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「仲間」として、患者の人生に寄り添うプライマリ・ケア|医療法人博仁会みんなの内科外科クリニック|中村 真季 先生

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「仲間」として、患者の人生に寄り添うプライマリ・ケア|医療法人博仁会みんなの内科外科クリニック 中村 真季 先生

患者さんを多角的に診察し、地域医療を担う重要な役割として注目が集まっているプライマリ・ケア。

今回は、医療法人博仁会みんなの内科外科クリニックでプライマリ・ケアに従事されている中村 真季(なかむら・まき)先生に、プライマリ・ケアを志した背景や魅力について伺いました。

地元・茨城県で「地域医療を充実させる」という使命のもと、尽力されている姿に迫ります。

みんなの内科外科クリニック
中村 真季 先生

2012年自治医科大学卒業。秋田県や東京都の病院で研修・勤務を重ねたのちに、地元茨城県の地域の中核病院で内科医として従事。内科医として働きながら、在宅療養支援診療所で在宅医療を学び、家庭医療専門医・指導医となる。2019年に長男、2022年に次男を出産し、2024年4月よりみんなの内科外科クリニックに勤務。「地域医療を充実させる」という目標のもと、プライマリ・ケアに携わっている。

偶然の出会いが重なって地域医療の道へ

―はじめに、現在のお仕事と医師になろうと思ったきっかけを教えてください。

現在は19床の病床を持つクリニックで、訪問診療をメインとして医療に従事しています。ですが、私ははじめから医師を目指していたり、訪問診療を志したりしていたわけではありませんでした。というのも、子どものころは母の影響で学校の先生になりたいと思っていたんです。

転機となったのは、高校2年生のときにテレビで「院内学級」の特集を目にしたことでした。そこから院内学級に興味を持つようになり、地元の大学病院に設置された院内学級を見学する機会に恵まれたんです。

見学した院内学級の先生から「なにあったときに子どもの命を救えるのは医師だから、小児科医を目指してみては?」と声をかけていただきました。この言葉をきっかけに、教師ではなく小児科医になることを目標に、医学部の受験を決めたんです。

大学で医学を学ぶうちに産婦人科の手術に面白さを感じて「小児科ではなく婦人科もいいな」と思う時期もありました。しかし、大学6年生のときに地域実習でお世話になった静岡県にある静岡市国民健康保険井川診療所(以下、井川診療所)での経験が、私の人生を変えました。

―井川診療所での地域実習でなにがあったのでしょうか。

井川診療所はいわゆる「へき地」にあります。救急車も常駐していなかった山奥の町です。一般的な市にあるようなサービス付き高齢者住宅やグループホームといった施設はありません。しかし、その地域に愛着をもって住み続ける人たちがいるんです。

そこで井川診療所の先生が消防署をつくるよう要請したり、診療所の2階に高齢者施設をつくったり。さらには、診療所の横にドクターヘリのヘリポートを設置したりして、地域医療を町の住民と一緒にゼロからつくり上げました。井川診療所では訪問診療も積極的におこなっており、先生は町の人たちから慕われながらもフラットな関係を築いていて、「お医者さん」というよりも「同じ地域で暮らす仲間」のように感じたんです。先生の地域医療に対する考え方に感銘を受けて「私も地域の医療をつくり上げたい」と思うようになりました。

そして、井川診療所の先生がおこなったような地域医療を実現するにあたって、最も考え方が近かったのが「プライマリ・ケア」でした。プライマリ・ケアの専門医である「家庭医療専門医」は大学の義務年限(※1)内で取得できることも後押しとなり、私はプライマリ・ケアの道を歩み始めることになったのです。

※1 義務年限:医学部を卒業した医師が一定の期間を指定されたへき地等の公的医療機関として勤務する義務

病気だけではない、患者さんの“人生”に寄り添うプライマリ・ケア

―先生は現在プライマリ・ケア医としてご活躍されていますが、プライマリ・ケアの魅力はなんですか。

プライマリ・ケアの魅力は「病気以外にも関われること」だと思っています。そもそもなぜ医師は病気を治すのか。その答えは「患者さんの人生を幸せにするため」です。しかし、現実は生活習慣病をはじめとして、神経難病やがんなど完治できない病気がたくさんあります。そんなときに、病気だけでなくて家族のことなど多方面で寄り添うのがプライマリ・ケアなんです。

