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2025年7月23日、厚生労働省は中央社会保険医療協議会(中医協)総会にて、「医療DX推進体制整備加算」および「在宅医療DX情報活用加算」の要件を見直す案を提示し、了承されました。
今回の見直しは、訪問診療クリニックの運営にも直接関わる重要な変更点を含んでいます。本記事では、決定事項のポイントと今後の展望について分かりやすく解説します。
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ポイント1:「医療DX推進体制整備加算」のマイナ保険証の利用率基準、2段階で引き上げへ
2024年度診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」は、医療機関がオンライン資格確認や電子カルテ、電子処方箋などのデジタル技術を活用した体制を整備していることを評価する診療報酬上の加算です。マイナンバーカードの保険証(マイナ保険証)利用率と電子処方箋導入の有無に応じて評価が変動するのが特徴です。
これまで2025年9月までの基準が示されていましたが、2025年10月以降、2段階で基準が引き上げられることになりました。
なお、小児のマイナ保険証利用率は低い状況であるため、加算3・6のマイナ保険証利用率基準を緩和する、いわゆる「小児科特例」は継続されます。
※加算1~3は電子処方箋導入済み、加算4~6は未導入
引用)中医協|医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて(令和7年7月23日)
ポイント2:「電子カルテ情報共有サービス」の経過措置は2026年5月末まで延長
「医療DX推進体制整備加算」および「在宅医療DX情報活用加算」の施設基準に含まれる「電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制」については、適用を猶予する経過措置が2025年9月30日から2026年5月31日にまで延長されることになりました。
これは、同サービスの本格稼働に必要となる医療法改正案が国会で継続審議となっており、全国的な導入環境が整っていない状況を考慮したものです。
多職種連携が不可欠な在宅医療において、電子カルテ情報の共有は業務効率化と医療の質向上の鍵となります。今回の経過措置延長は、準備期間が設けられたと捉え、今後の国の動向やサービスの詳細を注視していく必要があります。
医療DX関連加算は今後どうなる?次期改定に向けた議論の行方
今回、要件の見直しは了承されたものの、中医協の議論では診療側と支払側で以下のような意見が聞かれました。
- 診療側(日本医師会など):マイナ保険証の利用率向上には、国が責任を持って国民への周知や医療現場への支援を強化すべきだと主張。
- 支払側(健康保険組合連合会など):マイナ保険証、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスはそれぞれ普及状況が異なり、それらをまとめて「医療DX」として診療報酬で評価することに無理があると指摘。2026年度の次回改定に向けては、加算の廃止も含めた抜本的な見直しを検討すべきとの意見が相次ぎました。
2026年度の次期改定でこの加算の評価がどう着地するのか、今後の議論の動向を注意深く見守る必要があります。
まとめ:在宅医療の現場で今、取り組むべきこと
今回の決定により、在宅医療の現場では以下の対応が求められます。
マイナ保険証利用率向上のための継続的な取り組み
訪問時や診察の際に、患者様やご家族へマイナ保険証のメリットを伝え、利用を促す地道な働きかけが、これまで以上に重要となります。案内ツールを活用するなどの工夫も有効です。
電子カルテ情報共有サービスの最新動向を注視
電子カルテ情報共有サービスが将来的に在宅医療の多職種連携を支える重要な基盤となることは確実です。経過措置が延長されたこの期間は、国の議論や今後のサービス仕様に関する情報収集に努め、将来の導入に備えるための準備期間と捉えましょう。
2026年度診療報酬改定の議論の行方を把握
支払側からは、今回の加算について「廃止を含めた抜本的見直し」を求める厳しい意見が出ています。次期改定で医療DXの評価がどう変化するのか、政策の動向を常に収集・分析し、先を見据えたクリニック運営の判断材料とすることが不可欠です。
医療DXは単なるシステム導入ではなく、医療の質と業務効率の両立を目指す大きな変革です。在宅医療の現場でも、マイナ保険証や電子処方箋の運用を「現場目線」で最適化する工夫が求められます。今回の要件見直しを、改めて自院のDX体制を見直すきっかけとしてみてはいかがでしょうか。
参考)中医協|医療DX推進体制整備加算等の要件の見直しについて(令和7年7月23日)