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訪問診療クリニックの運営に必要なネット環境とは?知っておくべき注意点を解説

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訪問診療クリニックの運営に必要なネット環境とは?知っておくべき注意点を解説

クリニック運営時に必要な要素として挙げられるのが、適切なネットワーク環境です。セキュリティ面でリスクがあると、情報漏洩や診療効率の低下などのリスクにつながります。

本記事では、クリニック運営に必要なネットワーク環境や構築時に押さえるべきポイントを解説します。

これからクリニックを開業する際は、ネットワーク環境を万全にし、安心できる施設を運営しましょう。

クリニック運営に必要なネットワーク環境

クリニックを運営するうえで必要になるおもなネットワーク環境は以下のとおりです。これから開業する方は押さえておきましょう。

Wi-Fi

Wi-Fiとは、パソコンやプリンターなどのネットワーク対応端末を無線で通信し、双方向で接続できる通信規格です。

Wi-Fiがあると、従来必要だったケーブルが届かない場所でもインターネットが簡単に利用できるようになります。

そのため、患者さん自身がスマートフォンやタブレット端末などを活用して待ち時間を有意義に過ごせるようになるでしょう。

また、Wi-Fiを活用すると、院内業務の効率化にもつながります。たとえば、電子カルテや医事会計システム、オンライン会議の利用やオンライン診療など、あらゆる業務が効率化されます。

ルーター

ルーターとは、異なるネットワークをつなげるための機器です。クリニックのLANと外部のインターネット(WAN)を仲介し、院内でインターネットが使用できる状態へ変換してくれます。

一般的にクリニックで使用されているルーターには、有線ルーターと無線ルーターがあります。

有線ルーターは、外部から共有されるインターネット回線を有線で院内機器につなげるものです。回線が途切れてはいけない医療機器やシステムなどに利用されます。

無線ルーターは、外部から共有されるインターネット回線を無線(Wi-Fi)で使用できる状態にする機器です。

アクセスポイント

アクセスポイントとは、Wi-Fiの電波を送受信する機器です。クリニック内のLANに、ノートパソコンやタブレット端末などの複数の無線LAN機能付き機器を接続するためのものです。

アクセスポイントには、識別するための文字であるSSIDが割り当てられています。接続したいSSIDを選択し、暗号キーを入力すると、Wi-Fiに接続できます。

有線LANルーターを利用している場合は、アクセスポイントを活用して無線LAN化できるのが特徴です。

院内のネットワークによっては、無線LANルーターがアクセスポイントの役割を担うケースもあります。

HUB

HUBとは、複数の機器やシステムをネットワークに接続する場合に使用する機器です。HUBには、ネットワークに接続するためのポートがあります。ポートに接続することで、HUBを介してネットワークに接続できます。

クリニック運営におけるネットワークを構築する際のポイント

クリニック運営をするなかで、ネットワークを構築する際は、以下のポイントを確認しておきましょう。

万全なセキュリティになっているか

たとえば、Wi-Fiを使用して電子カルテや医事会計システムを利用する場合、セキュリティに欠陥があると、患者さんの個人情報が流出する事態につながります。

情報漏洩が起きた場合、責任を問われ、最悪の場合にはクリニックの運営ができなくなる可能性もあります。

安定性があるか

クリニック運営をするうえで、ネットワークの安定性は重要です。ネットワークが安定していない場合、電子カルテやシステムを参照する際に反応が遅くなり、診療効率が下がる可能性があります。

また、機器の稼働に支障が起こると受付や診察業務などにも影響がおよび、患者さんの満足度低下を招く原因にもなります。

適正な価格であるか

優れたネットワーク環境を構築するためには、相応の費用が必要です。しかし、クリニックの規模に合わないハイスペックな環境では、必要以上の費用がかかり、経営を圧迫する事態に発展します。

