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訪問診療医によるオンコールの実際とワーク・ライフ・バランス

訪問診療医によるオンコールの実際とワーク・ライフ・バランス

「訪問診療医のオンコールについて知りたい」
「訪問診療医のワーク・ライフ・バランスが気になる」
このように考えている医師の方はいませんか。

近年、在宅医療のニーズが高まりつつあり、訪問診療医は欠かせない存在となっています。

一方で、訪問診療におけるオンコール対応は医師にとって大きな負担であることも事実です。

訪問診療医のオンコール体制やワーク・ライフ・バランスを整えることは、今後の在宅医療の発展において重要視されるべきことでしょう。

この記事では、訪問診療医におけるオンコールの実際について具体的に紹介します。
オンコールにおける医師のワーク・ライフ・バランスについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

訪問診療における医師のオンコール対応

厚生労働省による在宅医療の推進により、訪問診療を担う病院やクリニックは増加傾向にあります。

在宅医療では、患者さんの生活を支えるために24時間365日の対応が必要です。
そのため、夜間や休日に患者さんからの緊急連絡に医師や看護師が応じる「オンコール」の体制がとられています。

では、在宅医療におけるオンコール対応の重要性や実際について詳しくみていきましょう。

オンコール体制の重要性

訪問診療では、患者さんの緊急時に迅速に対応できる体制を整えることが不可欠です。
オンコール体制を整えることで、患者さんやご家族は「夜間や休日に何かあっても相談できる」という安心感を得られるでしょう。

またオンコール体制が充実すると、在宅医療の質の向上や地域包括ケアシステムの推進にもつながります。

オンコール体制の具体例

オンコール体制は病院やクリニックによりさまざまですが、人員配置には次のようなケースがあります。

  • 医師が1stコール(連絡があったときに最初に電話をとる)と対応
  • 看護師が1stコール、状況に応じて医師に報告、対応

1stコールで往診が必要になった場合は医師が訪問し、必要に応じて看護師も同行します。なかには専属のドライバーが在籍しているところも。

また、オンコール対応は在籍している医師が当番制で行っているケースが多いです。当番の頻度は週に1~2回が一般的ですが、医師の在籍人数に左右される傾向にあります。

なかにはオンコール当番の負担を軽減するために、非常勤医師が当番を担っているところやオンコール専属の医師が在籍しているところもあります。

医療チームとの連携

在宅医療では多職種連携が重要ですが、オンコール対応でも職場内および外部との連携が欠かせません。

訪問看護を利用している患者さんでは、状況に応じて訪問看護師に患者さんの訪問を依頼することがあります。
訪問看護師から患者さんの状態や経過を報告してもらい、必要に応じて訪問診療医が指示を出したり往診に向かったりします。
日頃から多職種で情報共有し、信頼関係を築いておくことも重要です。

また、診療に主治医制をとっている施設ではオンコール当番の医師が担当患者さん以外の対応もしなければならないケースがあります。

そこで、次のような患者さんの情報は医師や看護師で密に情報共有しておくことを大切にしています。

  • 新規の患者さん
  • 看取りが近い患者さん
  • 急変する可能性が高い患者さん

ほかにもオンコール対応における判断に困ったときのために、他の医師にすぐ相談できる体制を整えておくことも重要です。

訪問診療医が担うオンコール対応の実際

訪問診療医のオンコール対応は電話の相談のみで解決できることから、往診の結果により救急搬送が必要なケースまでさまざまです。

ここからは、オンコール対応で実際によくある相談内容や求められるスキルを詳しくご紹介します。

よくある相談内容

オンコールの内容として多いのが「発熱」や「症状の相談」です。

患者さんやご家族から連絡があったときに「本人の苦痛の程度」「食事や排泄量」「日常生活にどの程度支障が出ているか」などを確認します。

往診が必要なときには、診察とともに必要に応じて感染症の検査や採血、抗生剤の投与を行います。
翌日には医師や看護師から連絡を入れて、オンコール対応後の患者さんの様子を確認することが多いです。
患者さんやご家族の不安を軽減するため、丁寧に対応することを心がけています。

