在宅医療の診察技法
- #在宅医療全般
在宅医療の需要はますます増加しておりますが、国内の医学教育では在宅医療に関する定まったカリキュラムはなく、各自が個別のケアを実施している状況です。
本セミナーでは、在宅医療で実施すべき身体診察に関して実践的なアプローチを共有します。
※こちらの記事は在宅医療従事者のための動画プラットフォーム「peer study 在宅医療カレッジ」のプレミアムセミナーの内容の一部を公開したものです。
講師
医療法人おひさま会 CHRO
荒 隆紀
チャプター
- 在宅医療における診察は病院と何が違うの?
- 身体診察の意義と尤度比について
- 身体診察の全体像とは?
- 初診時のスクリーニング診察を体得する
- ルーチン診察を体得する
- 身体診察とは結局何か?
- 今日のまとめ
在宅医療における診察は病院と何が違うの?
本日は在宅医療の診察技法 と題しまして 在宅医療における診察のお話をしたいと思います。みなさんに最初に質問なのですが、在宅医療における身体診察って病院や救急外来とどう違うのでしょうか?
ここで患者さんのケースを見ながら考えていきたいと思います。
在宅の患者さんで83歳女性Aさん。発熱ということで診察をしています。
この方はアルツハイマー型認知症と脳梗塞の後遺症があって独居で暮らしている方です。
2日前から38度の発熱、湿性咳、鼻汁があって、この時期ですからCOVID-19の検査を行ったわけですが陰性。一旦は解熱剤で様子を見ていたのですが改善せず臨時往診に来てくださいということで診察と状況です。
バイタルサインは御覧のように安定していて、診察をしてみるとSpO2が93%と少し低く、左の肺の下の方に肺雑音が聞かれました。それ以外は診察をくまなくしてみてもほとんど問題は見られないと。これはおそらく左の肺炎だろうということで痰培養を出して抗菌薬を開始したということです。
こういった状況は在宅医療によくあると思うのですが、これはさながら救急外来と全く同じ診察をしているということを印象としては持つのではないかなと思います。
では次のケースです。
全く同じ女性ですが全く同じ経過で左肺炎と診断をして、ご家族さんの希望もあって入院しないで抗菌薬を使って様子をみるという状況ですね。そのあと、抗菌薬投与の甲斐もあって翌日から呼吸状態もよくなってSpO2も上がってきて2~3日くらいで解熱をしたと。念のための血液検査でも炎症反応は上がっていたのですが4日後くらいには改善した。このような状況で徐々に改善して7日くらいで元の状態に戻ったと状況です。こういった状況はさながら肺炎で入院した人が定期的に診察を受ける状況となんら変わらないという感じになります。