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訪問診療クリニック開業にかかる費用とは?自己資金の目安や資金調達についても解説

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訪問診療クリニック開業にかかる費用とは?自己資金の目安や資金調達についても解説

「訪問診療クリニックの開業資金はどうやって調達する?」
これから訪問診療クリニックの開業を検討している医師の中で、このように考えている方がいるのではないでしょうか。


訪問診療クリニックの開業で良いスタートを切るためには、開業に必要な費用を知り、計画的に行動していくことが大切です。


本記事では、訪問診療クリニックが開業するために必要な費用や調達方法を解説します。しっかりと準備をおこない、スムーズな開業を目指しましょう。

訪問診療クリニック開業にはどんな費用がかかる?

訪問診療クリニックが開業するためには、おもに以下内容の費用がかかります。

  • 物件にかかる費用
  • 医療機器や電子カルテの費用
  • 什器や備品の費用
  • 宣伝広告の費用
  • 採用費・人件費    

物件や設備の規模、広告の打ち方やスタッフ数などによって異なりますが、3,500〜4,000万円程度の費用がかかるでしょう。

物件にかかる費用

物件にかかる費用としては、おもに以下3つが挙げられます。

  • 敷金
  • 礼金
  • 仲介手数料
  • 内装工事費


いずれも、立地場所や建物の規模などによって費用は異なります。


敷金

敷金とは、賃貸借契約の際に、契約上の債務を担保するために預ける費用です。費用の目安として、月に発生する賃料の6〜12ヶ月程度が発生します。(約330万円)


礼金

礼金とは、賃貸借契約の謝礼として賃貸人に支払う費用です。費用の目安として、月に発生する賃料の1〜2ヶ月程度が発生します。(約35〜70万円)


仲介手数料

仲介手数料とは、仲介してくれる不動産会社に支払う費用です。費用の目安として、月に発生する賃料の1ヶ月程度が発生します。(約35万円)


内装工事費

訪問診療におけるクリニックの内装工事として、照明や空調、院内LANや電源などの工事が挙げられます。



費用の目安として、坪単価20〜60万円程度が発生します。(約2,000〜2,400万円)

医療機器や電子カルテの費用

医療機器の場合、ポータブルエコーや心電計、その他ウェアラブルデバイスなどがメインとなります。費用の目安として、100〜200万円程度がかかるでしょう。

また、電子カルテや医事会計システム(パソコンやハードウェアなどを含む)などで100〜200万円程度かかります。

什器や備品の費用

訪問診療における什器や備品としては、以下が挙げられます。

  • テレビ
  • ソファ
  • 椅子
  • 家電品
  • カーテン



上記を揃えるための費用の目安として、400万円程度がかかります。

宣伝広告の費用

訪問診療クリニックを宣伝するための手段として、広告を打つことは有効です。おもな広告手段としては、以下が挙げられます。

  • ホームページ
  • リーフレット
  • チラシ
  • 看板
  • 内覧会


上記を活用するための費用の目安として、200万円程度がかかります。

採用費・人件費

訪問診療クリニックにおけるスタッフの採用や人材育成に関しては、採用募集のための広告を打ったり、人材紹介を活用したりする方法があります。

またスタッフを育成するために、接遇研修などをおこなうこともあるでしょう。費用の目安としては、100万円程度がかかります。

訪問診療クリニック開業にかかる費用の目安

訪問診療クリニックの開業にかかる費用の目安は以下のとおりです。

項目 費用の目安
物件にかかる費用 敷金:月に発生する賃料の6〜12ヶ月程度。(約330万円)
礼金:月に発生する賃料の1〜2ヶ月程度。(約35〜70万円)
仲介手数料:月に発生する賃料の1ヶ月程度。(約35万円)
内装工事費:坪単価20〜60万円程度。(約2,000〜2,400万円)
医療機器や電子カルテの費用 医療機器:100〜200万円程度
電子カルテ:100〜200万円程度
什器や備品の費用 テレビやソファなど:400万円程度
宣伝広告の費用 ホームページやチラシなど:200万円程度
採用費・人件費 100万円程度
合計 3,500~4,000万円程度

自己資金はどのくらい用意する?

