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訪問診療におけるミニマム開業とは?メリットや成功のポイントを解説!

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訪問診療におけるミニマム開業とは?メリットや成功のポイントを解説!

開業を考えているけれど、大きな投資は避けたい。ワークライフバランスを保ちつつ、地域にも貢献できる方法はないか——。訪問診療において、こうした課題を解決する手段の一つとして「ミニマム開業」が注目されています。

少ない初期投資で始められ、在宅療養者を支えながら医師の新たなキャリアの選択肢となるミニマム開業について、その特徴や成功のポイントを解説します。

ミニマム開業とは

ミニマム開業とは、開業時の投資を最小限に抑え、少人数で運営する仕組みを基本とした開業形態です。とくに、家賃や人件費といった固定費の負担を軽減することで、経営の安定性を高めることができます。

通常のクリニック経営では、広い診察スペースや充実した医療機器を確保するため、高額な家賃がかかることが多いです。また、受付スタッフや医療事務、看護師などの人件費も大きな負担となります。
これらの固定費は経営の多くを占めるため、一定の患者数を確保し続けなければ収益を維持することが難しくなります。

一方、ミニマム開業では、診察スペースや事務スペースを最小限にし、必要な医療機器のみを備えた小規模なクリニックとして運営します。これにより、開業時の負担を大幅に軽減できます。

また、人件費の削減も重要なポイントです。診療内容を限定し、業務の効率化を図ることで、医師一名と最小限のスタッフでの運営が可能になります。

さらに、レセプト業務などの専門的な事務業務を外部委託することで、スタッフの採用や教育にかかるコストを削減し、質の高い医療サービスの提供に専念することができます。

訪問診療におけるミニマム開業の特徴

訪問診療は、ミニマム開業との親和性が高い診療形態です。
外来診療とは異なり、訪問診療では大規模な診察スペースや高額な医療機器を必要としないため、開業時の初期投資を抑えやすい特徴があります。

また、外部業務委託やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを活用することで、医師一名のみ、もしくはごく少数のスタッフのみを加えたコンパクトな体制でも、持続可能な経営が可能になります。

訪問診療でのミニマム開業が注目されている背景とは

訪問診療でのミニマム開業が注目を集めている背景として、以下の要因が挙げられます。

  • 医療業界の人材不足と働き方改革に対する課題
  • 度重なる診療報酬改定による影響
  • 在宅医療ニーズの高まり


それぞれの背景について説明しましょう。

医療業界の人材不足と働き方改革に対する課題

医療業界の人材不足は年々深刻化しており、とくに訪問診療では24時間365日の対応が求められるため、人材確保が難しくなっています。

また、昨今の時間外労働の規制やワークライフバランスを重視する傾向により、医師や看護師の確保だけでなく、医療事務スタッフの採用も難しいのが現状です。

ミニマム開業は最小限の人員で運営するため、人材の採用や教育、労務管理などの負担が軽減し、人材不足への対応やワークライフバランスの実現につながるとして期待されています。


度重なる診療報酬改定による影響

医療費適正化に向けた取り組みが進む中、訪問診療においても診療報酬の見直しが繰り返し行われています。

収益を維持するためには効率的な体制を構築し、診療報酬改定の影響を受けにくい強固な基盤づくりが必要です。

固定費を抑えながら柔軟に運営体制を変えられるミニマム開業は、在宅医療を支える新たな担い手として期待されています。


在宅医療ニーズの高まり

高齢化社会の進展に伴い、在宅医療に対するニーズは質と量ともに高まり続けています。

通院が困難な高齢者の増加に加え、入院患者の平均在院日数の短縮化により、在宅で医療ケアを必要とする患者は年々増加しています。

ミニマム開業は機動性や柔軟性が高く、地域の病院や介護施設、訪問看護ステーションなど関連機関とも連携しやすい強みがあります。

ミニマム開業のメリット

ミニマム開業には主に以下の4つの大きなメリットがあります。

  • 少ない開業資金で始められる
  • 柔軟性がある運営ができる
  • 自分の理念を反映した診療が可能
  • 採用やスタッフマネジメントの負担軽減


それぞれの特徴について説明します。

少ない開業資金で始められる

ミニマム開業の大きなメリットは、少ない初期投資で開業できる点です。

訪問診療におけるミニマム開業は、診察に必要な必要最小限の医療機器と小規模なスペースがあれば始められるため、開業時にかかる費用を大幅に抑えることが可能です。

柔軟性がある運営ができる

訪問診療におけるミニマム開業の強みの一つが運営の柔軟性です。組織がシンプルなため、大きな医療機関のような複雑な調整に縛られることなく、医師自身のペースで診療計画を立てられます。

また、診療報酬改定時など大きな組織では方針転換に時間がかかることがありますが、ミニマム開業では迅速に運営方針の見直しが可能です。

加算が手厚い分野への注力や、新たな在宅医療サービスの導入といった転換も機動的に行えます。

自分の理念を反映した診療が可能

ミニマム開業は、医師自身の理念に基づいた診療を提供しやすい環境です。大規模な開業と比べて意思決定の自由度が高く、医師の理念や価値観に基づいた医療の提供がしやすいことがメリットだといえます。

例えば、患者との信頼関係を重視した診療や、特定の医療分野に特化した専門的なケアの提供など、理想とする医療を実現するための新たな選択肢となりえます。

採用やスタッフマネジメントの負担軽減

ミニマム開業は、少人数で運営されるため、人材管理の負担が相対的に少なくなります。

従来の医療機関では、多数のスタッフの採用や労務管理、教育が必要となり、マネジメントに多くの時間を費やすことがありました。
しかし、少人数のチーム運営により、スタッフとのコミュニケーションや管理がスムーズになり、効率的に運営することができます。

