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クリニック開業のための事業計画書とは?書き方や注意点を解説!

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クリニック開業のための事業計画書とは?書き方や注意点を解説!

これからクリニックの開業を検討する医師のなかには事業計画書の作成方法や手順がわからない方がいるのではないでしょうか。

本記事では、クリニックが作成すべき事業計画書の作成方法や作成手順、作成するうえで注意すべきポイントについて解説します。

事業計画書作成における必要な情報を把握し、スムーズな開業へつなげましょう。

クリニックの事業計画書の目的

クリニックにおける事業計画書は、開業するうえで必要な書類です。事業計画書のおもな目的は以下のとおりです。

開業後の経営を安定化させるため

事業計画書を作ることで、クリニックの経営に必要な組織・人員計画やマーケティング戦略などが立てられます。

そのため、開業後の経営の見通しが立てやすくなり、経営が安定化しやすくなるでしょう。

一方で、事業計画書を作成せず、経営の見通しを立てていないと経営が不安定になります。最悪の場合、廃業に追い込まれてしまう可能性があるため、事業計画書の作成は必要です。

開業時に融資を受けるため

一般的にクリニックの開業資金は、金融機関などからの融資で資金調達するケースが多くなります。その際に必要なのが事業計画書です。

事業計画書を作成することで、収支計画や資金計画を示せるため、融資元がクリニックに融資するかどうかを判断しやすくなります。

開業時の資金不足のリスクを減らすため

事業計画書を作成することで、開業時に必要な資金が把握できるため、資金不足のリスクが減らせます。

建物や医療機器、その他設備に関わる費用がどのくらいかかるかを明確に事業計画書に記しておきましょう。

クリニックの事業計画書作成の手順

クリニックの事業計画書作成の手順は以下のとおりです。

1.開業資金を見積もる

開業資金として、どのようなものに対してどれほどの費用がかかるかを把握しておくことが重要です。おもに開業費用が必要な項目としては以下が挙げられます。

  • 物件費用(契約金・仲介手数料・保証金・礼金など)
  • 医療機器費用
  • 内装工事費用
  • 広告宣伝費用
  • 採用費・人件費
  • 医師会入会費用
  • コンサルティング費用


各業者に見積もりをとったり、開業コンサルタントに聞いたりして費用に関する情報を集めていくことが大切です。

2.支出を見積もる

支出を見積もる際は、固定費と変動費を確認しておくことが重要です。

固定費

固定費としては、おもに以下の3つが挙げられます。

固定費の内訳 概要
人件費 医師や看護師、受付スタッフを雇うための費用。診療コンセプトを踏まえ、職種別に正社員・パート職員の人数を決め、常勤・非常勤の割合も考慮し、法定福利費(雇用保険料・厚生年金・社会保険料)を計算する必要がある。個人別の給与や時給は、求人誌や新聞チラシなどを参考にするとよい。
賃借料・リース料など 設備投資計画から想定できる家賃やリース料を見積もる必要がある。さらに、借入金条件から毎月の支払利息を算出するとよい。
その他(水道光熱費・消耗品費・衛生費・通信費など) クリニックの規模にもよるが、月額費用として30〜50万円程度必要。ネット広告や看板などを定期的に出す場合は、プラスαとして発生する。
変動費

変動費(売上にともなって変動する費用)としては、外注検査費用や医薬品費用、診療材料費用などが挙げられます。

変動費は、院外処方の有無や診療科目などによって変わることを知っておきましょう。

3.収入を見積もる

収入を見積もる際は、以下の3つを押さえておきましょう。

管理患者数

自院の診療科目を踏まえ、診療圏調査の結果を参考に1ヶ月あたりの管理患者数を把握しておくことが大切です。

管理患者数を割り出す際は、想定できる最低ラインと最高ラインに分けて考えておくことをおすすめします。

診療単価

診療単価とは、患者さん一人当たりの平均単価です。診療項目や診療方針を踏まえ、患者さん一人当たりの診療報酬点数をもとに計算してみましょう。

また、居宅患者及び施設患者によって単価が異なる点を考慮し、各種取得可能な加算をもとに診療単価を定めることが重要です。

診療日数

休診日だけでなく、GW・お盆・年末年始などの長期休暇の時期を考慮し、どれくらいの日数を診療にあてられるか確認することが大切です。

可能な限り、医師会の会合や学会への参加日数を考慮したうえで計算しておきましょう。

4.資金繰り表を作成する

1〜3の工程で得られた情報をもとに、以下の要素を踏まえて資金繰り表を作成することが大切です。

  • 開業時に用意できる運転資金
  • 毎月の診療収入
  • 毎月の支出
  • 月末の運転資金残高


上記を含めた資金繰り表を3〜5年分作成することが必要です。入念な資金繰りをしておくことで、開業資金不足が防ぎやすくなります。

一度開業資金の不足が起こると、金融機関へ融資を打診するのが難しくなります。このような意味でも、資金繰り表を正確に作っておくことが大切です。

5.開業スケジュールを作成する

開業日を決めたうえで逆算し開業スケジュールを作成しましょう。たとえば、開業10〜7ヶ月前までに「開業コンセプトを決める」「開業場所を決めるために診療圏調査を実施する」といった形で計画を立てましょう。

クリニックの開業は、さまざまなことを同時期に対応しなければなりません。とくに開業間近になると、書類の提出やスタッフの雇用契約などの手続きで時間に追われます。

いつまでになにをやるべきかを、余裕をもって決めておきましょう。

クリニックの事業計画書を作成するときの注意点

クリニックの事業計画書を作成するときに重要なのは、収入を見積もる際はシビアにしておくことです。

緻密な計算のもと収支を想定していたとしても、思ったより患者数が確保できず、予想を下回る収益になることがあります。

そのため、収入を見積もる際は現実的に考え、最低限見込めるラインを把握しておきましょう。

計画の見直しや開業の延期が必要になった場合は、柔軟に対応することが重要です。

事業計画書の作成でお困りの方は「事業計画書テンプレート」をご活用ください

事業計画書を作成するなかで、作り方がわからず難航している方がいるのではないでしょうか。また、作成にともなう時間的なリソースが確保できず、対処できない方がいるかもしれません。

メディカルインフォマティクス株式会社は、これから開業を検討するなかで事業計画書が必要な方のために「事業計画書テンプレート」をご用意しました。

必要な開業資金や想定される収支などが計算しやすくなっているため、事業計画書の作成にお役立てできます。

これから開業を検討している方はぜひご活用ください。

事業計画書テンプレートをダウンロードする

まとめ

クリニックが開業を成功させ、開業後も経営を安定化させるためには、事業計画書の作成が必要です。

事業計画書を作成する際は、開業資金や支出、収入を割り出しましょう。また、資金繰り表や開業スケジュールを作成しておくと、収支の計算がより把握しやすくなるため、おすすめです。

クリニックの開業を成功させ、開業後も患者さんから選ばれ続けるために、入念な準備のもと事業計画書を作成しておきましょう。

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この記事を書いた人

ゆし

医療ライター。医療機器メーカー(東証プライム市場上場)の営業職に約10年間従事。クリニック開業サポート・医院継承サポート実績あり。日々、多くの医師やコメディカルと関わり合いながら、医療ライターとして多くの医療記事を執筆している。

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