開業資金の総額の1〜2割程度を自己資金として確保しておくと良いでしょう。訪問診療クリニックの開業資金は、銀行や金融機関から融資してもらえるため、全てを自己資金で準備する必要はありません。

銀行や金融機関から融資してもらう場合は、返済可能であることを示す事業計画書を作成することが大切です。

また、自院の理念や特徴などをわかりやすく盛り込むことで、優良なクリニックであることをアピールすることも求められます。

資金調達の方法

訪問診療クリニックを開業するにあたり、自己資金で足りない費用については、おもに以下2つの方法で調達できます。

  • 金融機関の融資を受ける
  • 公的機関の融資を受ける

借入上限額や融資期間などを確認し、自院に適切な方法で融資を受けましょう。

金融機関の融資を受ける

銀行や信用金庫などの民間の金融機関の場合、訪問診療クリニックが利用できる融資プランを提供してくれます。開業資金だけでなく、運転資金の借り入れも可能なケースがあるものの、審査のハードルは高いとされています。
融資を受ける際は、事業計画書や損益計算書、キャッシュフローを作成し、交渉していくことが大切です。

金融機関によって融資額や条件が異なるため、自院の自己資金などに応じて適切な金融機関を選びましょう。

公的機関の融資を受ける

公的機関の融資の場合、個人事業主でも申し込みが可能であり、比較的低い金利で融資が受けられる点が特徴です。

公的機関である日本政策金融公庫は、複数の融資プランがあります。訪問診療クリニックで使用できるのは以下3つです。

  • 新規開業資金(新企業育成貸付)
  • 女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)
  • 新創業融資制度(その他の融資)


上記以外にも、各都道府県における医師会では、訪問診療クリニックを支援する「開業支援ローン」が準備されていることもあります。

訪問診療クリニックを専門とする場合のポイント

訪問診療クリニックを開業する場合、以下2つのいずれかの形態を選ばなければなりません。

  • 外来診療+訪問診療
  • 訪問診療のみ


訪問診療のみのクリニックであれば外来診療に必要なスペースや備品は不要なため、開業に必要な費用も異なります。

なお、訪問診療のみをおこなう場合は、厚生労働省が規定している以下の要件を満たす必要があります。

(1) 無床診療所であること。
(2) 当該保険医療機関において、在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定し、その範囲(対象とする行政区域、住所等)を被保険者に周知すること。
(3) (2)の地域の患者から、往診又は訪問診療を求められた場合、医学的に正当な理由等なく断ることがないこと。
(4) 外来診療が必要な患者が訪れた場合に対応できるよう、(2)の地域内に協力医療機関を2か所以上確保していること(地域医師会(歯科医療機関にあっては地域歯科医師会)から協力の同意を得ている場合にはこの限りではない)。
(5) (2)の地域内において在宅医療を提供し、在宅医療導入に係る相談に随時応じること及び当該医療機関の連絡先等を広く周知すること。
(6) 診療所の名称・診療科目等を公道等から容易に確認できるよう明示したうえ、通常診療に応需する時間にわたり、診療所において、患者、家族等からの相談に応じる設備、人員等の体制を備えていること。
(7) 通常診療に応需する時間以外の緊急時を含め、随時連絡に応じる体制を整えていること。

引用:厚生労働省「在宅医療のみを実施する医療機関に係る保険医療機関の指定の取扱いについて」

訪問診療クリニック開業に関するよくある質問

訪問診療クリニックの開業に関するよくある質問を以下にまとめました。

    • Q

      訪問診療所を開設するにはどうしたらいいですか?

      A

      訪問診療のみをおこなう場合は、厚生労働省が規定している7つの要件を満たす必要があります。例えば、次のような要件があります。(1) 無床診療所であること。(2) 当該保険医療機関において、在宅医療を提供する地域をあらかじめ規定し、その範囲(対象とする行政区域、住所等)を被保険者に周知すること。

    • Q

      訪問診療クリニック開業の自己資金はどのくらい用意する?

      A

      開業資金の総額の1〜2割程度を自己資金として確保しておくと良いでしょう。(訪問診療クリニックの場合、物件や医療機器、備品や内装工事などで約1700万円の開業資金が必要になります。)訪問診療クリニックの開業資金は、銀行や金融機関から融資してもらえるため、全てを自己資金で準備する必要はありません。

まとめ

訪問診療クリニックが開業するためには、おもに以下内容の費用がかかります。

  • 物件にかかる費用
  • 医療機器や電子カルテの費用
  • 什器や備品の費用
  • 宣伝広告の費用
  • 採用費・人件費    


クリニックの診療方針や規模感に応じてかかる費用は異なります。開業前に、自院の方針を考え、どのぐらいの予算が必要かを考えることが大切です。

資金調達のためには、公的機関や金融機関の融資が受けられるため、開業資金のすべてを自己資金で負担する必要はありません。自院の経営方針や治療方針などに合わせ、適切な融資の手段をとり、円滑な開業を目指しましょう。



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この記事を書いた人

ゆし

医療ライター。医療機器メーカー(東証プライム市場上場)の営業職に約10年間従事。クリニック開業サポート・医院継承サポート実績あり。日々、多くの医師やコメディカルと関わり合いながら、医療ライターとして多くの医療記事を執筆している。

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