訪問診療における医療事務の役割とは?【これから開業される医師向け】|在宅医療事務協会代表理事|神原 充代 先生
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第3回「看護師の役割」では、在宅医療クリニックの適切な運営を行う際の看護師の役割について解説しました。
現在医師1名のみで運営をしているという前回と同様の状況で、次に医療事務の採用を予定しているクリニックを想定して考えてみましょう。
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在宅医療事務の主な役割
訪問診療における医療事務の最も重要な業務は、やはり診療報酬請求(レセプト業務)です。外来レセプトと比べてより複雑な部分が多い上クリニックの経営にも大きく関わる、経験が重要な業務です。
専門的な知識が必要となるレセプト業務を担当してもらうことももちろん大切なのですが、自分でクリニックを運営するとなると診療と請求以外にも多くのことをこなさなければなりません。そのような業務も医療事務が中心となって行ってもらえたら、診られる患者さんの幅を広げることができますし、一人で診療する場合よりも効率よく診療を行うことができるようになるでしょう。
在宅医療事務に担当してもらうべきこと
診療報酬請求(レセプト業務)
医師自身でレセプト業務を行うことも可能ですが、上記でも述べたように、在宅医療のレセプトは非常に複雑で、外来レセプトの経験があっても習得が難しい特殊な業務です。
病院に勤務していても医師がレセプトについて学ぶ機会はほとんどありませんし、日々の訪問や診療前後の作業時間も考慮しなければなりません。
これらの業務すべてを医師のみで対応することは現実的ではありませんので、レセプトのプロである医療事務に担当してもらうのが賢明です。
自己負担分の請求管理(患者収納)
請求業務は、上記のレセプト業務をすれば終わりというわけではありません。
①の診療報酬請求業務はあくまでも保険適用分のみの請求ですので、患者さんの自己負担分の確認が必要になります。
患者さんへの請求書を作成し、支払い予定日が来たら予定通り振り込みや引き落としがされているか、正しい金額をお預かりしているかを確認します。支払いの確認が取れない場合は、患者さんやご家族への連絡という業務も発生します。ここまで終えて初めてその月の請求業務が完了します。
診療後や退院時に自己負担分の支払いがその場で完了する外来や入院にはない在宅医療特有の業務ですので、こちらも医療事務に担当してもらうのがよいでしょう。
各種文書作成補助
診療や請求に関する多種多様な書類の作成・管理も、クリニックで行う事務業務のひとつです。
中でも、保険適用のために必須である健康保険証の確認は非常に重要となります。
外来であれば患者さんご自身にお持ちいただきその場で確認ができますが、在宅の場合は訪問の際にこちらから忘れずに確認をしなければなりません。
特に重要なのが有効期限の確認で、レセプト業務の際に氏名や番号などの情報が正しく記載されていても、有効期限が切れていれば請求は受理されません。
訪問の際は限られた時間の中で診療を行っていることから保険証確認の優先度が低くなってしまうこともあり、正しい保険証の情報の把握はどのクリニックでも課題になっていることと思います。
その他にも訪問看護指示書、介護保険主治医意見書、生活保護申請時の医療要否意見書、鍼灸施術の同意書などのさまざまな書類の作成や有効期限などの管理、病院から紹介状への返信なども書類業務に含まれますので、医療事務の補助があることが望ましいです。ただし、上記のような書類の記載内容の責任は医師にありますので、医療事務が担当するのはあくまでも補助のみで最終確認は必ず医師が行うようにしてください。
初診の際に医療事務も同行するようにすると、患者さんごとに異なる必要書類を確認することができますので、その後の業務がスムーズになるでしょう。
連携各所への連絡
クリニック内だけではなく、各連携先との連絡も日々発生します。
具体的には、処方修正などの薬局とのやり取り、介護保険区分変更についてのケアマネージャーとの連絡、保険証に記載されている情報の確認、訪問看護ステーションとの情報共有、病院との連絡などです。
外部との連携はクリニック運営の上で欠かせない重要な業務ですが、複数の患者さんについてこれらすべての連絡を行うとなると大きな負担が発生します。連絡を医療事務に行ってもらい、確認が必要な内容については医師が対応するなどの分担を行いましょう。
在宅医療事務を採用するメリット
正確なレセプト業務で安定した経営につながる
第1回「在宅レセプトの基本」でお話ししたように、診療報酬請求はクリニックの売上に直結するものです。
在宅医療レセプトの専門的な知識や経験がある医療事務にレセプト業務を担当してもらうことにより、内容の正確性が高くなり経営の安定につながるという点は、在宅医療事務を採用する大きなメリットと言えるでしょう。
ただしこちらも、提出するレセプトの内容が適切であるか否かについては必ず医師が確認する必要がありますので注意してください。
特殊な内容の業務であることから在宅医療事務の数自体が少ないため、在宅レセプトの経験が少ない候補者しか集まらない場合も大いに考えられます。その場合、採用後に能動的に在宅レセプトについて学び成長する意欲のある人かどうか、という点を見極めることが大切です。
診療行為に集中できる
医師一人ですべてを行う場合は、診療前後に時間を取ってこれらの事務作業を行わなければなりません。医療事務がいれば診療を行っている間に必要な作業を進めてもらえますので、その分の時間を診療やその準備等に使うことができ、より診療に専念することができるようになります。
事務作業のフォローによりスムーズなクリニック運営ができる
レセプトの返戻・減点の処理や、レセプトに記載する病名と診療行為が一致しているかの確認など、これまでお話ししてきた業務のなかにもさらに細かい業務が存在します。
保険証の確認も適切にできていればレセプトの返戻が減らせますし、紹介状にある診療情報をもとに、事前に処方内容などを記載してカルテを作成しておくことができれば、訪問開始前の準備に費やす時間を減らすことができます。
まとめ
在宅医療事務の役割は、レセプト業務から請求管理、文書作成、外部連携まで多岐にわたります。これらの業務を医療事務が担当することで、医師は診療に専念でき、クリニックの運営もスムーズになります。特に在宅医療ではレセプト業務が複雑であり、専門知識が求められますので、医療事務のサポートは不可欠です。正確な業務処理はクリニック経営の安定につながり、患者さんへの対応の品質向上にもつながります。
医療事務を採用することで、よりよいクリニックの経営や運営をめざしましょう。
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