プライマリケアにおける訪問看護の役割
- #在宅医療全般
※こちらの記事は在宅医療従事者のための動画プラットフォーム「peer study 在宅医療カレッジ」のプレミアムセミナーの内容の一部を公開したものです。
講師
株式会社デザインケア・みんなのかかりつけ訪問看護ステーション
代表取締役社長・看護師
藤野 泰平
チャプター
- 訪問看護ステーションと社会的背景①~世帯構造の変化~
- 訪問看護ステーションと社会的背景②~供給の課題~
- 訪問看護ステーションと社会的背景③~医療費の課題~
- 訪問看護ステーションと社会的背景④~テレナーシング~
- 訪問看護ステーションが取り組む社会課題
訪問看護ステーションと社会的背景①~世帯構造の変化~
まずは訪問看護ステーションの社会課題、世帯構造の変化についてお話ししたいと思います。
皆さんもさまざまなデータをご覧になると思いますが、病院だけ、在宅だけ、というものではない、切れ目のないサービスを提供していこうという大きい方針を厚生労働省が出しています。
2014年ごろからは、時々入院、ほぼ在宅ということが言われております。ずっと病院にいるのではなくほとんどの時間を在宅で過ごしていますので、 在宅で長くいてときどき入院をするという状況が本人たちにとっていいのではないかということで、このようなコンセプトが出ています。
人口構造を見ると、人口が減り続けている、高齢化率がどんどん高まっている、そして子どもの数がどんどん減ってきている、という日本の構造が分かります。
1年間に生まれる人の数が減るということは、高齢化が早く来るということですので、 そこを我々はどうクリアしていくのか、みんなが持続可能で幸せに生きるような世界をどう作っていくのか、ここが我々世代の大きい課題となっています。
また、地方は高齢者人口があまり増えず、 都市部は高齢者人口が増えると言われており、この増えてくる高齢者人口に対して、どのように対応していくのかということがテーマとなります。そして2060年になると、18歳以下の人口よりも認知症の方の人口の方が増えるとも言われています。今の18歳以下がいる、小学校、中学校、高校のすべてに認知症の方がいるというような世界構造になってくると思いますので、病院だけですべてを解決することは少し難しくなるのではないかと考えています。そのため、病院と在宅、切れ目がないサービスをどう作っていくのか、ということがとても大事だということが分かります。
もう少し解像度を上げて人口構造を見ると、たとえば高齢者と言われるのはどういう方々かというと、実はほとんどが女性なんですね。男性よりも女性の方が平均寿命が長いので、年を取れば取るほど男性の比率が下がり、85歳以上では男性はもう女性の半分もいません。 そのため、高齢者を見るということは女性を見ると言っても過言ではないくらい人口構造が変わっていきます。
世帯構造の変化も見てみると、65歳以上世帯の4分の1以上が独居であり夫婦のみが31%となっており、要するに半分以上が老老世帯もしくは独居だということが分かります。
このような状況の中で我々はどういう風にケアを提供するのか。ケアの対象となる方々の世帯構造がこうなっているということを全員が念頭に置きながらケアを提供していくことがとても大事だと思っています。
そして、もう1つ見ておきたいのが独居割合です。平均余命の長い女性の方が多くなっており、旦那さんを見送った後独居で暮らす方が多いと言われていますので、この高齢の独居の女性をどう支えていくのかということも非常に大切です。
平均寿命と健康寿命の推移を見てみると、健康寿命、平均寿命の両方とも、女性の方が長いのですが、要介護になるなどして健康寿命が終わった後の期間については女性の方が3年ほど長くなっています。これがどこから来ているのかを紐解いていきたいと思います。
世帯年収が127万円を下回っている層は相対的貧困だと言われています。公的年金の額を見てみると、右側が女性の年金額を示していますが、このグラフの黄色いところは月額7万円から10万円です。これは年収で考えると120万円を下回るくらいなのですが、79歳の世代までは60%を超えています。そのため、女性の平均年収は相対的貧困を下回っているケースがあるということが言えます。
これは働いたことがなく専業主婦として生活しているという方が多いからだと言われており、 その場合旦那さんがご存命のうちは世帯年収が高いのですが、死別をしてしまい女性だけになるとこの公的年金の金額が一気に下がってしまうので相対的貧困となる、ということがこの統計情報から見えてくるわけです。
ですので、こういった状況において我々はどのようなケアを提供していくのかを考えていく必要があるのです。