医療法人における定款変更の方法は?規定内容や注意事項を解説
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「医療法人の定款変更の方法がわからない」
これから施設を開設・増設・移転などする場合に必要な定款変更の手続きに関し、具体的な方法がわからない方がいるのではないでしょうか。
本記事では、医療法人における定款変更の方法や知っておくべき注意事項について解説します。
都道府県ごとのルールに則り、適切な手順で定款変更手続きを進めましょう。
医療法人における定款とは?
医療法人を設立する際に自治体へ認可申請する場合は、定款の提出が必要です。また、公告方法と所在地を除き、医療法人の定款内容に変更が必要になった場合は自治体の認可を受ける必要があります。
医療法人における定款で規定すべき内容
医療法人における定款で規定すべき内容は、以下のとおりです。
- 広告の方法
- 医療法人の名称
- 事務所の所在地
- 役員に関する規定
- 解散に関する規定
- 理事会に関する規定
- 医療法人の設立の目的
- 資産および会計に関する規定
- 評議員会および評議員に関する規定
- 定款または寄附行為の変更に関する規定
- 社員総会および社員たる資格の得喪に関する規定
- 開設予定の病院・診療所などの名称および開設場所
役員に関する規定では、役員の職務や構成、任期などについて取り決めを実施します。社員総会および社員たる資格の得喪に関する規定では、社員が資格を獲得するための条件や資格喪失する理由などに関する記載が必要です。
社員資格の喪失には退社・除名・死亡があり、退社や除名の場合は、社員資格を失う理由について記載しなければなりません。
資産および会計に関する規定では、会計年度や資産の保管方法、基本資産の内容や設立当時の財産などについて定める必要があります。
医療法人における定款変更が必要になるケース
定款変更が必要になるケースは、以下のとおりです。該当するものがある場合は、認可申請をしましょう。
定款変更の認可申請が必要なケース | 概要 |
施設を開設するとき(分院開設) | 本院以外に分院を開設するときに必要になる。 |
施設を閉院するとき | 施設を閉院(廃止)するときに必要になる。 |
施設を移転するとき | 本院・分院のいずれの移転時も必要になる。 |
既存施設を増設・拡張するとき | 本院・分院を問わず、既存施設を増設・拡張する際に必要になる。 |
附帯業務を始める・辞めるとき | 有料法人ホームや訪問看護ステーションといった附帯業務を始めたり、廃止したりするときに必要になる。 |
施設名を変更するとき | 施設名を変更するときに必要になる。(軽微な変更でも必要) |
役員定数を変更するとき | 附帯業務を始めたり、分院を開設したりする場合などで、役員の上限を超えるときに必要になる。 |
会計年度を変更するとき | 現在の定款に規定している会計年度を変更する場合に必要になる。 |
その他 | 医療法改正などにともなって必要になる。 |
医療法人における定款変更に要する期間・申請時期
定款変更に要する期間は、都道府県によって異なります。事前審査にかかる期間として1〜3ヶ月かかるケースがあります。
申請した際に混雑していたり、提出した書類に不備があったりする場合は変更に時間がかかるでしょう。
申請時期は、とくに規定がありません。基本的にはいつでも申請を受け付けているため、変更したいタイミングで手続きを進めましょう。
ただし、都道府県によってルールが変わる場合があるため、事前に管轄の役所へ確認してください。
医療法人における定款変更の流れ
医療法人における定款変更の流れとしては、事前審査を受けたあと、申請する必要があります。これから定款変更する施設は以下の流れに沿って手続きを進めましょう。
必要書類を準備して事前審査を受ける
すべてのケースで必要になる書類
医療法人における定款変更に関し、すべてのケースで必要になる書類は以下が挙げられます。
- 定款新旧対照表
- 定款変更認可申請書
- 現行の定款および変更後の定款案
- 医療法人の履歴事項全部証明書・印鑑証明書
- 定款変更に関する決議が実施された社員総会の議事録の写し(財団医療法人の場合は評議員会および理事会の議事録の写し)
定款の変更内容によって必要になる書類
新たに診療所や病院などを解説する場合は、以下の書類が必要です。
- 建物の各階平面図
- 敷地内容がわかる図面
- 定款変更後の一定期間の予算書
- 定款変更後の一定期間の事業計画書
- 開設する施設の管理者の氏名を記載した書類
- 開設する施設の診療項目・建物・従業員などの概要を記載した書類
分院を廃止する場合は、施設の廃止届の写しが必要です。都道府県によっては、必要書類が異なる場合があるため、必ず都道府県の公式ホームページで確認しましょう。
本申請する
事前申請にて書類提出が終了すると、都道府県の担当者が書類を確認します。場合によっては、修正が求められるため、指示を受けた場合は適切に対応しましょう。
修正が完了すると、本申請にて申請書類一式の提出が必要です。必要な申請書類としては、正本と副本です。
必要部数は都道府県によって異なるため、事前に確認し、必要な部数を発行してください。
法務局で変更登記する
本申請が終了し、内容に問題がなければ認可証などが発行され、定款変更ができるようになります。
認可証などを受け取ったら、2週間以内に都道府県の法務局で登記申請をしましょう。変更登記が完了したあとは、法務局から発行される登記事項証明書を添付した状態で登記完了届を提出してください。
なお、定款の変更箇所が登記に影響しないケースでは、法務局における変更登記や都道府県に対する変更完了届は不要です。
医療法人における定款変更の注意事項
医療法人における定款変更の注意事項として知っておくべき点は2つです。1つ目は、都道府県によって、定款変更の手続きに関するルールが異なる場合がある点です。
医療法人の定款変更は、基本的な部分は共通しているものの、細かな規定は都道府県によって異なる場合があります。
とくに、事前申請に必要な期間や必要書類の部数などは住んでいる地域によって異なる可能性があるため、注意深く確認してください。
2点目は、定款の変更内容によって、必要書類が異なる可能性がある点です。たとえば、新たなクリニックを開設する場合、予算書や事業計画書を記載した書類が必要です。
都道府県によっては、建物の図面や物件の賃貸借契約書などが求められるケースがあります。
必要書類に不備があると、認可を受けるまでに時間がかかる可能性があります。必ず都道府県のホームページで必要書類を確認したうえで申請しましょう。
医療法人におけるモデル定款
厚生労働省では、医療法人における提案のモデルを公表しています。これから定款を作成する場合は、以下を活用してください。
厚生労働省「社団医療法人の定款例」
あくまで一例であるため、詳細な内容については、都道府県のホームページを確認のうえ進めましょう。
まとめ
医療法人における定款は、施設の基本情報や運営に関するルールなどを取り決めたものです。
定款を変更する必要になるケースとしては、施設を開設・閉院したり、増設・拡張したりするときなどが挙げられます。
定款変更をする際は、必要書類を準備のうえ、事前審査を受けましょう。書類提出が終了し、問題がなければ本申請をする必要があります。
本申請が通ると、法務局にて変更登記が必要です。それぞれの手続きの際に知っておくべき点としては「都道府県によって必要な書類や手続きが異なる場合がある」点です。
医療法人における定款変更をする際は、必ず都道府県のホームページを確認したうえで適切な手続きを進めましょう。