事業規模を踏まえて予算を設定し、その範囲でネットワーク環境を構築するように心がけましょう。

ネットワーク構築は業者に依頼する

ネットワーク構築は、専門的な知識や技術が必要です。十分な知見がない状態で構築すると、診療中に重大な問題に発展するリスクがあります。

ネットワーク専門業者に構築を依頼しておくと、クリニックの規模や運用に合った適切な環境が整備できます。

トラブルが起きても、復旧に向けて対応してくれるため、ネットワークを構築する際は、必ず専門業者に委託しましょう。

クリニック内でWi-Fiを導入する際の注意事項

クリニック内でWi-Fiを活用した診療を検討している場合は、以下の注意事項を把握したうえで構築しましょう。

医療用のWi-Fiにおけるチャネルを設計する

院内でWi-Fiの電波を利用する場合は、医療用のチャネルを設計したうえで使用することが大切です。

医療機関の場合、W52の4チャネルを使用するのが一般的です。チャネル設計を誤ると、電波干渉を起こし、通信が断絶される可能性があります。

電子カルテや医事会計システムなどの不具合にもつながるため、適切にチャネル設計しておきましょう。

Wi-Fiのアクセスポイントを増設しておく

Wi-Fiは、木やガラスといった電気を通しにくいものは通過するものの、金属や水などには吸収されやすいのが特徴です。

クリニックの構造上、扉や床、天井や壁などには多くの金属が用いられます。そのため、Wi-Fi機能に特化したアクセスポイントを複数設置し、電波の死角をなくすことが重要です。

電波強度を調整する

チャネル設計をする際には、アクセスポイントの電波強度を考慮する必要があります。電波強度が強すぎると、電波干渉が起こり、通信機器のトラブルが発生する可能性があります。

一方で、電波強度が弱すぎると通信機器から離れた場所で電波が拾えなくなり、診療に支障が出る場合があるでしょう。

アクセスポイントを設置する際は、位置関係に加え、適切な電波強度を考慮する必要があります。

2.4GHz帯と5GHz帯の適切に使い分ける

Wi-Fiが使用する電波の周波数帯は、2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯の3種類です。多くのWi-Fi機器の場合、2.4GHz帯・5GHz帯を活用します。

2.4GHz帯の場合は、Bluetooth機器やコードレス電話、マイクロ波治療機器などにも使われます。

そのため、院内で日常的に使用する機器を使用する場合は、通信障害のリスクを考慮して使用することが大切です。

2.4GHz帯・5GHz帯を利用する場合は、目安として、以下の使い分けをすることをおすすめします。

  • 医療用の接続:5GHz帯
  • 患者さん・来訪者のインターネット接続:2.4GHz帯

Wi-Fiルーターやテザリングの利用ルールを設定する

患者さんを含む来訪者は、自身のスマートフォンを利用する際に、院内のフリーWi-Fiを使用するケースがあります。

一方で患者さんがモバイルWi-Fiルーターを持ち込んだり、テザリングをしたりすると、院内のネットワークで運用するアクセスポイントと電波干渉を起こすかもしれません。

そのため、院内のネットワーク環境を十分に考慮したうえで、テザリングやモバイルWi-Fiルーターの使用を禁止したり、使用場所を制限したりする対応が必要です。

まとめ

クリニックを開業する際は、ネットワーク構築に関して最低限の知識を身につけておきましょう。

とくにネットワーク構築に重要なのは「万全なセキュリティ体制が組まれているか」と「安定性があるか」です。

ネットワークの整備には、専門的な知識や技術が必要です。構築する際には、信頼できる業者に委託することをおすすめします。

患者さんが安心して過ごせる環境を作るために、適切なネットワーク環境を整備しておきましょう。

    この記事を書いた人

    ゆし

    医療ライター。医療機器メーカー(東証プライム市場上場)の営業職に約10年間従事。クリニック開業サポート・医院継承サポート実績あり。日々、多くの医師やコメディカルと関わり合いながら、医療ライターとして多くの医療記事を執筆している。

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