在宅医療情報連携加算の取得率は2割強にとどまる|ICT連携のハードルが明らかに

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在宅医療情報連携加算の取得率は2割強にとどまる|ICT連携のハードルが明らかに

2024年度診療報酬改定により新設された【在宅医療情報連携加算】の取得状況に関する調査が、中医協総会(2024年4月23日)で報告されました。この加算は、在宅医療の質向上を目的に、ICT(情報通信技術)を用いて患者情報を他職種と共有する体制が整っている医療機関に対して評価されるものですが、取得率は21.6%にとどまっていることが明らかになりました。

参考)中央社会保険医療協議会 総会(第607回)|在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理及び訪問看護の実施状況調査報告書(案)<概要>

在宅医療情報連携加算とは

在宅医療情報連携加算は、他の医療機関や介護施設などの関係職種がICTを用いて記録した患者さんの診療情報を活用して、医師が計画的に医学管理を行った場合、以下の項目に加算(100点/月に1回)できます。2024年度診療報酬改定により新設された加算です。

  • 在宅時医学総合管理料(在医総管)
  • 施設入居時等医学総合管理料(施設総管)
  • 在宅がん医療総合診療料


電話やFAXではなく、アプリやシステムを活用して「患者さんの治療やケアの内容・状態」を共有することで、迅速な対応や治療、相談につなげることが目的です。

ICT連携の現状

  • 常時情報を閲覧可能なシステムによるICTを用いた平時からの連携体制の構築については、「構築していない」が34.2%と最も多く、次いで「構築している」が33.9%でした。
  • 連携施設種別は「訪問看護事業所」(70.4%)、「保険薬局」(63.7%)の順に多いことがわかりました。

在宅医療情報連携加算取得が進まない理由とは

在宅医療情報連携加算の届け出をしていない最も多い理由は、「ICTを活用した患者の診療情報等の共有体制の確保が困難であるため」(65.5%)でした。

  • 連携方法の課題で多く挙げられていたのは以下でした。
    ・電子カルテなど既存システムとの連携ができない(43.8%)
    ・スタッフのICTスキルや運用ノウハウが不足している(42.6%)

この調査結果が示すものとは

今回の調査結果は、在宅医療におけるICT活用がまだ発展途上であることを浮き彫りにしました。加算取得の前提となる「ICTを使った情報共有体制」の構築には、技術的・人的な課題が多く、全国的な普及には時間がかかるとみられます。

また、診療報酬改定の本来の狙いである「質の高い在宅医療の促進」に対して、現場の実態がまだ追いついていないことが明確になっており、今後の制度見直しや支援策の強化が求められる状況です。

この記事を書いた人

在宅医療カレッジ編集部

在宅医療に関わる方・これから始めたい方を応援する在宅医療の情報プラットフォーム「在宅医療カレッジ」編集部です。 「学ぶ」「働く」「役立つ」をテーマに在宅医療に関するあらゆる最新情報を配信しています。

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