私は大学6年生のときにカナダで実習をしたのですが、カナダでは日本とはまた異なる「家庭医」の文化が根づいています。日本では夫婦で別のクリニックに通院するのは珍しいことではありません。でも、カナダでは夫婦どころか親から孫まで家族単位で、同じ「家庭医」の診察を受けます。

また、カナダの人は不調を感じたとき、日本のように最初から大きな病院にかかったり、診療科によって複数のクリニックを使い分けたりしません。まずは家庭医の診察を受け、必要と判断されたら専門医を受診します。だからこそ、家庭医は患者さんのことを深く理解していますし、患者さんも「家族のことをなんでも知ってくれている信頼できる医師」に診てもらえるのは安心感があるんですよね。

日本の病院だと「医師は忙しそうで話しかけづらい」なんて患者さんの声をよく耳にしますが、カナダの家庭医のような「相談しやすい医師」の存在は重要だと思います。

―プライマリ・ケアに携わって印象的なエピソードはありますか。

「患者さんから感謝される」機会が増えたことでしょうか。私は外来診療と訪問診療のどちらも経験していますが、訪問診療に携わるようになってから感謝される機会が増えたように感じます。
患者さんの家や施設を訪問し、診察するだけで「来てくれてありがとう」と言ってもらえることに、最初は驚きました。自宅や施設でお看取りして「最期まで先生に診てもらえて良かった」と言っていただくと、病院で看取るのとは別の感慨深さがありますね。また、私はベースは総合内科医ですが「家庭医」を名乗っているので、訪問したときに足や首が痛いといった整形外科的な症状や、耳鼻科的な症状があるといった場合もできるだけ診るようにしています。

感謝の言葉をいただくとやはり嬉しいですし、「もっとがんばろう」と力が入りますね。

医師と患者だけでなく、家族も地域もワンチームでつくり上げる地域医療

―先生がお仕事の中で大切にされていることはなんですか。

「いつも仲間で時々家族、必要なときだけ医者になる」をモットーに働いています。私が「医者」になってしまうと、患者さんは思っていることや感じていることを話しづらくなってしまうんですよね。訪問診療は多職種が密に関わりますが、訪問看護スタッフやケアマネさん、ご家族も含めて「仲間」だと思っています。「医者」ではなく「仲間」として、患者さんからなんでも言ってもらえる関係が理想です。

また、私自身も家族的な価値観でいることを大切にしています。もし自分が患者さんの家族だったら医師にどう接してほしいか、医師としてどのように治療にあたってほしいか。医師が家族の目線を持ち合わせることは、ACP(※2)を一緒に考えるにあたって重要なのではないかと考えています。

※2 ACP:アドバンス・ケア・プランニング。将来の医療やケアについて、本人を主体に家族や医療・ケアチームが繰り返し話し合い、本人の意思決定を支援する取り組み。

―先生の今後の目標を教えてください。

訪問診療やプライマリ・ケアを続けたいのはもちろんなのですが、最終的な目標は井川診療所の先生のようになることです。現在生活している茨城県ひたちなか市の地域医療をもっと充実させるためのお手伝いがしたいと思っています。

そのためには、同じ方向を向いている仲間をたくさん集めなければなりません。地域や政治も関わる問題なので、医療関係者に限らず多方面で仲間を増やしていきたいです。

また、私はこれまで地域医療に携わるにあたって「自分がそこの住民になること」を大切にしてきました。これは井川診療所の先生の教えでもあるのですが、「医者」という職業とは関係なく、地域の行事に参加したり、おいしいものを見つけたりすることも「地域の住民」になるうえで重要なんです。

ですから、私もひたちなか市のいいところを共有したり応援したりする「ファンベース」という活動に参加し、ひたちなか市の魅力を発信しています。交流をクリニックから広げるというよりも、ひたちなか市の一市民である「中村真季」として地域の人々と関わることも大切なのです。医療とは関係ないように見えるかもしれませんが、自分の夢を実現するために小さなことから積み上げていきたいと思います。

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この記事を書いた人

遠藤 たまこ

医療ライター。大学病院、地域急性期病院、クリニックとさまざまな形態の医療機関で医療事務として約8年間勤務。これまで30を超える診療科の会計・レセプト作成や、医師の診療補助など幅広く医療事務業に携わる。現在はフリーの医療ライターとして活動中。

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