患者満足度調査を行うための準備や流れ、設問項目をわかりやすく解説!
- #品質
- #運営
この記事はこんな方におすすめ
- 在支診や訪問看護ステーションの運営にかかわる院長や、管理者、事務長のみなさま
- 患者さんの声を聞きたい
- 患者満足度調査を行いたいが何から始めたらよいかわからない
この記事を読むとこうなります
- 患者満足度調査を始める前のポイントがわかる
- 患者満足度調査のための準備ができる
「患者満足度調査をやってみたいが何から始めたらいいかわからない」
そんなお悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
患者満足度調査をやみくもに行っても、サービスの改善などに活かせる効果的なデータを集めることができません。事前にしっかりとした調査設計が必要です。
今回は、患者満足度調査を始める前に考えておくべきポイントや手順について解説していきます。
調査を始める前に行っておくこと
「とりあえず調査してみたらなにかわかるだろう」と十分な準備なく調査を行ってしまうと、その後に活かせるような有用なデータを集めることができません。事前にしっかりとした調査設計が必要となります。以下の項目を念頭に準備をしていきます。
目的を明確にする
最も重要ですが意外と難しいのが調査目的を明確にすることです。
「誰が」「どのような目的で」調査を行うのかを整理します。
- 経営者が経営方針を決めるため
この場合はサービス体制が適切か、患者さんが医療機関に期待していることは何かということを数値で測定できるようにします。広報や営業に使いたい質問項目(パンフレットやホームページがわかりやすかったかなど)を盛り込む場合もあるでしょう。 - サービス品質を向上し患者満足度を向上させるため
医療機関が提供しているサービスは医師による診療だけではありません。患者満足度は医師以外のスタッフから提供されるサービスからも影響を受けます。サービス品質の向上のための調査を使う場合は、医師以外のスタッフに関することも質問項目に加え、サービス全体における強みや改善点を導き出します。スタッフ一人一人にとっても自分の提供しているサービスが患者満足度に繋がっているということを意識できます。 - スタッフのモチベーションアップのため
調査結果はスタッフのモチベーション向上にも活かすことができます。この場合は選択式回答の質問だけでなく、自由記述回答の質問も入れて、患者さんに具体的なエピソードを書いてもらうようにするといいでしょう。ポジティブな内容であってもネガティブな内容であっても、自由記述回答の質問に答えてくれる患者さんは推奨度(このサービスを他の人にどの程度勧めたいか)が高い傾向にあります。スタッフに回答結果を表示するときに推奨度の高さも合わせて書いておけば、推奨度の高い患者さんからの意見だと分かり、改善点も受け入れやすくなります。
このように「誰が」「何のために」といった目的を明確にすることで効果的な調査を設計することができます。
調査方法を選ぶ
目的が明確になったら調査方法を考えます。方法は2種類あります。
- 定性調査
患者さんの声を言葉で把握する調査方法で、主にインタビュー形式で行われます。インタビューは対面でもオンラインでも、また1対1ではなく複数人に集まってもらいグループで行うこともできます。忌憚のない意見をもらうために、直接診療に関わっていない人がインタビューを行うのがいいでしょう。インタビューする患者さんやご家族は偏りがないようにランダムに選びます。この調査のメリットとしては、回答に応じてさらなる質問をして患者さんやご家族の意見を引き出していくことができるということ、デメリットとしては意見を聞くのに時間がかかるということが挙げられます。 - 定量調査
患者さんの声を数値で把握する調査方法で、主にアンケート形式で行われます。インタビューでは臨機応変に質問内容を変えることができますが、アンケートでは質問内容を決めておく必要があります。アンケートは直接渡すこともできますし、郵送することもできます。また紙のアンケートを使う場合でも、QRコードを付けておくなどしてwebからも回答できるようにしておくと、回答者/アンケート実施者双方の手間を省くことができます。幅広い年齢の方に答えてもらう場合は、回答する媒体(紙かWEBか)を選べるようにしておくといいでしょう。定量調査のメリットとしては、多くの人から回答を得ることができるということ、デメリットとしては、得られた数値データの分析には知識が必要となるということが挙げられます。
対象者を決める
目的に応じて、どのような人に聞くか、何人に聞くかを決めましょう。ご本人か家族か、サービス利用歴、年齢、性別、主病名などの属性に着目します。疾患や身体状況などの事情で回答ができない人は対象から除きます。アンケートの場合はサービス利用歴などを含めて回答してもらい、属性ごとに集計できるようにしておきます。
設問を決める
まずアンケートの設問の立て方について解説していきます。
設問の最初に、ネット・プロモーター・スコア(NPS®一般的です。設問としては「あなたは診療サービスを親しい友人や知人にどの程度おすすめしたいと思いますか」という推奨度に関する質問になります。NPS®については「患者満足度調査の基礎知識」で解説していますので参考にしてください。
