訪問診療の新規開業と承継開業の違いは?メリット・デメリットも解説
- #開業
「訪問診療のクリニックを開業する場合、新規開業・承継開業のどちらがいい?」
これから開業を検討している医師の中には、このように疑問をもつ方もいるのではないでしょうか。
本記事では、新規開業・承継開業のメリット・デメリットについて解説します。それぞれのメリット・デメリットを学び、自身の要望に合ったスタイルで開業しましょう。
開業件数の現状
厚生労働省「医療施設調査」※によると、診療所における令和3(2021)年10月~令和4(2022)年9月の廃業件数は6,697件であったのに対し、開設件数は7,847件でした。令和3年の診療所数は104,292件であったのに対し、令和4年の診療所数は105,182であり、前年度より890件診療所数が増加しています。
※参照:厚生労働省「医療施設調査」
上記の結果からわかるように、診療所の開業ニーズは年々高まっており、開業件数は増加傾向にあります。
新規開業と承継開業の違い
新規開業は、基本的に一からクリニックを作り上げることを指します。一方で、承継開業は、既存のクリニックを引き継いで開業することを意味します。
新規開業の場合、診療圏調査や土地・物件探し、建物の建築や内装工事などが必要です。また、医療機器や備品の購入、スタッフ採用や各種申請業務など、やるべきことが多岐にわたっています。
承継開業の場合は既存の立地や設備、スタッフや患者さんをそのまま引き継ぐことができます。そのため、開業にかかる時間や労力・費用を抑えながら開業できるでしょう。
訪問診療の新規開業のメリット
訪問診療における新規開業のおもなメリットは3つです。
- 希望の立地・物件で開業できる
- スタッフや取引業者を一から選定できる
- 内装や設備を自由に決められる
開業場所やスタッフ、内装・設備に関して、こだわりをもって選びたいと考える方の場合は新規開業が向いているでしょう。
希望の立地・物件で開業できる
多くの立地や物件の中から開業場所を選定できます。「生まれ育った地元で開業したい」「この物件で開業したい」といった思い入れがある場合、希望が叶えやすくなるでしょう。また、診療圏調査を行い、集患が見込めるエリアを特定して開業場所を選定することも可能です
場所にこだわって開業したい方は新規開業がおすすめです。
スタッフや取引業者を一から選定できる
承継開業の場合、スタッフや取引業者をそのまま引き継ぐ場合があります。一方で、新規開業の場合は、採用から関わることができます。
そのため、自身が求めるスキルや適性のもとスタッフ・業者を選べます。自身の裁量でスタッフ採用や取引業者を決めたい方は、新規開業がおすすめです。
内装や設備を自由に決められる
新規開業で新築する場合は、設計段階から希望を反映できます。また、賃貸の場合も内装や設備を自由に決めることが可能です。
椅子やテーブルなどの家具や、医療機器やシステムなど、自身のこだわりを反映させたい方は新規開業がおすすめです。
訪問診療の新規開業のデメリット
訪問診療における新規開業のおもなデメリットは3つです。
- 初期費用の負担が大きい
- 開業までに時間と労力がかかる
- 経営が軌道に乗るまで時間がかかる
新規開業に要する工程は多くあるため、時間と労力、費用がかかります。また、開業後、軌道に乗るまでには多くの時間がかかるでしょう。
初期費用の負担が大きい
承継開業に比べて、新規開業の方が初期費用がかかります。物件費用や内装工事費用、家具や医療機器・システム費用などがかかり、金銭的な負担が増えます。また、集患のためにはホームページを作ったり、広告を打ったりしなければなりません。開業の際には、必要な経費を計算し、把握しておくことが大切です。
開業までに時間と労力がかかる
新規開業の場合、おもに以下の工程が必要になるため、開業までに多くの時間と労力がかかります。
- 診療圏調査
- 物件決め
- 事業計画の立案
- 内装工事
- 医療機器・物品の搬入
遅くとも、開業10ヶ月前ぐらいから準備をしなければなりません。新規開業する際は、余裕をもってスケジュールを組みましょう。
経営が軌道に乗るまで時間がかかる
新規開業の場合、承継開業と違って新規の患者さんにアプローチする必要があります。開業当初は赤字が続き、収支が安定しない時期もあるかもしれません。ホームページやSNS、Web広告やポータルサイトを有効活用し、集患対策を徹底していく必要があります。
訪問診療の承継開業のメリット
訪問診療における承継開業のおもなメリットは4つです。
- 開業までの時間が短縮できる
- スタッフの採用や教育のコスト削減ができる
- 集患の手間と時間が削減できる
- 収支が計画しやすい
