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2026年度の次期診療報酬改定に向けた議論が、中央社会保険医療協議会(中医協)で本格化しています。8月27日に開催された総会では、今後の在宅医療のあり方が主要テーマとなり、提供体制の「充実」を求める診療側と、費用の「適正化」を主張する支払い側とで意見が交わされました。現場で働く私たちにとって、今後の働き方や報酬に直結する重要な議論のポイントを解説します。
議論の背景:増加する在宅医療費と訪問回数
厚生労働省のデータによると、在宅医療にかかる費用は年々増加しており、その主な要因が「訪問回数の増加」であることが示されました。
また、在支診取得のハードルとしては「24時間体制の確保」が最多の回答でした。
その「24時間体制確保」のために民間企業等への委託を行っている在宅医療機関は6.1%、機能強化型在支診・在支病においてはその割合が高いという結果でした。
訪問看護においては、精神疾患の利用者を中心に高頻度の訪問が増加している実態が報告されています。
参考)中医協総会(令和7年8月27日)|在宅(その1)資料
このような状況を受け、今後の在宅医療制度の方向性について、大きく2つの視点から意見が提示されました。
支払い側の主張:「サービスの適正評価を」
健康保険組合などの支払い側委員からは、在宅医療の適正評価のため、ルールの厳格化を求める声が上がりました。
具体的には、
- 患者の状態や居住場所(自宅か施設か)に応じた評価の明確化
- 高頻度の訪問に対する詳細な分析と適正化
- 地域によるサービス提供の差の是正
などを求めており、医療費の効率化を重視する姿勢を鮮明にしています。
診療側の主張:「在宅医療提供体制の充実を」
一方、日本医師会などの診療側委員は、患者が地域で安心して療養を続けるためには、在宅医療の提供体制そのものを充実させることが不可欠だと反論しました。
主な主張は以下の通りです。
- 新規参入の障壁となっている「24時間対応」などへの支援策
- 訪問回数だけでなく、提供される医療の「質」を評価する視点
- 患者が安心して在宅療養を送るための、地域での手厚い在宅医療体制の必要性
これらは、医療の担い手を確保し、地域全体で患者を支える体制を維持・強化していくべきだという考えに基づいています。
今後の展望:現場の声がどう反映するか
今回の議論は、在宅医療の今後の方向性を決定づける重要なものです。「費用の適正化」を求める声が強まれば、訪問回数や対象者に関するルールが厳格化される可能性があります。一方で、「提供体制の充実」が重視されれば、24時間対応への新たな支援策など、現場の負担を軽減する改定が期待できます。
私たち在宅医療の従事者一人ひとりがこの議論の動向に注目し、質の高い医療を提供し続けるために何が必要か、現場の声を届けていくことが重要になるでしょう。
参考)中央社会保険医療協議会 総会(第615回) 議事次第