地方で医師を採るのはなぜ難しい? “採れない”を変える地方の採用戦略

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地方で医師を採るのはなぜ難しい? “採れない”を変える地方の採用戦略

地方でクリニックを経営される院長や採用担当者にとって、医師・看護師の確保は都市部以上に切実な課題です。
しかし、地方特有の市場環境を理解し、適切なアプローチを採ることで、採用を成功に導くことは可能です。
今回は、在宅医療の採用支援を専門とするコンサルタントに、地方採用の現状と、採用課題を解決するための考え方について伺いました。

1. なぜ地方での医師採用は難しいのか

まず、地方の採用市場が抱える特有の構造について、採用コンサルタントは「難易度は高い」と指摘します。

都市部への人材集中と母集団の課題

最大の理由は、医師が都市部に集中しているという現状です 。
特に若手の医師ほどその傾向が強く、地方は都市部と比較して「転職を考えている人たち」を指す「母集団」が本質的に小さくなります 。
都市部は母集団が大きい一方で競合も多いですが、地方は競合が少ない反面、母集団そのものが少ないため、採用自体のハードルが高いと言えます 。
Uターンを考える層も存在しますが、タイミングが合わなければマッチングは困難です 。

「訪問診療」領域特有の誤解

特に訪問診療の領域では、採用の難易度が上がります。
これは、訪問診療が医師のキャリアとしてまだメジャーではないことが背景にあります 。
「オンコール対応が大変そう」「24時間365日体制への不安」「キャリアややりがいが見えにくい」といった誤解や不安が根強く存在します 。
そのため、まずは求人票や資料で詳細な仕事内容を伝え、こうした誤解を解く作業が不可欠です 。
実際には外来ほど目まぐるしい診察ではないことやワークライフバランスについて適切に伝えられれば、応募者に届く可能性があるのです 。

2. 採用課題を解決するための戦略

母集団が限られる地方において、採用を成功させているクリニックにはどのような共通点があるのでしょうか。

給与以外の「強み」を明確化する

もちろん給与も大事ですが、給与以外の要因も重要になってきます。
成功しているクリニックは、求人票で自院の強みや仕事内容の詳細を明確に伝え、入社後の定着までを見据えた教育体制やキャリアパスを打ち出しています 。
求職者(医師)の視点に立ち、彼らが本当に知りたい情報(地域の魅力、理念、キャリア、競合との違い)を発信することが求められます 。

関連記事:【採用コンサルに聞く】訪問診療・訪問看護の採用差別化戦略|給与以外の魅力の見つけかた

柔軟な働き方と教育体制のアピール

ある採用成功事例では、安定した基盤や充実した教育体制に加え、シフト制による柔軟な働き方や連続休暇の取得が可能である点をアピールしました 。
給与面での競争が難しい地方だからこそ、こうした教育体制と柔軟な働き方が、他院との強力な差別化ポイントになり得ると考察されます 。

「地域の魅力」を具体的に言語化する

外部からの移住者を採用するケースも多いため、「地域の魅力」の言語化も重要です 。
 単に「働きやすい」といった抽象的な表現ではなく、「子育てのしやすさ」や「都市部へのアクセス」など、具体的な情報をリサーチし、資料に盛り込むことが有効です 。
また、子育てに理解がある医療法人であることや、現在の職員構成といった情報も、候補者のペルソナに合わせて伝えることが安心感に繋がります 。

関連記事:訪問診療クリニックの医師採用を成功させる求人票の作り方|無料ダウンロード

3. 採用チャネルとアプローチ戦略

地方での採用において、求人媒体や紹介会社、自社サイトはどのように活用すべきでしょうか。

地方でこそ重要な「自社採用サイト」の充実

媒体の使い分けは都市部と大きく変わらないものの、紹介会社については地元のエージェントに直接アプローチすることが非常に有効です。
そして、地方の医療機関で特に重要性が増すのが自社採用サイトの充実です 。
採用活動に真剣に取り組んでいる姿勢をHPで示すことは、応募者の安心感に直結します 。
候補者は紹介会社から紹介された後、必ずと言っていいほどその医療機関のHPを調べるため、サイトがしっかり管理されていることは信頼の基盤となります 。

採用のミスマッチをどう防ぐか

一方で、地方採用で苦労する点として、オンコール対応に関するミスマッチが挙げられます 。
地方ではオンコール対応が必須となるケースが多い一方、求職者側の希望と折り合いをつけるのが難しい現状があります 。
このミスマッチを防ぐためには、まず採用段階での透明性が鍵となります。
例えば、平均のオンコール対応回数や実際の出動回数などを具体的な数値で示し、求職者が実態を正確に理解できるよう努めることが重要です 。
さらに、面接の段階でオンコールに対する考え方や懸念点をヒアリングし 、もし常勤での完全対応が難しい場合は、非常勤医師との組み合わせで対応を分担するなど 、柔軟な働き方を設計できるかどうかが、採用の成否を分けるポイントとなります。

4. 離職を防ぐ「定着」の視点

採用活動は、内定を出して終わりではありません。採用後の離職を防ぐためには、採用前からの一貫した取り組みが重要だと指摘します。

採用前の「接点」でギャップを埋める

最も重要なのは、採用前に面接などの接点を通じて、本人の希望(働き方、キャリア、やりたいこと)を深く把握しておくことです 。
入社後のギャップをなくすため、面接時にクリニック内を案内し、どんな患者さんがいるか、どのような働き方になるかを具体的に伝えることが不可欠です 。採用前になるべく接点を増やし、疑問点を一つひとつ解決していくことが、結果的に定着に繋がります 。

入社後のフォロー体制

採用後は、オリエンテーションを行うなど、理念の共有を行うことが有効です。
いきなり患者を担当させるのではなく、徐々に引き継ぎを行うなど、可能な限り手厚いフォロー体制を整えるとよいでしょう。
また、地域の訪問看護ステーションやケアマネジャーとの交流会などに積極的に参加することも、医師が地域に根づくための一助となります 。

5. 地方採用を成功に導くキーポイント

最後に、地方での採用成功におけるキーポイントを伺いました。

信頼関係の構築が第一

医療機関と求職者との信頼関係の構築を第一に挙げます 。
単なる条件提示の交渉に終始するのではなく、その地域に根付いて活躍していく将来像を共に描くことが重要です 。
そして、「採用」と「定着」を分けて考えず、一気通貫で取り組むこと 。
採用活動と入社後の定着を別物として捉えず、一気通貫で取り組む視点が求められます。住居サポート(家賃補助、物件リサーチ)をはじめ、採用ターゲットのライフスタイルやニーズに合わせた生活面のサポートを工夫し、自院で働く価値を深く伝えることが成功の鍵となります

6. mics採用支援なら地方採用成功の実績あり

mics採用支援では、これまで多くのクリニック様の採用をご支援してきました。
特に「地方」での医師・看護師の採用をご支援したクリニック様の成功事例を「お客様の声」ページに掲載しています。
貴院の採用活動のヒントとして、ぜひご覧ください。


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