルテ「homis」とは?
homisの特徴と機能
「homis」は、在宅医療・訪問診療に特化したクラウド型電子カルテです。医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長が開発協力し、在宅診療の現場で「本当に」求められる機能を網羅しています。
他社製品との比較ポイント
在宅医療のトップランナーが開発協力
医療法人社団悠翔会の佐々木淳理事長や医療法人おひさま会の山口高秀理事長が開発協力しており、現場で「本当に」必要な機能が充実しています。
AI搭載で書類作成もらくらく
在宅医療に多い書類もAIによってワンクリックで作成可能。事務業務を大幅削減し、診療に集中できる環境をサポートします。
月2万円から導入可能
月額費用も他社と比較して低く、患者数に応じて従量課金制のため、開業時もスモールスタートで始められます。
レセ代行プランもあり、算定スタッフ不在でも大丈夫
難易度の高い在宅レセプト代行プランもあり、医療事務スタッフの採用や退職でお悩みの院長、なるべく少ないスタッフで開業したい医師の方も安心です。
>>詳しいサービス内容、料金はこちら
実際の導入事例【医療法人社団明照会様】
医療法人社団明照会は、名古屋市を拠点に複数のクリニックを運営し、訪問診療を中心とした医療サービスを提供しています。従来はオンプレミス型の電子カルテを使用していましたが、訪問診療の拡大や医師の増加に伴い、業務効率や運用コストの課題が顕在化し、クラウド型電子カルテ「homis」を導入しました。
導入の背景と課題
従来のオンプレミス型カルテでは、訪問診療時にリモート接続が必要であり、回線の不安定さや反応速度の遅延など、スムーズな診療を妨げる要因となっていました。また、医師の増加に伴い、端末や通信環境の整備が追いつかず、運用コストの増大も課題となっていました。
「homis」導入の決め手
「homis」は、クラウド型であるため、インターネット環境があればどこからでもアクセス可能です。これにより、訪問診療時の端末携行やリモート接続の手間が解消されました。また、複数のクリニックを運営しているため、一つのアカウントで複数拠点のカルテを確認できる点も大きな利点でした。
導入後の効果
- 業務効率の向上:タブレット端末での運用が可能となり、医師は立ったままや移動中でもスムーズにカルテ入力ができるようになり、診療の効率が大幅に向上
- 運用コストの削減:端末や通信環境の整備にかかるコストが削減
- 柔軟な働き方の実現:クラウド型であるため、事務スタッフの在宅勤務が可能となり、働き方の選択肢が広がる
>>より詳しい導入インタビューはこちら
クラウド型電子カルテの選び方と比較ポイント
訪問診療クリニックがクラウド型電子カルテの導入を検討する際は、製品選定が極めて重要です。以下のような観点から比較検討を進めましょう。
在宅医療に必要な機能があるか
在宅医療に必要な書類作成機能、訪問スケジュール管理機能、地域の多職種との情報連携機能など在宅医療に必要な機能が備わっているかをチェックしましょう。電子カルテによっては訪問診療でも使えるものの、外来診療をメインとして設計されているものもありますので、在宅医療に特化した機能があるかどうか事前にしっかりと確認しておきましょう。
費用対効果の評価方法
単なる月額費用だけでなく、導入によって削減できる人件費や時間コストも加味して評価することが重要です。
必須機能とオプション機能の見極め
すべての機能が必要とは限らないため、コア機能とオプション機能を整理し、必要最低限の構成で導入することでコストを抑えることができます。
セキュリティ対策の確認ポイント
ISO27001の取得有無、データの暗号化方式、アクセスログ管理の有無、専用回線の利用可否など、セキュリティ体制についてベンダーに詳細確認する必要があります。
サポート体制の重要性
導入支援、トラブル対応、運用中のサポート体制はベンダーごとに大きく異なります。電子カルテによって問い合わせ対応が有償の場合もありますので料金についても確認できると安心です。販売メーカーによってはホームページにお客様の声を掲載しているところもあり、サポート体制についてのコメントもあるので事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ:クラウド型電子カルテで医療機関の診療効率を劇的に向上させよう
クラウド型電子カルテは、診療効率の向上、柔軟な診療スタイルの実現、災害時リスクの軽減など、多くのメリットを医療機関にもたらします。一方で、通信環境への依存や費用負担など、注意すべき点もあります。
重要なのは、自院の診療スタイルや運用体制に適した製品を選ぶこと、そして導入後も継続的に運用改善を行っていく姿勢です。
これから訪問診療を始めようとする医師や、紙カルテ・オンプレ型からの移行を検討するクリニックにとって、クラウド型電子カルテは新たな診療体制を支える強力なインフラとなるといえるでしょう。