在宅レセプト請求でミスを防ぐ! 請求漏れ・査定対策を解説
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「在宅レセプトの請求漏れを減らしたい」
「どうしたら在宅レセプトの査定対策ができる?」
レセプト請求は、クリニックの経営を安定させるうえで非常に重要な業務です。しかし、在宅レセプトでは複雑なルールや専門的な知識を要するため、請求漏れや査定などのミスが発生しやすく、お悩みの方も多いのではないでしょうか。
本記事では、適正に請求するためのポイントを「初診」「加算」「実費請求」の3つの観点から、具体例を交えて詳しく解説します。在宅レセプトのポイントを理解し、請求ミスの対策をしましょう。
在宅レセプトでの初診時のポイント
まずは初診時のポイントです。在宅医療には「往診」と「訪問診療」がありますが、違いがよく分からないという方もいらっしゃるでしょう。ここでは、往診と訪問診療の異なるポイントや実際の査定事例について解説します。
往診と訪問診療の違い
往診と訪問診療はどちらも医師が患者さんのもとへ伺って行う診療ですが、2つには次のような違いがあります。
- 往診料:本人や家族が急な病状悪化などによって往診を依頼されたときに適用
- 在宅患者訪問診療料:計画的な訪問診療として実施した場合に適用
これらは算定する点数も異なり、往診料は720点、在宅患者訪問診療料Ⅰの場合は患者さんの居住形態等によって187点~888点の算定が定められています。在宅患者訪問診療料は算定できる回数の上限も定められていますが、往診料の場合は回数の制限はなく、同日に複数回の算定も可能です。ただし、同日に複数回の往診を行った場合は、カルテに「病状急変のため」といった理由を記載しましょう。
また、計画的な訪問診療での初回訪問時には「在宅医療計画書」および「訪問診療同意書」を作成し、家族等の同意取得が必要となります。同意を得たあと、在宅医療計画書と訪問診療同意書は忘れずにカルテに添付しましょう。
実際にあった往診料・訪問診療料の査定事例
ここからは、実際にあった査定事例とその原因についてご紹介します。
- 初回訪問時に初診料+在宅患者訪問診療料を算定した事例
- 週4回以上の在宅訪問診療料Ⅰが査定された事例
初回訪問時は、在宅訪問診療料を算定できません。容体が急変したといった事情ではなく、事前に計画を立てて訪問した場合であっても、初回訪問時は初診料+往診料を算定します。
また、在宅患者訪問診療料は、末期の悪性腫瘍や多発性硬化症をはじめとした厚生労働大臣が定める疾病等の患者に対する場合を除いて「週に3回に限り算定する」と定められています。「患者の状態が悪化した」といった理由から、週に4回以上の訪問診療を要する場合は、レセプトに必要性の記載が必要です。
在宅医療で算定できる主な加算
在宅医療では、往診料や訪問診療料だけでなく各種加算が存在します。加算は適切に算定すると、クリニックの収益増加につながります。算定できる加算の例は、以下のとおりです。
加算名 | 点数 | 算定要件 |
夜間・休日加算 | 405~1,700点 | 標榜時間に含まれない午後6時~午前8時の間に往診した場合 |
深夜加算 | 485~2,700点 | 標榜時間に含まれない午後10時~午前6時までの間に往診した場合 |
緊急往診加算 | 325~850点 | 標榜時間内の診療従事中に患者または家族から緊急に求められて往診した場合 |
在宅ターミナルケア加算 | 3,500~6,500点 | 【往診料+在宅ターミナルケア加算】 死亡日および死亡前14日以内に退院時共同指導を行ったうえで往診した患者が在宅で死亡した場合 【在宅訪問診療料+在宅ターミナルケア加算】 死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に2回以上往診または訪問診療をした患者または退院時共同指導を行った患者が、在宅で死亡した場合 |
看取り加算 | 3,000点 | 事前に患者または家族に対して充分な説明と同意を行ったうえで、死亡日前14日以内に 退院時共同指導を行った上で死亡日に往診を行い、当該患者を患家で看取った場合 |
夜間や休日、深夜に往診を行った場合は、通常の往診料に加えて加算の算定が可能です。ただし、夜間・休日加算や深夜加算が算定できる時間は、クリニックが標榜している時間によって異なります。たとえば、午後の診療時間を17時~20時で標榜している場合は、算定要件である18時以降であっても20時までは夜間・休日加算を算定できないのでご注意ください。
また、在宅ターミナルケア加算および看取り加算は在宅訪問診療料に対して算定できる加算でしたが、令和6年度の診療報酬改定で往診料に対しても算定できるようになりました。在宅訪問診療料に対する在宅ターミナルケア加算は、「死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に2回以上往診または訪問診療をおこなった患者」のみが対象でしたが、令和6年度の診療報酬改定後は「退院時共同指導を行った患者」も追加対象となっています。
在宅医療で実費となる費用の請求について