設問項目を考える際には、患者さんの体験場面に沿って患者さんがどの程度満足に感じているかを問う設問を作っていくとスムーズに作成できます。患者さんは医療機関との関わりの中で様々な体験をします。一つ一つの体験が満足できないものであれば、他の人へ同じ診療サービスを勧めたいとは思わないでしょう。患者さんはどこに対して満足していて、どこに対して満足していないのか、体験場面ごとに満足度を聞いていきましょう。
患者さんの体験場面ごとの設問のほか、組織で大切にしている理念に関する項目を設けてもよいでしょう。各項目に対してどれだけ達成できているかを調査して、現状の把握や振り返りを行うことができます。
設問数が多すぎると回答するのが大変になるので、両面印刷で1枚に収まる程度の設問数がよいでしょう。
インタビューの場合は、設問を絞って、一つの設問あたり10~15分程度のインタビューが行えるように設定するのがよいでしょう。
調査結果の分析方法を決める
調査の目的に応じてどのように分析していくかを事前に決めておくことで、調査結果の活用もスムーズになります。主な方法は下記の3つです。
- クロス集計
クロス集計とは、2つ以上の設問をかけ合わせて集計を行うことです。回答者属性による回答の違いを明らかにします。例えば「全体では7割の人が満足しているが、男女別に見ると男性は8割、女性は6割が満足しており、男女比で見ると男性の満足度が高い傾向にある」など属性による回答の傾向を明らかにすることができます。 - テキストマイニング
テキストマイニングとは、大量の文章データから有益な情報を取り出すことをいいます。自由記述欄を設けたアンケートの場合は、頻出している言葉がわかります。頻出している言葉からサービス品質改善のためのキーワードを見つけてみましょう。クロス集計と合わせれば、推奨度の高い人がよく使っている言葉などがわかります。ある言葉と関連の強い言葉を見つけることも可能です。テキストマイニングを行うにあたっては、インターネット上で無料で使えるツールもあるので試してみましょう。 - アクションドライバーチャート
アクションドライバーチャートとは、回答結果から組織の強みや改善が必要な項目が導き出せるグラフのことです。推奨度(このサービスを他の人にどの程度勧めたいか)と満足度(〇〇に対してどの程度満足しているか)を質問しているアンケートの場合、このアクションドライバーチャートを作成することができます。
各質問の満足度を横軸に、満足度と推奨度との関連の強さを縦軸にとってグラフにします。「満足度と推奨度との関連の強さ」とは、「この項目の満足度が高いと推奨度も高い」という満足度と推奨度の相関関係を示しています。縦軸・横軸それぞれの平均値を求めて線を引き、グラフを4つのエリアに分けると組織の強みや改善が必要なポイントが導き出されます。
- ①重要維持項目(強み):推奨度との関連が高い項目において満足度も高く、組織の強みになっている項目です。
- ②優先改善項目(弱み):推奨度との関連は強いけれど満足度は低く、組織の弱みとなっており、優先して改善に着手すべき項目です。
- ③基本維持項目:満足度は高いけれど推奨度との関連はそこまで高くない項目です。推奨度との関連は弱くはありますが満足度は高いので維持するようにしましょう。
④注意観察項目:推奨度との関連はそこまで高くなく、満足度も低い項目です。改善すべき優先度は②より低いですが満足度も低いので注意しておきましょう。
このように分析手法は様々ですが、分析にあたっては統計などの専門的な知識も必要となります。専門的な知識を持つ担当者がいない場合は外部サービスを使って分析を依頼するのも一つの方法です。
以上が患者満足度調査を始める前に行っておくべき準備です。
想像していた以上にやることが多いと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
患者満足度調査はサービス改善や売り上げアップのための重要な活動ですが、事前準備や集計などで手間のかかるものですし、分析にあたっては専門的な知識も必要となります。
自分たちで全て行うこともできますが、外部の調査代行サービスを使った方が効率的で効果的な調査ができる場合もあります。もちろん費用はかかりますが、自分たちで行う手間や人件費を考えると外部に委託した方がよいケースも多くあります。組織のリソースを考慮して外部委託も検討してみましょう。
手間となる準備や集計は満足度調査代行サービスへ!
全国のクリニック・診療所を対象にした調査(※4)によると、クリニックの5割が患者満足度調査を「必要と考えているのに実施できていない」、調査を実施しない理由のトップは「手間がかかる」が挙げられていることがわかりました。
(※4)株式会社Qlife,「患者満足度調査」診療所での実施実態に関する調査結果報告書
患者満足度調査は準備から実施、その先の集計や分析まで多くの時間が必要です。その手間が障壁となって実施できていない医療機関におすすめなのが調査代行サービスです。
在宅医療専門のコールセンターOkitell365の満足度調査サービスでは、調査計画から集計、分析までアンケート実施する上で面倒となる業務の多くをサポートいたします。どのような些細なことでもまずはお気軽にご相談ください。