訪問診療の効率化は「スケジュール管理」から!業務改善と増患を実現するDXの進め方

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訪問診療の効率化は「スケジュール管理」から!業務改善と増患を実現するDXの進め方

こちらの記事は2025年6月26日に開催された「医療DXオンラインセミナー|在宅医療がスムーズになるスケジュール管理と情報共有の進め方」(登壇者:クロスログ株式会社 代表取締役CEO 宮原 智新氏)の内容をもとに、編集部が再構成したものです。

セミナーのアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。
(peer studyサイトへ遷移します)

超高齢社会を背景に、在宅医療のニーズはますます高まっています。一方で、現場では増え続ける患者さんへの対応や複雑な業務に追われ、「これ以上の効率化は難しい」と感じている院長や事務長の方も多いのではないでしょうか。

実際に、在宅訪問患者数は2013年(約63万人)から2022年(約114万人)の間で約1.8倍に増加していますが、在支診の届け出件数は横ばいというデータ(※)もあります 。これは、一施設あたりの業務負担が増大していることを示唆しています。

参考)厚生労働省|第9回新たな地域医療構想等に関する検討会:資料2(令和6年9月30日)

本記事では、こうした課題を解決し、クリニックの成長を加速させるための鍵となる「スケジュール管理」と「情報共有」のDX(デジタルトランスフォーメーション)について、具体的な進め方と成功事例を交えて解説します。

在宅医療のDX推進のポイント

なぜ今、訪問診療にDXが不可欠なのか?

在宅医療の現場では、いまだにホワイトボードやExcel、紙の地図を使ったアナログな管理方法が多く見られます。しかし、高まる市場ニーズや診療報酬改定への対応、そして競争の激化を乗り越えるためには、業務プロセスの抜本的な見直しが不可欠です。

訪問診療におけるDXの重要性

DXは単なるITツールの導入ではありません。業務プロセスと組織文化そのものを変革し、日々の変化に耐えうる仕組みを構築することこそが重要です。特に訪問診療においては、「持ち運べる」「連携できる」ツールを選び、場所を問わずに業務を行える環境を整えることが成功の鍵となります。

訪問診療でのDXで取り組むこと

経営の根幹を揺るがす「スケジュール管理」と「情報共有」

在宅医療で管理すべき情報は多岐にわたりますが、中でも「スケジュール管理」と「情報共有」はクリニック経営に直結する最重要課題です。この二つの管理が不十分だと、以下のような問題が発生します。

  1. 診療患者数の伸び悩み
    • 不十分な管理: 突然の往診依頼やキャンセルに対応しきれず、空き時間や非効率な迂回ルートが発生してしまいます。また、必要な情報が分散しているため、確認作業に多くの時間が割かれます。
    • 結果: 無駄が多くなり、本来診療できたはずの患者様を逃してしまいます。

  2. スタッフの疲弊と離職リスク
    • 不十分な管理: スケジュール作成が特定のスタッフに依存(属人化)し、他の人では最適なルートが組めません。結果として特定スタッフに業務負担が集中し、ストレスやミスの原因となります。
    • 結果: 負担の大きい労働環境は、スタッフの離職リスクを高めてしまいま 。

  3. 患者満足度の低下
    • 不十分な管理: 急な依頼への対応の遅れや予定の管理ミスは、患者様やご家族の不信感に繋がります。また、情報共有の漏れは、同じことを何度も説明させるなどの二度手間を発生させます。
    • 結果: 不安やクレームが増え、継続的な利用を妨げる要因となります。


これらの課題を解決し、「診療患者数の最適化」「働きやすさの向上」「患者満足度の向上」という3つの好循環を生み出すのが、スケジュール管理と情報共有のDXなのです。

現場の声から生まれた「CrossLog」が解決策に

「スケジュール管理や情報共有が重要なのは分かっているが、何から手をつければいいのか…」そんな悩みに応えるのが、訪問診療に特化したスケジュール管理サービス「CrossLog(クロスログ)」です。

CrossLogは、スケジュール管理を中心に、患者情報管理、紹介元・営業管理、経営管理など、これまでExcelなどで個別管理されがちだった業務を一元管理できるサービスです 。

CrossLogの主な特徴

  • 効率的なルートの自動生成: マップ上のピンを選択するだけで、最適な訪問ルートを自動で作成します 。
  • 在宅患者・関係職種の情報管理: 患者情報だけでなく、ケアマネージャーや関係機関の情報も一元管理できます 。
  • 予定漏れを防ぐチェック機能: 訪問予定の抜け漏れや時間帯をシステムがチェックし、ミスを防ぎます 。
  • 電子カルテ・チャットツールとの連携: 各種ツールとシームレスに連携し、情報ハブとして機能します 。


ある導入事例では、CrossLogの活用により、8.8日分もの作業時間削減に成功、また、訪問件数を月間250件から350件へと大幅に増やすことができました 。作業時間の削減により患者さんと向き合う時間が創出でき、結果的に増患にもつなげることができます。

【導入事例】CrossLogでクリニックはどう変わったか?

実際にCrossLogを導入したクリニックの成功事例を見てみましょう。

事例1:医療法人おひさま会(兵庫県、大阪府)

  • 課題: テキスト中心の独自システムでは、チーム全体の訪問進捗が分かりにくく、スタッフの現在地も把握できませんでした。
  • 効果: CrossLogと現在地共有アプリ「CrossLog Tracker」を導入。各スタッフの状況が地図上で視覚的に把握できるようになり、緊急往診の際も最も近いチームにスムーズに依頼できるようになりました。CrossLogをハブとして各種ツールと連携させ、情報の一元管理を実現しました。

事例2:本郷ファミリークリニック(東京都)

  • 課題: 電子カルテの予定管理機能では意図しない変更・削除のリスクがあり、スケジュール管理が属人化していました。
  • 効果: CrossLogでスケジュールを管理することで、予定の抜け漏れがなくなりました。また、カルテ情報とスケジュール情報を分離できたことで、ドライバーなど職種に応じて渡す情報を限定でき、個人情報保護の強化にも繋がりました。

事例3:ふじハートクリニック(静岡県)

  • 課題: 開業にあたり、在宅・外来・リハに必要な業務をオールインワンで管理できるシステムがなく、採用した電子カルテだけでは在宅医療に必要な機能が不十分でした。
  • 効果: CrossLogで電子カルテの機能を補完し、効率的なスケジュール・ルート管理を実現 。さらに経営分析ツール「CrossLog Report」を活用し 、患者推移や紹介元の傾向をデータで分析。数値に基づいた戦略的な地域連携や集患活動、採用計画の立案が可能になりました。

持続可能なクリニック経営の「土台」を築くために

訪問診療におけるスケジュール管理と情報共有のDXは、単なる業務効率化に留まりません。それは、

「診療効率の向上」「働き方の改善」「人材の定着」、そして「持続的な組織・経営」を実現するための「土台」そのものです 。

「日々の業務が忙しくて、新しいことを始める余裕がない」 「何から手をつければ良いか分からない」
もしそうお考えでしたら、まずはITツールの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

在宅医療カレッジ編集部

在宅医療に関わる方・これから始めたい方を応援する在宅医療の情報プラットフォーム「在宅医療カレッジ」編集部です。 「学ぶ」「働く」「役立つ」をテーマに在宅医療に関するあらゆる最新情報を配信しています。

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