在宅医療では、保険診療に含まれず患者さんに実費請求する費用が一部あります。ここからは、実費扱いとなる費用の例やトラブルを防止するためのポイントについて解説します。
実費で請求しなければならないものを誤って保険請求してしまうと、査定対象となる可能性があるので、注意しましょう。
患者さんに実費請求する費用の例
患者さんに実費請求する費用の例は、以下のとおりです。
- 訪問時の移動にかかる交通費
- 文書の発行費用
- 医療材料費
- 保険薬局から患家等への調剤した医薬品の持参料・郵送代
- 予防接種費用
訪問時にクリニックの自家用車を使用した場合の交通費や、カテーテルや吸引器といった医療材料費については、患者さんに実費で請求します。医師から処方された処方箋の医薬品を、調剤薬局に届けてもらった場合の持参料や郵送代なども実費です。
また、診断書や証明書については実費のものと保険適用になるものがあります。たとえば、訪問看護ステーションに訪問看護を依頼する「訪問看護指示書」や、他医療機関への「診療情報提供書」などは保険適用です。しかし、生命保険会社に提出する診断書をはじめとした、公的保険給付とは関係のない文書の発行費用については実費請求となるためご注意ください。
交通費を請求する方法
往診や訪問診療にかかる交通費は、患者さんに請求可能ですが、必ず患者・家族の同意が必要です。請求する金額については、次のような一定のルールのもと定めましょう。
- タクシー代やガソリン代などの実費を請求
- 一定のエリアごとに一律料金を設定(5km以内500円、10km以内1,000円など)
- 有料駐車場の駐車料金
ただし、交通費として請求できるのは、クリニックの自家用車を使用した場合などに限られます。自転車やスクーターを使用した往診・訪問診療の交通費は請求できないため、ご注意ください。
加えて、自治体によっては交通費の請求を制限している場合があります。交通費の算定方法があらかじめ指定されていたり、患者が生活保護受給者の場合は請求できる交通費の条件を設けていたりするなど、自治体によって対応が異なるため、事前にルールを確認しましょう。
実費請求時にトラブルを防止するポイント
患者さんに実費となる費用を請求する場合は、トラブルを防止するために、次のようなポイントを心がけることが重要です。
- 事前に実費請求のルールを明文化し、患者さんや家族に説明する
- 口頭で説明するだけではなく、同意書を取得する
- 患者さんが生活保護受給者の場合は自治体のルールを確認し、必要な手続きを行う
実費請求によって、患者さんの想定よりも高額になるケースは少なくありません。また、事前に説明が不十分だと「保険診療だと思っていた」「実費請求の説明を受けた記憶がない」といったトラブルに発展しやすく、患者さんや家族に不信感を与える原因となります。
実費請求をするときは、ルールを明文化して十分に説明したうえで、書面で同意を得ると、トラブルの防止に効果的でしょう。
正確なレセプトを作成する方法
在宅医療のレセプト業務は高い専門性と経験が求められるため、在宅医療クリニックで働く医療事務の仕事のなかでもっとも負担が大きい仕事のひとつです。そのなかで、以下2つの方法を活用すると、算定漏れや査定を減らして、正確なレセプトを作成できます。
- レセプトチェックシステムを導入する
- レセプト点検の外部委託を活用する
レセプトチェックシステムやレセプト点検の外部委託を活用すると、自院のスタッフだけは気づけなかったミスに気づき、収益改善が可能です。加えて、レセプト業務の負担が減少するため、患者さんや家族からの電話対応や書類作成をはじめとした他の仕事に集中でき、結果的にクリニックの診療の質向上につながります。
在宅医療クリニックでレセプトチェックシステムを導入するならば「Mighty Checker EX」がおすすめです。Mighty Checker EXは、搭載されている算定支援機能で病名や診療行為などから算定できる可能性のある加算や管理料を指摘してくれるほか、査定・返戻の分析も可能です。在宅医療に特化した電子カルテ「homis」では、Mighty Checker EXを標準搭載しているため、レセプトチェックシステムを別途導入することなく利用できます。
また、レセプト点検の外部委託をご検討されている場合は、在宅医療専門レセプト代行サービスである「レセサポ」の活用が、効果的です。在宅医療のプロフェッショナルが在移籍しているため、人材の採用・育成にかかる手間やコストを削減し、高い品質を提供します。
在宅レセプトは通常の外来レセプトとは異なる点や複雑なルールが多数あります。レセプトチェックシステムやレセプト業務の外部委託を検討するならば、在宅医療に特化したシステムや委託先を選定する必要があるでしょう。
まとめ
在宅レセプトで請求ミスを防ぐためには、まずは訪問診療と往診の違いをはじめとした在宅医療独自の算定ルールを理解する必要があります。加えて、査定や請求漏れのリスクを減少するためには、算定項目の適用条件をよく確認し、正確なカルテ記載の徹底が欠かせません。
在宅医療のレセプトでは、高い専門性と経験が求められるため、レセプトチェックシステムやレセプト業務の外部委託を活用するのも有効です。適正な請求を行って、クリニックの収益を最大化し、経営を安定させましょう。