迅速な判断と対応

オンコール対応では緊急を要するケースもあり、訪問診療医の迅速な判断や対応が求められます。
ときには「自宅療養を続けられるか」「病院に搬送するべきか」など患者さんのその後に関わる判断をしなければなりません。
緊急度の程度によっては、患者さんやご家族から連絡があった時点で救急搬送を判断することもあります。

判断に困るケースでは他の医師に相談することも可能です。しかし迅速な判断と対応を求められることは、オンコールにおいて訪問診療医の負担が大きい要因のひとつでしょう。

患者さんやご家族とのコミュニケーション

定期的な診察だけでなく、オンコール対応でも患者さんやご家族とのコミュニケーションが重要です。

なぜならオンコールは急を要する場面でもあり、患者さんやご家族自身も焦りや戸惑いを抱えているためです。
訪問診療医から今の病状や対応の説明をより丁寧に行うと、患者さんやご家族の安心につながります。

またオンコールにおける今後の対応を決めるときに大切にしたいのが、患者さんやご家族の希望です。
「入院は絶対にしたくない」「もうちょっと様子をみたい」など、患者さんの価値観はさまざまです。
ときには患者さんやご家族の希望も尊重しつつ医療者側の判断を伝え、相談の上で方針を決めることもあります。日頃から患者さんやご家族との信頼関係を築いておくことも重要です。

オンコールと訪問診療医のワーク・ライフ・バランス

オンコール当番の日は常に出動可能な状態で過ごさなければならず、心身ともに負担が大きいものです。

そこで訪問診療医の負担感を軽減し、質の高い医療サービスを提供できる体制づくりが必要とされています。

ここからは、訪問診療医のオンコールとワーク・ライフ・バランスを関連づけてみていきましょう。

オンコールの待機方法

オンコール当番の日の待機場所は職場により異なりますが、自宅で過ごすのを許可されているところが大半でしょう。

ただし、次のような制限があります。

  • 飲酒はしないこと
  • 遠方への外出は避けること
  • 緊急電話にすぐ出られるようにしておくこと


オンコール当番でも、ある程度の自由はありますが「いつ呼び出されるか分からない」というストレスがあるのが事実です。

オンコールの手当

訪問診療医のオンコール手当は給与に含まれており、出動に応じて手当が出る施設が多い傾向にあります。

出動したときの手当は施設によって異なり、出動する時間帯でも差があるでしょう。1回の出動につき相場は1~3万円です。とくに深夜帯や休日の出動は日常生活への負担も大きいため、手当も高く設定されています。

オンコール手当の有無や金額は、訪問診療医のモチベーションにも影響するでしょう。

ワーク・ライフ・バランス

訪問診療医のなかには、子育てや介護などの事情でオンコール当番が難しい方もいます。

訪問診療医のワーク・ライフ・バランスのために、心身の負担を軽減できる勤務体制や取り組みを行っている施設があります。

以下はその一例です。

  • オンコール代行を利用している
  • 家庭の都合でオンコール当番を免除できる
  • 常勤・非常勤のほかにフレキシブルな勤務ができる

オンコール代行とは、医師や看護師が行う1stコールを専門業者に委託するシステムです。

訪問診療のニーズが高まりつつあるいま、訪問診療の担い手の確保や質の高い医療サービスを提供するためには、訪問診療医のワーク・ライフ・バランスが課題となるでしょう。

まとめ

訪問診療医は、在宅医療において必要不可欠な存在です。
在宅医療の推進により、訪問診療医の需要は今後ますます増えることが考えられます。

患者さんやご家族が、毎日安心して過ごせるようにサポートするために欠かせないオンコールの仕組み。
やりがいの大きい仕事である一方で、心身ともに負担が大きいことも事実です。

そこで、訪問診療医のモチベーションやワーク・ライフ・バランスを維持するための取り組みを進めている施設もあります。

訪問診療に興味のある方は、求人の情報収集や施設見学で訪問診療医に一歩踏み出してみませんか。
この記事が、訪問診療医におけるオンコール対応について知りたい方の参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

土生恵(けい)

看護師/ライター。看護大学卒業後、総合病院へ勤務。その後、血液センターやクリニック、保育園看護師などの経験を積み、訪問診療クリニックに就職。 現在も看護師として働きながら医療・介護分野でライター活動を行う。 今後は在宅医療を地域に広げる活動もしていきたいと思っている。

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