ミニマム開業のデメリット

ミニマム開業には主に以下の3つのデメリットがあります。

  • 診られる患者数に限りがある
  • 24時間体制を確立する必要がある
  • 事務作業の負担が大きい


それぞれのデメリットについて解説します。

診られる患者数に限りがある

ミニマム開業は、医師をはじめ他の医療従事者の数を最小限に抑えて運営するため、一日に対応できる患者数は限られます。

収益面での上限も自ずと決まるため、これらの制約を考慮した事業計画が必要です。

24時間体制を確立する必要がある

在宅医療では診察終了後や休日、夜間などの24時間365日対応の体制確保が必要です。

しかし、少人数での運営ではスタッフの負担が大きいため、オンコール体制の構築や地域の医療機関との連携など、持続可能な体制づくりが大きな課題となります。

事務作業の負担が大きい

ミニマム開業では医療事務スタッフを配置しない、もしくは最小限の人数で運営するため、事務作業の負担が大きくなる可能性があります。

診療記録の管理や診療報酬の請求作業、スケジュール調整など多くの事務作業が発生します。とくに訪問診療における診療報酬の請求は非常に複雑であり、正確性や専門性が不可欠です。

ミニマム開業ではスタッフが少ない分、スタッフ一人当たりが対応する業務範囲が広くなり、診療行為以外で時間が取られることも少なくありません。

ミニマム開業を成功させるための3つのポイント

ミニマム開業を成功に導くためには、以下の3つのポイントを抑えましょう。

  • 開業場所の選定と診療圏の分析
  • 地域の医療機関との連携づくり
  • 効率的な運営体制の構築


それぞれのポイントについて詳しく説明します。

開業場所の選定と診療圏の分析

訪問診療クリニックの開業場所の選定は、事業の成功を左右する重要な要素です。地域の高齢化率や要介護者数などのデータを確認し、訪問診療のニーズを把握しましょう。

競合となる訪問診療クリニックの有無や、移動時間を考慮した診療圏の設定も重要です。地域包括支援センターや介護福祉施設の分布状況なども、事前に調査しておくことが望ましいでしょう。

そこで活用したいのが「無料診療圏調査」です。

メディカルインフォマティクス株式会社が提供している無料診療圏調査は、人口動態や交通アクセス、競合状況などのデータに基づいた分析情報を提供しており、開業計画を立案する際に役立ちます。

客観的なデータに基づいた開業場所の選定は、訪問診療におけるミニマム開業の成功につながるといえます。

地域の医療機関との連携づくり

訪問診療クリニックを安定的に運営するためには、地域の医療機関との連携が不可欠です。とくに小規模なクリニックでは、24時間対応の負担を軽減するために、周辺のクリニックや訪問看護ステーションなどとの協力体制を築くことが重要です。

また、緊急時の受け入れ先となる病院と連携し、スムーズな診療・搬送体制を整えておくことで、より安心できる医療が提供可能となります。

こうしたネットワークを構築することで、訪問診療の質を向上させ、患者や家族の安心につなげることができます。

効率的な運営体制の構築

訪問診療では移動時間の確保や患者家族との連絡調整など、直接的な診療行為以外の業務が多いため、運営の効率化がクリニックの収益に影響します。

こうした業務を効率化し、クリニックの限られたリソースを診療に集中させるためには、BPOサービスの活用が有効です。BPOサービスを利用することで、煩雑な事務作業を外部に委託でき、医療の質を維持しながら、持続可能な運営が可能になります。

訪問診療におけるBPOサービスの代表的なものとして、電話代行サービスやレセプト代行サービスなどが挙げられます。

メディカルインフォマティクス株式会社が提供する電話代行サービス「Okitell365」は、訪問診療専門のオペレーターによる24時間365日体勢での対応が可能です。
医師やスタッフの負担を軽減できるほか、患者からの緊急連絡を電話代行サービスが適切にトリアージすることで、連携医療機関への紹介や搬送などの判断を迅速に行えるようになります。

また、同社の「レセサポ」は、在宅医療に特化した専門スタッフが、診療報酬請求業務を代行します。専門スタッフに診療報酬請求業務を委託することで、正確性と効率の向上が期待できます。

こうしたBPOサービスを活用することで、ミニマム開業でも安定した診療体制を確立し、医師やスタッフの業務負担を軽減することができます。

まとめ

ミニマム開業は社会的なニーズに応えながら、医師自身のキャリア開拓やライフスタイルの維持もできる新しい開業形態として、ますます注目を集めるでしょう。

少ない初期投資で開業できる点やワークライフバランスを保ちやすい点、高まる在宅医療ニーズに応えられる点など多くのメリットがあります。一方で、24時間体制の確保や事務作業の負担など、克服すべき課題も少なくありません。

これらの課題に対しては、BPOサービスの活用を検討することも一つの方法です。

効率的な運営手法を取り入れながら、自身に合った開業スタイルを検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

一坊寺 唯

医療ライター・コンテンツディレクター/Cuddle Writing(カドルライティング)代表。大学卒業後、ヘルスケア関連企業にて企画職に従事。2019年にフリーランスWebライターとして独立し、医療・健康ジャンルを中心に多数メディアの記事制作を手がける。「信頼できる医療・健康情報を通じて、ヘルスリテラシーを向上させる」というミッションのもと、医療系記事制作チームCuddle Writingを運営。

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