開業までの時間やスタッフの採用・教育、集患の手間などが削減できます。そのため、収支が計画しやすく、設備投資などがしやすくなるメリットがあります。
開業までの時間が短縮できる
承継開業の場合、開業場所の選定や土地の取得、建築などの工程がありません。そのため、新規開業よりも少ない時間と労力で開業できます。
ただし、家具や医療機器などの年数が長く経過している場合は、買い替えが必要になるケースもあるでしょう。
スタッフの採用や教育のコスト削減ができる
承継開業の場合、看護師などのスタッフをそのまま引き継ぐことが可能です。承継前のクリニックに長く務めていたスタッフであれば、日々の業務を把握しているため、即戦力になってくれるでしょう。優秀なスタッフがいる場合、スタッフを新たに雇ったり、教育したりする必要がありません。そのため、採用や教育コストの削減が実現できます。
集患の手間と時間が削減できる
承継開業の場合、承継前から関わっている患者さんとそのまま関係性が継続できるため、集患の手間と時間が削減できます。新規開業の場合に必要な広告費なども抑えられるため、全体的な開業コスト削減につながるでしょう。
収支が計画しやすい
承継開業では、もともとクリニックを利用している患者さんが継続利用する場合が多いため、収支の計画が立てやすいのが特徴です。計画が立てやすいと、設備投資などがしやすくなったり、事業拡大がしやすくなったりするでしょう。
訪問診療の承継開業のデメリット
訪問診療における承継開業のおもなデメリットは4つです。
- 開業地・物件が限定される
- 内装や設備が変更しにくい
- 譲渡対価が発生する
- 希望する診療方針が立てづらい場合がある
自身が開業したい場所や物件で診療できない場合が多く、内装や設備も変更しにくい場合があります。承継後、診療方針を立てる際は、トラブルが起きないようにスタッフや患者さんと話し合っておくことが大切です。
開業地・物件が限定される
承継開業の場合、自身が要望するエリアや物件とは異なる条件で開業しなければならないケースもあります。自身の要望を満たす条件で承継するには、多くの仲介業者さんと知り合い、承継先を紹介してもらうことが大切です。
内装や設備が変更しにくい
承継開業では、間取りや設備が変更しにくいため、こだわりのある方の場合は向かないかもしれません。一からクリニックを作り上げたいと考える方の場合は、新規開業の方が適しているといえるでしょう。
譲渡対価が発生する
承継時には、承継元と承継先の2者間で、譲渡対価が発生します。承継開業の場合、建物が老朽化している場合に発生するリフォーム費用などが必要になるケースがあります。譲渡対価の金額を、リフォーム費用を考慮した金額にしてもらうことで、費用が抑えられます。
希望する診療方針が立てづらい場合がある
前院長と診療方針が異なる場合、既にクリニックと関係がある患者さんやスタッフと対立する可能性があります。承継後に診療方針を決める際は、スタッフや患者さんの主張を聞いた上で、折り合いがつくようにしっかり話し合いをすることが大切です。
承継開業に関するよくある質問
承継開業に関するよくある質問を以下にまとめました。
-
Q
申請に要する期間はどのくらい?
A各種補助金・助成金によって異なりますが、基本的には数ヶ月の時間を要します。利用する際は、各種補助金・助成金のホームページを確認しましょう。
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Q
申請に関して聞きたいことがある場合どうしたらいい?
A社会保険労務士・中小企業診断士・行政書士といった専門家に相談することをおすすめします。
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Q
申請書類はどうやって入手できる?
A各種補助金・助成金のホームページにて、無料でダウンロードできます。
まとめ
訪問診療における新規開業・承継開業には、メリット・デメリットがあります。
新規開業の場合、開業までに多くの工程がかかるため、多くの時間と費用を要します。一方で、自身の裁量で開業場所や建物、内装などを作り込み、スタッフや取引業者などの選定などができる点が特徴です。
承継開業の場合、開業地・物件が限定され、内装や設備が変更しにくい点が難点です。しかし、新規開業ほど開業に必要な工程が少ないため、開業までの時間が短縮できます。また、スタッフの採用や集患対策に必要なコスト削減が可能な点が魅力といえるでしょう。
新規開業・承継開業におけるメリット・デメリットを踏まえ、自分に合った開業スタイルを選びましょう。
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